産総研 - ニュース 受賞

2009/11/27

第20回つくば賞を受賞

受賞者写真

湯浅新治研究グループ長

 平成21年11月20日(金)につくば国際会議場において、第20回つくば賞の表彰式が行われました。

 つくば賞は、財団法人茨城県科学技術振興財団とつくばサイエンス・アカデミーが主催しているもので、茨城県内において、科学技術に関する研究に携わり、世界的な評価を受けた顕著な研究成果を収めた者を表彰することにより、科学技術の振興に寄与することを目的として創設された賞です。今回、エレクトロニクス研究部門 スピントロニクスグループの湯浅新治研究グループ長が、国立大学法人大阪大学大学院基礎工学研究科の鈴木義茂教授(産総研 客員研究員)と共同で受賞しました。

【受賞テーマ】 「MgOトンネル素子の巨大トンネル磁気抵抗効果の実現と産業応用」

【受賞内容】

 厚さ数ナノメートル以下という極めて薄い絶縁体層(トンネル障壁という)を2枚の強磁性金属層で挟んだものを「磁気トンネル接合(MTJ)素子」と呼び、両側の強磁性層の磁化の向きがお互いに平行な場合と反平行な場合で、MTJ素子の電気抵抗が変化する。この現象はトンネル磁気抵抗(TMR)効果と呼ばれ、その電気抵抗の変化率(MR比という)は応用上の性能指標になる。TMR効果は、磁気センサー素子や記憶素子(メモリー)に応用できるため、電子スピンを活用した「スピントロニクス」と呼ばれるエレクトロニクスの新分野における最重要技術である。

 

 湯浅研究グループ長と鈴木教授は、トンネル障壁に従来のアモルファス酸化アルミニウム(MR比が数10%)に代えて、結晶性の酸化マグネシウム(MgO)を用いると非常に大きなMR比が得られるという理論予測に基づいて実験を行い、2004年に室温で180%という巨大なMR比を実現した。さらに、2005年には、製造装置メーカーと共同で結晶MgO-MTJ素子の量産技術の開発にも成功した。その後、この巨大TMR効果を用いた製品開発が行われた結果、2007年にハードディスク(HDD)の磁気ヘッド(MgO-TMRヘッド)として実用化され、最近のHDDの飛躍的な大容量化に大きく貢献している。さらにこの技術は、大容量の不揮発メモリー(MRAM)やマイクロ波発振素子など次世代電子機器の画期的な省電力化や高性能化などにもつながると期待されている。

受賞者写真

表彰式の様子