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発表・掲載日:2001/10/02

セキュリティ機能を組み込んだDR圧縮を測量地図配信で実用化

ポイント

  • DR圧縮は従来の国際標準の約2倍の圧縮率を達成
  • 2002年度内にDR圧縮を現行の国際標準の拡張案にすべく、ISOにて現在審議中
  • DR圧縮に、信州大学の暗号化および電子透かし方式を組み合わせて、高い実用性を有する測量地図配信システムを実現
  • 経済産業省からの第一号ベンチャー企業を含む産学官体制で事業化予定


概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)実世界知能研究班【班長/産総研フェロー 大津 展之】は、信州大学【学長 森本 尚武】工学部【学部長 大下 眞二郎】並びに株式会社 ジェック【代表取締役社長 伊藤 幸男】(以下「ジェック」という) と共同で、産総研が開発した画像データ圧縮方式である『 分散参照方式 (Dispersed Reference Method, 以下「DR圧縮」という) 』を応用し、セキュリティ機能を組み込んだ「測量地図配信システム(以下「本システム」という)」の開発に成功した。

適応型データ圧縮LSIの図1   適応型データ圧縮LSIの図2   適応型データ圧縮LSIの図3
それぞれの図をクリックすると拡大図が表示されます。


研究の内容

 産総研が開発したDR圧縮は、圧縮対象である画像の特性に応じて適切に圧縮方式を切り替えることのできる符号化方式で、様々なタイプの画像において高い圧縮率を示し、標準画像を用いた場合の平均圧縮率は約30で、最大50以上(圧縮後の画像データサイズが圧縮前の1/50以下になること)に達する。本方式は可逆符号化(ロスレス符号化)を行っているため、圧縮した画像データを完全に元通り復元することが可能である。

 また、従来法での高圧縮が困難とされていた印刷用画像の圧縮を得意とし、従来の国際標準であるJBIG方式の約2倍の圧縮率を達成した。

 ロスレス符号化でこのような高い圧縮率をあげること自体が異例であることから、現在、現行標準の拡張方式として採用すべくISOにて審議が進んでいる。早ければ2002年度中に国際標準化される予定である。国産技術による国際標準化を推し進める上でも、本システムによるDR圧縮技術の普及を図ることは、戦略的に非常に重要な意義がある。

 本システムがDR圧縮技術にとって初の商用化案件となるが、経済産業省からのベンチャー企業第一号である(株)進化システム総合研究所により、実用化される予定である。

 一方、信州大学工学部の田中助教授は、暗号化と電子透かし方式の開発を行った。本暗号化方式は、カオス理論に基づいているために、非常に堅牢なセキュリティ機能を有する。本方式はDR圧縮と非常に相性のよい処理を行っているため、DR圧縮の処理速度や圧縮率を低下させることなく、暗号化可能である。上記電子透かし方式は、地図データ専用に開発されたもので、第三者からの様々な攻撃 (ノイズ付加、上書き、切り取りなど)に対して非常に強い耐性を有する。

 また、信州大学工学部では世界初の印刷用画像に対する電子透かし方式も近く完成され、これも本システムに搭載される予定である。

 このセキュリティ機能を組み込んだDR圧縮は、ジェックの電子ファイリングシステムである。あるDo!Cabiをベースに本システムとして実現された。

○ 本システムにより得られる主なメリットは下記の通りである。

(1) 測量地図データ保管および検索の効率化
 一般に、土木・建設工事には大量の図面や地図などが必要とされ、工事終了後もそれらは紙メディアとして保管され、保管コストの増大、紙の劣化、紛失の恐れなど、深刻な問題となっている。そこで、従来は紙で保存していた測量図面などをDR圧縮によりコンパクトに電子化することで、上記の問題を解消するだけでなく、保存データの検索性を高め、有効に再利用することが可能となる。

(2) 電子納品時代への対応

 現在、国土交通省が「建設CALS/EC」の普及を推進しており、2010年度までには全国の地方自治体においても、受発注者間でやりとりする図面や地図、写真、書類などを全て電子化すること義務付けられる。ところが、電子化された巨大な工事用図面の授受を行うためには、莫大な通信コストや膨大な記録メディアが必要となる。このとき、産総研が開発したDR圧縮を採用することで、各種データの授受を容易に行えるようになる(たとえば、DVD-RAMにしか収まらなかったデータをCD-Rに記録可能とし、データ通信時間を劇的に短縮するなど)。このように、電子納品時代にマッチした技術を提供することが可能となる。

(3) 著作権保護、改竄および不正二次利用の防止
 地方自治体などが管理する測量地図データは公共性が高いため、許可された者以外の閲覧や編集を厳しく制限する必要がある。そこで、暗号化および電子透かしによる強力なセキュリティ機能を用いることで、常にデータの著作権の所在を明確にし、改竄や不正な二次使用を禁止することができる。

 本システムは、経済産業省からのベンチャー企業第一号である(株)進化システム総合研究所、信州大学工学部ならびにジェックの三者からなる、産学官の連携により事業化される予定である。

 なお、10月3日~5日 東京ファッションタウン(江東区有明)に於いて開催される「RWC2001最終成果展示発表会(主催: 技術研究組合 新情報処理開発機構)」にてシステムが公開され、デモンストレーションが行われる予定である。また、同発表会では、富士ゼロックスと共同でDR圧縮技術を用いたオンデマンド出版のデモンストレーションも併せて行われる予定である。



用語の説明

◆電子透かし
 写真、映画、音楽などのデジタル情報に、人間の感覚では感知できない程度の微小な操作を加え、異なる情報を埋め込む技術。埋め込まれる情報は著作権情報やデータの作成日時のようなテキストだけでなく、音声や画像など、デジタルデータであればなんでもよい。透かし情報を消去および改竄するために、電子透かしの埋め込まれたデータに対して、ノイズ付加や様々なフィルタ処理などを行うことを「攻撃」と言う。[参照元へ戻る]
◆符号化方式
 テキストや音声、画像情報をより小さなデータに変換する技術。[参照元へ戻る]
◆可逆符号化(ロスレス(lossless)符号化)
 圧縮されたデータを伸張(元に戻すこと)した時、完全に元に戻る符号化。符号化の前後でデータの品質(画像の場合は画質)が全く劣化しないので、テキストデータ、写真集やポスターなどの高精細画像、医療用画像などの圧縮に利用される。一方、データの品質劣化を許容する符号化方式は、非可逆符号化(ロッシー(lossy)符号化)と呼ばれる。圧縮したデータを伸張した際に、ノイズ混入や歪みなどが発生するが、その代わりに高い圧縮率を得ることができる。[参照元へ戻る]
◆JBIG (Joint Bi-level Image experts Group) 方式
 2値画像符号化の国際標準方式。階層的符号化と、各種画像の効率的符号化を目的として標準化された。階層的符号化とは、一つの画像データを、その概略画像から詳細画像へと段階的に符号化を行うこと。ファクシミリ用に標準化された従来方式であるMMR方式と比較して、JBIG方式は1.5~6倍程度高い圧縮率を得ることができる。JBIGとは、もともとISO(後述)とITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)の共同作業機関で、符号化方式の略称に転じて使われた。[参照元へ戻る]
◆ISO (International Standard Organization; 国際標準化機構)
 工業製品全般及び品質保証などに関する国際標準を制定する組織。技術分野ごとの多数の委員会から構成されており、DR圧縮の標準化は、静止画像符号化に関するSC29委員会で審議されている。[参照元へ戻る]
◆建設CALS/EC
 国土交通省が主導する公共事業支援統合情報システムのこと。公共事業全体に係わる各種情報の電子化を行い、組織の壁を越えた情報の共有環境を実現することによって情報の高度活用を図ることを目的とする。CALSは、Continuous Acquisition and Life-cycle Supportの略で、一般に「生産・調達・運用支援統合情報システム」と訳される。[参照元へ戻る]
◆オンデマンド出版
 オンラインで受注し、必要な部数だけの書籍を印刷・製本し、郵便や宅配便など直接配送する出版形態。印刷技術とインターネット技術を組み合わせることで可能となる、次世代の出版技術として注目されている。[参照元へ戻る]



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