産総研 - ニュース 受賞

2018/05/17

平成30年度全国発明表彰において産総研が21世紀発明奨励賞及び21世紀発明貢献賞を受賞

平成30年度全国発明表彰において、国立研究開発法人産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という。)は株式会社デンソーとともに、21世発明奨励賞及び21世紀発明貢献賞を受賞しました。

全国発明表彰は、皇室から毎年御下賜金を拝受し、日本における発明、考案、又は意匠(以下「発明等」という。)の完成者並びに発明の実施及び奨励に関し、功績のあった方々を顕彰することにより、科学技術の向上及び産業の発展に寄与することを目的として行われています。なお、21世発明奨励賞は中小・ベンチャー企業、大学等および公設試験研究機関等の研究機関に係る発明等を対象とし、21世紀の社会を創造するに当たり、実施効果を上げている、又は今後大きな実施効果を挙げると期待され特に優秀と認められる発明等の完成者に贈呈されるものです。また、21世紀発明貢献賞は21世紀発明奨励賞を受賞する発明等が法人におけるものである場合に、当該法人の代表者に贈呈されるものです。

表彰式は6月12日(火)にホテルオークラ東京にて行われました。
 

「高圧電性窒化スカンジウムアルミニウム薄膜の発明」(特許第5190841号)
 (共同権利者:株式会社デンソー)

21世紀発明奨励賞

  • 秋山 守人 (産総研 エレクトロニクス・製造領域 製造技術研究部門 副研究部門長)
  • 蒲原 敏浩 (株式会社ホウリン/元産総研 生産計測研究センター 特別研究員)
  • 上野 直広 (国立大学法人佐賀大学 理工学部機械システム工学科 教授/元産総研 生産計測研究センター 主任研究員)
  • 加納 一彦 (株式会社デンソー 先端技術研究所マテリアル研究部マテリアル研究1室 担当次長)
  • 勅使河原 明彦 (株式会社デンソー 先端技術研究所デバイス研究部デバイス研究2室 担当課長)
  • 竹内 幸裕 (株式会社デンソー アイティーラボラトリ技術企画グループ ジェネラルマネージャー)
  • 川原 伸章 (株式会社デンソー 先端技術研究所 所長)

21世紀発明貢献賞

  • 中鉢 良治(産総研 理事長)
  • 有馬 浩二(株式会社デンソー 取締役社長)

発明の概要

従来、スマートフォン用高周波フィルタは、高速通信にともなう高周波数化よって性能の限界に近づいている。そこで、薄膜バルク音響波(FBAR)共振子を用いた、FBARフィルタの開発が行われている。FBARフィルタには窒化アルミニウム(AlN)圧電体薄膜が使用されている。AlN薄膜は、弾性波の伝播速度、温度係数性能が優れているため、フィルタの圧電材料として最適である。しかし、AlN薄膜は他の圧電体と比較して、圧電性が低く高い動作電圧が必要となり、省電力化が困難で、フィルタの挿入損失が大きくなる問題もある。

本発明では、AlN薄膜にスカンジウム(Sc)を添加したScAlN薄膜を検討した結果、AlN薄膜の圧電性を4倍以上向上させることに成功した。窒化物薄膜の圧電性向上に関する研究はこれまでほとんど行われてきていなかった。ScAlN薄膜は、AlN薄膜の弾性波の伝播速度、温度係数性能の特性を失うことなく、圧電性を向上させることができる。これによって、ScAlN薄膜を使用したFBARフィルタでは省電力化が可能となり、挿入損失を低減できると大きく期待されている。また、次世代技術のスマートフォン用高周波フィルタやマイクロフォンなどの高性能が要求される電子デバイスでの社会実装も期待される。

社会への成果普及

産総研としましては、今回受賞した21世紀発明奨励賞の趣旨と産総研における「技術を社会へ」の活動理念に鑑み、本発明を広く社会実装していただくべく、本発明のライセンスを進め、21世紀社会の創造に寄与してまいります。

 

表彰式の様子
平成30年度全国発明表彰 表彰式の様子
 
  受賞者と関係者
21世発明奨励賞及び21世紀発明貢献賞の受賞者と関係者
  秋山副研究部門長と理事長
左から秋山副研究部門長、中鉢理事長