受賞

2010/10/05

第21回つくば賞を受賞

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末永和知 研究チーム長

 平成22年9月27日につくば国際会議場において、第21回つくば賞の表彰式が行われ、ナノチューブ応用研究センター カーボン計測評価チームの末永和知研究チーム長が受賞しました。

 つくば賞は、財団法人茨城県科学技術振興財団とつくばサイエンス・アカデミーが主催しているもので、茨城県内において、科学技術に関する研究に携わり、世界的な評価を受けた顕著な研究成果を収めた者を表彰することにより、科学技術の振興に寄与することを目的として創設された賞です。

【受賞テーマ】 「軽元素を可視化する超高感度電子顕微鏡技術の開発」

【受賞内容】

 末永研究チーム長は日本の電子顕微鏡メーカーと共同で、軽元素を可視化する新しい電子顕微鏡技術の開発に取り組んできた。2004年には「カーボン単原子の可視化」に成功し、いままで不可能とされてきた点欠陥の構造検証など多くの実験が可能になった。一例として電子線照射下における単層グラファイト中の欠陥導入過程のその場観察が実現した。これまで理論的にしか予測されていなかった単原子空孔、吸着原子、回位などが生成する様子が電子顕微鏡で鮮明に捉えられ、それらの欠陥が単層グラファイトにおいて室温で安定に存在することが世界で初めて実証された。

 

 さらに2005年には、グラファイト層間に形成されるフレンケル欠陥(単原子空孔と格子間原子)の熱緩和過程の測定に成功し、室温で安定に存在するフレンケル欠陥も、昇温によって原子空孔と格子間原子の再結合が起こり、ある温度以上では層間欠陥が消滅することを原子レベルで確かめた。この実験の意義は、半世紀以上議論の種であったWigner効果と呼ばれる原子炉材料の照射損傷エネルギーの原因が、グラファイト層間欠陥であることを原子レベルで明らかにした点にもある。また最近になって、電子線損傷の観点からこれまでは不可能だと考えられてきた「有機分子・生体分子の高分解能観察」にも成功した。これらの研究成果はどれも電子顕微鏡研究者の間で大きなブレークスルーであったと同時に固体物理、有機化学、生物物理の研究者たちにも大きな影響を与えた。

受賞者写真

表彰式の様子