受賞

2019/04/18

平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞

柴山文部科学大臣 ご祝辞の写真
柴山文部科学大臣 ご祝辞

平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰(科学技術賞・若手科学者賞)の表彰式が4月17日に文部科学省にて、平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰(創意工夫功労者賞)の伝達式が4月18日に産総研つくばセンターにて行われ、産総研から科学技術賞研究部門、若手科学者賞、創意工夫功労者賞をそれぞれ1件受賞しました。

この表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的として行われています。

科学技術賞 研究部門

受賞者

賞状を持つ鈴木良一(右)と加藤英俊(左)の写真

分析計測標準研究部門
鈴木 良一 首席研究員
加藤 英俊 主任研究員

業績名、概要

「カーボンナノ構造体超小型X線源の研究」

インフラ構造物の検査や救急医療の現場では、小型軽量でその場ですぐにX線撮影や検査ができる装置が必要とされていたが、従来のヒーター等を用いた熱陰極X線源では難しかった。ヒーター等を用いないナノ材料の電界電子放出を利用した冷陰極X線源の研究開発も行われてきたが、寿命や電子放出性能に課題があった。

本研究は、X線源用電子源として針葉樹型カーボンナノ構造体を採用し、X線管の構造や処理方法を確立することで、高い電流密度で長寿命な電界放出電子源によるX線発生が可能であることを実証するとともに、電池等で駆動して非破壊検査や医療診断に使用できる超小型X線源を実現した。

本研究により、プラントの保温材被覆配管を検査するロボットに試作したX線源を搭載し、金属配管の減肉検査等を効率的に行うことができるようになった。

本成果は、待機電力不要、小型・軽量で長寿命、電池駆動可能、ロボット等に組み込み可能という特徴のX線源を実現したものであり、従来の非破壊検査や医療診断等のX線源の置き換えだけでなく、膨大なインフラ構造物やセキュリティ関連の自動検査を可能にし、安全・安心な社会の実現に寄与することが期待される。


若手科学者賞

受賞者

賞状をもつ谷口知大の写真
 

スピントロニクス研究センター 谷口 知大 主任研究員

業績名、概要

「ナノサイズ強磁性体におけるスピン異常ホール効果の理論研究」

ナノサイズの強磁性体を用いた磁気メモリや高周波発振素子の研究開発が盛んにおこなわれている。しかし素子の微細化に伴う静電破壊や熱揺らぎによるエラーの発生といった問題が実用化への妨げとなっていた。

受賞者は、強磁性体の異常ホール効果に由来する新しい物理現象「スピン異常ホール効果」を理論的に予言し、ナノサイズの強磁性体の磁化の向きを制御する新しい技術を理論的に提案した。そして原理実証のための実験計画を立案し、実験グループとの共同研究によりスピン異常ホール効果の観測に世界で初めて成功した。

本研究成果は、素子の破壊やエラー発生といった問題を抜本的に解決し、従来の電子デバイスの大幅な省電力化を可能にする基盤技術になると期待される。


創意工夫功労者賞

受賞者

賞状をもつ戸田邦彦の写真
 

工学計測標準研究部門 戸田邦彦 主任研究員

業績名、概要

「衡量法による浮ひょうの目盛校正装置の改良」

液体の密度、比重、濃度を測定する「浮ひょう」(被測定液体に浮かべて計測するガラス製の計量器)の目盛校正は、トリデカン液による衡量法が用いられるが、この液体は熱膨張係数が大きいため、液温度を高精度で安定させる必要がある。この液温度制御のため、高効率で熱伝導性の良い恒温槽を制作し、さらに浮ひょうの目盛りを読み取る際の液中のメニスカス画像を明確にするための光学機構を構築した。

これらの改良により、不確かさの大幅な低減などに成功し、国際比較においても国際同等性が不確かさの範囲内で一致していることが確認され、高い信頼性を確保した標準を供給していることが検証された。

本成果により、酒造産業における濃度計測など、公平な酒税の賦課に不可欠な密度、濃度測定による品質管理、及びその計測値による取引・証明に活用されることが期待される。