産総研 - ニュース 受賞

お知らせ記事2022/04/08

令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞

令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者が4月8日に文部科学省にて決定され、産総研から科学技術賞研究部門を1件、科学技術賞理解増進部門を1件、若手科学者賞を2件、創意工夫功労者賞を1件受賞しました。

この表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的として行われています。

 

科学技術賞 研究部門

受賞者

賞状を持つ石塚 尚吾の写真

エネルギー・環境領域 省エネルギー研究部門 石塚 尚吾 首席研究員

 

業績名、概要

「化合物薄膜太陽電池の高効率化と軽量化に関する研究」

再生可能エネルギーの主力電源化への取り組みは人類全体の課題であり、太陽光発電はその主役として期待されている。特に、荷重制約などのため従来の太陽電池パネルが設置できなかった場所への設置も可能にする、軽量で耐久性に優れ且つ低コストで高性能なフィルム型太陽電池の実現が待望されている。

本研究は、CIS系化合物薄膜(CIS系とは、CuInSe2を主体とし、これにガリウムや硫黄などを含んだカルコゲナイド化合物の総称)を光吸収層とした、従来の太陽電池とは異なる軽量性や曲面追従性など薄膜型の特長を活かした高性能太陽電池の実現に必要なアルカリ金属添加効果のメカニズム解明と制御技術に進展をもたらした。

本研究により、従来の半導体工学では説明しきれていなかったアルカリ金属添加による性能向上の物理的・化学的メカニズムを実験的に明らかにするとともに、アルカリ金属添加制御手法を研究開発することによって集積構造を有する軽量フィルム型太陽電池ミニモジュールで世界最高レベルの高い光電変換効率を実現した。

本成果は、太陽電池のみならず広くエネルギー変換材料やデバイスの性能向上技術の開発に寄与することが期待される。

 

科学技術賞 理解増進部門

受賞者

賞状を持つ石地質調査総合センターの研究者の写真

地質調査総合センター 地質調査総合センター連携推進室 斎藤 眞 イノベーションコーディネータ
地質調査総合センター 地質調査総合センター連携推進室 利光 誠一 招聘研究員
地質調査総合センター 地質情報基盤センター 川畑 晶 シニアスタッフ
地質調査総合センター 地質情報基盤センター 中島 和敏 シニアスタッフ

 

業績名、概要

「防災減災から地域振興につながる地質情報の普及啓発」

地質の情報は、防災、建設工事、環境保全など、社会の必須の情報ながら、一般的な認知度は高くない。産総研地質調査総合センター(旧:工業技術院地質調査所)と日本地質学会は、地質学が身近にある社会を作りたいと考え、地域に依存する地質情報の普及啓発を目指した地質情報展を互いに協力して日本全国を行脚し開催してきた。

本活動は1997年から継続的に開催し、来場者に地域に即した地質の魅力を研究者が直接語ることによって、強い興味・関心を呼ぶとともに、子供向けに石割りや化石レプリカ作りなどの多くの体験手法によって“研究体験”を行い、地質の楽しさも知ってもらえるようになった。さらに開催地の機関と展示・教育に関する連携関係を醸成し、情報・ノウハウを地域に提供してきた。

本活動により、地質情報展に訪れる方々の、地震・火山噴火・土砂災害・河川災害など、地質に関係する災害への意識向上が図られ、身を守る行動に繋がるとともに、次世代を担う子供達が安全な地域社会の意識を持つことに寄与している。また地質形成史の理解は、その地域に誇りを持つことができ、ジオパーク等の地域振興を通じて、地域の活力再生に寄与している。

 

若手科学者賞

受賞者

賞状を持つ浅川 大樹の写真

計量標準総合センター 分析計測標準研究部門 浅川 大樹 上級主任研究員

 

業績名、概要

「タンパク質の気相ラジカル分解過程に関する研究」

生体分子の気相イオンの生成というブレークスルーを達成した質量分析法は、気相イオンを分解し、その断片イオンの質量から分子の構造を解析するという一連の流れを同一装置内で行うことで圧倒的な感度と迅速性を獲得し、現代の生命科学研究を支えているが、翻訳後修飾タンパク質など複雑な分子の解析には、気相イオンの分解過程の理解と制御が必要である。

受賞者は気相イオンのラジカル分解過程を化学反応の視点から探求し、理論的根拠をもって新たな構造解析法を構築、その成果を翻訳後修飾タンパク質の新規な構造解析法として結実させた。

本研究成果は、生命科学研究への応用が強調されている気相イオンの分解に関して、化学的視点から考察する新たな研究展望を学界に提供するものであり、生体分子の構造解析手法の高度化に貢献すると期待される。

 

受賞者

賞状を持つ日下 靖之の写真

エレクトロニクス・製造領域 センシングシステム研究センター 日下 靖之 上級主任研究員

 

業績名、概要

「溶液系電子材料の三次元高精細転写技術に関する研究」

持続可能な社会に向けて、省資源かつ安価・簡便なエレクトロニクス製造を実現するプロセスイノベーションが求められている。

受賞者は、「塗布型材料は液体のままパターニングする」という従来の考え方を転換し、液体材料の乾燥固化に伴う塑性と界面付着力を制御することにより、薄膜破断現象に立脚した固体転写型微細パターン・構造形成プロセス群を開発した。液体-固体遷移領域にある粒子薄膜の微視的破断理論を構築し、その仕組みを解明するとともに、ナノ分散液・分子系溶液を含む様々な電子材料系のパターニングに展開できることを見出し、実用化に向けた研究を推進した。

本研究成果は、高い生産性と品質を有する付加型エレクトロニクスデバイス製造技術を提供するものであり、生産技術の革新に寄与するものと期待される。

 

創意工夫功労者賞

受賞者

賞状を持つ菅谷 美行の写真

計量標準総合センター 工学計測標準研究部門 菅谷 美行 主任研究員

 

業績名、概要

「積算熱量計試験高性能化装置の改良」

近年、ビル・集合住宅の空調、温水器などで消費した熱量を計量するために用いられる積算熱量計の需要が高まっている。新たに開発される積算熱量計には、熱の影響を大きく受ける材料が使用されることから、温度特性の評価はより高い精度が要求される。また、積算熱量計の精度を上げるために適切な流用範囲での評価が必要となった。

これらの評価を実現するために積算熱量計の型式評価装置として用いられている「積算熱量計試験高性能化装置」について、試験流量範囲に適した計量方式への改良、安定した試験温度を実現するための温度制御装置の改良、高温時における試験液の揮発の影響に対処した。

これらの成果により、技術革新が進む中で多様に開発された積算熱量計について、信頼性の高い評価を実現することが可能となった。