2015/12/11
第25回つくば奨励賞(実用化研究部門・若手研究者部門)を受賞
平成27年11月24日につくば国際会議場において、第26回つくば賞・第25回つくば奨励賞の表彰式が行われ、触媒化学融合研究センターの韓 立彪 研究チーム長がつくば奨励賞(実用化研究部門)を、スピントロニクス研究センターの野﨑 隆行 主任研究員がつくば奨励賞(若手研究者部門)を受賞しました。
つくば賞・つくば奨励賞は、一般財団法人茨城県科学技術振興財団とつくばサイエンス・アカデミーが主催しているもので、茨城県内において、科学技術に関する研究に携わり、世界的な評価を受けた顕著な研究成果を収めた者を表彰することにより、科学技術の振興に寄与することを目的として創設された賞です。
つくば奨励賞(実用化研究部門)
触媒化学融合研究センター ヘテロ原子化学チーム 韓 立彪 研究チーム長
受賞テーマ:次世代リン化合物製造法の開発と製品化
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韓 立彪 研究チーム長(左から二人目) |
受賞内容:
リン化合物は、生命活動に深く関わっているほかに、農薬や医薬、材料開発などに幅広く利用されている。一方で、これまでのリン化合物製造法は効率が悪く、毒性の高い塩化リンを使用しなければならないといった課題があった。
受賞者らは、触媒を不活性化するものと長らく考えられてきたリン化合物が、遷移金属錯体を用いることで容易に活性化されることを見出し、塩化リンを用いない、「触媒によるリン化合物の高効率な次世代の製造方法」を開発した。試験研究用の機能性リン化合物のみならず、工業用品に用いるリン化合物の大規模量産も可能な技術を完成させ、製品の実社会への普及を実現した。
受賞者より一言:
大変身に余る光栄です。
厳正に審査して下さった先生方に深く御礼を申し上げます。
この成果は、10年の基礎研究と、その後の10年の企業との共同研究という計20年の間、続けてきた研究の結晶です。本当に充実した研究環境や、良き上司、先輩、共同研究パートナーに恵まれました。また、実用化では、知財の皆様にも大変お世話になりました。深く感謝いたします。
見出した触媒手法は、現在世界的な研究テーマとなり、そこから斬新な技術も多く生まれています。この激しい競争に負けないように、本受賞を糧にし、ヘテロ原子化合物製造技術の抜本的な革新を目指して、より多くの優れた技術・製品を社会に提供できるように、一層研究に励みたく思っております。
※本受賞は、共同研究先である片山化学工業株式会社 P開発グループ 佐賀勇太 リーダーとの共同受賞です。
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つくば奨励賞(若手研究者部門)
スピントロニクス研究センター 電圧スピントロニクスチーム 野﨑 隆行 主任研究員
受賞テーマ:超省電力高速スピン制御技術の実現とその応用
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野﨑 隆行 主任研究員(中央) |
受賞内容:
固体中の電子が持つ磁気的な性質(スピン)に着目して、新しい機能性を持つエレクトロニクスデバイスの実現を目指すスピントロニクス技術により、待機電力のない不揮発性固体磁気メモリー(MRAM)などの開発が進められている。一方で、情報の操作・書き込みに相当するスピンの方向や運動の制御には大きな電流が必要とされており、駆動電力低減の弊害となっている。
受賞者は、超薄膜金属磁石の磁気異方性(磁化の向きやすい方向を決定する物性)を、電圧を加えることで制御する技術の開発に取り組み、トンネル磁気抵抗素子を電界で駆動させる手法を実現した。また、この素子を用いて、電圧磁気異方性制御がギガHzオーダーの高速応答性を有することや、従来の電流駆動法よりも2桁の低駆動電力化が可能であることなどを見出し、電圧駆動型スピントロニクス技術の実用化研究を加速させた。
受賞者より一言:
この度は若手研究者にとって大変名誉となる賞を賜りましたことを心よりうれしく思います。電圧による磁気的な性質の制御は、ピエール・キュリーの提案にまで遡る長い歴史を持つ固体物理学の一大テーマですが、学術と実用の間にある大きな壁を乗り越えられずにいました。今回の受賞対象となった技術は、実用素子であるトンネル磁気抵抗素子への導入や、高速応答性・低駆動電力性の実証など、実用化技術への大きな発展をもたらした点を高く評価して頂いたと考えております。待機電力だけでなく駆動電力も小さいスピントロニクスデバイスの提供によって、グリーンIT社会の実現に寄与すべく今後も精進して参りたいと思います。
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