English

 

お知らせ

2020/12/07

6G実現に向けたセラミックデバイスのスペックロードマップを策定
-10年後の6Gを見据えた素材・製造技術の高度化による産業価値の創造へ-

ポイント

  • 6G実現のためのセラミックデバイスの必要スペックを確定
  • 6G実現のため、その必要スペックに到達するための開発ロードマップを作成
  • 本ロードマップ活用による、6Gにおける日本のイニシアティブ発揮への貢献が期待される
 

概要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 石村 和彦】(以下「産総研」という)は、第6世代移動通信システム(6th Generation Mobile Communication System, 「6G」)の実現に必要なセラミックデバイスに必要となる材料スペック達成に向けたロードマップを策定し希望者への開示を開始した。2019年に運用が開始された第5世代移動通信システム(5G)の後継となる6Gに関しては、すでに世界各国で議論が始まっており、さまざまなコンセプトが発表され、6Gの実用化が見込まれる2030年に向けて熾烈な開発競争が始まっている。例えば通信に使用される電磁波の周波数帯などについては活発な議論が進んでいる。一方で6Gを実現するための材料スペックについてはこれまで議論されてこなかった。本年6月30日に総務省より「Beyond 5G推進戦略 -6Gへのロードマップ-」が公開されたが、主に6Gがもたらす社会像や、施策などが報告されているが、具体的な材料スペックへの言及はなされてない。6Gでは通信に用いられる電磁波の周波数は100 GHzを超えることが予想されており、材料に求められる誘電率や導電率などの特性はこれまでにない高い性能が求められることが予想されている。中でもセラミックスは熱膨張率が小さく、熱伝導率が高いという特徴を備えており、6Gデバイス材料の中で重要な役割を担うことが期待される。

産総研では、6Gに求められるセラミックデバイスのための材料開発のロードマップを材料・化学領域、計量標準総合センター、エレクトロニクス・製造領域の総力をあげて策定し、いち早く開示する。これにより日本が強みとする素材・製造産業分野における6G開発を牽引する原動力として本ロードマップを活用したいと考えている。

概要図

4Gから6Gに至る技術の変遷と、6Gがもたらす社会像

 

開発の社会的背景

近年、高速大容量の無線通信を可能にするミリ波帯電磁波の利用が拡大している。通信インフラとして第5世代移動通信システム(5G)の事業化が進む一方で、次世代の第6世代移動通信システム(6G、ポスト5G)の研究開発にも注目が集まっている。6Gでは5G以上の高速大容量通信を実現するために100 GHz超の周波数の電磁波の利用が見込まれる。一般に回路の消費電力を左右する伝送損失は周波数が上がるほど増大するため、6Gの実現にはデバイス・回路の高性能化と低損失化を可能とする材料の開発が強く求められている。特にセラミックスは熱膨張率が小さいために精密なデバイス設計が可能であり、かつ高出力に対応できる高い熱伝導率を有している。高分子材料に比較して誘電率が高いという課題はあるが、近年ではさまざまな新規セラミックス材料が開発され、これらの課題も解決しつつある。

一方で6Gの実現に必要な材料スペックについては、世界中を見渡しても明確な数値は示されていない状況にあった。6Gでは100 GHz超の周波数の電磁波を利用することが想定され、既存の材料スペックでは対応できない可能性がある。一方で、6Gを実現する材料を日本が先駆けて開発することができれば、6G通信において日本がイニシアティブを発揮することが可能となる

 

ロードマップ策定の経緯

第6世代無線通信に関する標準化の議論も進む中、2019年からフォーラムやコンソーシアムが設立され、6Gが実現する世界について議論が進んでいる。6Gでは5Gをはるかに凌駕する高速性、低遅延、同時多接続性などの具体的な技術仕様についても提案されている。これらの高い技術仕様を実現するための通信方式の検討や通信装置の研究開発も開始されている。一方で、通信装置を実現する上で不可欠となる実装部材に求められるスペックついては、システム自体のスペックがようやく固まりつつあるという状況であり、ようやく材料スペックを議論できるフェーズに入ってきた段階であり、十分な検討がなされていなかった。そのため、既存材料で6G通信が可能となるのか、不可能であればどのような材料スペックをもつ材料の開発が必要となるのかが不明であった。6Gの社会を実現するセラミックデバイスに必要となる材料スペックを明確に示すことで、6G向け材料・製造技術の研究開発の目指すべき方向を示し、10年後に想定される6Gサービス開始に向けた研究開発や産業展開を加速する。

 

ロードマップの内容

● ロードマップの位置づけ

本ロードマップは、6Gで想定されている100 GHzを超える周波数帯で動作する高周波デバイス・回路とシステムの産業化に向けた材料・製造技術の研究開発の方向性を示すことを目的としている。5Gで使用されるsub6といわれる5 GHz以下の周波数帯では、実装部材の誘電損失の低減が重要視されてきたが、6Gで使用が想定される100 GHzを超える周波数帯では、高周波回路の誘電体基板の誘電損失に加えて、金属線路の導電率で決まる導体損失による回路全体の伝送損失が増大する。さらに、従来の実装基板では、金属と誘電体の接着性を保持するために誘電体表面は粗化されるが、ミリ波帯では粗化による導電率の低下が問題となってくる。これらの課題を解決し、高性能な6G向けシステムの実現には、これまでの研究開発の延長線上では成し得ない新たなセラミックデバイスや革新的な製造技術が不可欠となる。本ロードマップは、6G実現に向けた新たなセラミックデバイスやそれを実現するための製造技術、開発目標の策定に貢献を目指すものである。

● ロードマップの概要

通信システムを構成する高周波回路のうち、アンテナ、フィルターなどの受動部品、高速デジタルなどの伝送線路といった、100 GHzを超える高周波電気信号を取り扱う部品において核となる誘電率・誘電正接・配線層の導電率といった特性に加え、デジタル信号といった広帯域信号を想定した誘電率などの周波数特性、実環境での利用を想定した温度依存性、さらには高周波回路では不可欠な寸法に係る熱膨張率を指標とした。さらに、基地局向けの高出力増幅器や光通信モジュールなどの実装基板としては、前述の特性に加えて、熱伝導率も指標として採用し、本6G実現に向けたセラミックデバイスのための材料開発のロードマップを策定した。

今回のロードマップ策定においては、5Gの実用化に至るプロセスを参考にし、2020年に開発を開始した場合の実装時期を2030年とし、それにいたる材料スペックの年度目標を各々の項目に対して設定した。

なお、今回のロードマップでは、無線システムにおいても優位な低熱膨張率や高熱伝導率といった特性を有するセラミックデバイスについて、6Gシステムを実現するために必要となる仕様を示し、今後の材料・製造技術分野における研究開発の方向性を示すことで、新たなセラミックデバイスや革新的な製造技術を世界に先駆けて創出することを目指している。本ロードマップは、6G技術の議論の進展に応じて改訂されるべきものであるとともに、個々の企業・機関にて研究開発により得られる成果を踏まえて主体的かつ独自にロードマップを進化させ、6G材料・製造分野における独自の産業価値が創造されることを期待している。

最終的に、材料・製造技術の研究開発成果に加え、デバイス技術・回路技術やシステムレベルでの信号処理方式などの分野で研究開発の成果や、6G無線通信インフラの運用方法やサービス・コンテンツとの組み合わせで、6Gの社会が実現されることとなる。

 

今後の予定

本ロードマップについては、今後のさまざまなプロジェクトの開発目標の設定などに活用していく。6G技術の議論の進展に伴って、継続的な改訂も進めていく予定である。

 

ロードマップの開示請求

ロードマップの開示を希望される方は、下記URLに進み、必要事項を記載の上、お申し込みください。
ここをクリック

 

用語の説明

◆第6世代移動通信システム(6G、ポスト5G、ビヨンド5G)
2030年ころに運用が開始される可能性のある、5Gの後継無線通信システム。通信に使用する周波数帯は100 GHz以上が想定されており、5G以上の高速大容量、高信頼低遅延、多数同時接続の実現を目指している。[参照元へ戻る]
◆第5世代移動通信システム(5G)
2019年に運用が始まった無線通信システム。5G向けには3.5 GHz帯(Sバンド)・4. 5 GHz帯(Cバンド)・28 GHz帯(Kaバンド)が割り当てられている。第4世代移動通信システム4Gに比べて高速大容量、高信頼低遅延、多数同時接続といった利点がある。[参照元へ戻る]
◆ミリ波帯電磁波
波長が1~10 mmの電磁波のこと。周波数では30– 300 GHzに対応し、一般にEHF(Extremely High Frequency)と呼ばれる。非常に指向性が高いため、通信には不向きと考えられてきたが、2000年以降に車載レーダーなど指向性を必要とする用途で注目されている。[参照元へ戻る]
◆誘電損失
誘電体内での電気エネルギー損失の度合いを表す数値。こちらも一般には低い値がよいとされる。電気エネルギーの損失により、部材での発熱などの問題が起こる可能性がある。[参照元へ戻る]
◆伝送損失
通信線路上を流れる電気信号や光信号の劣化度合い。 一般に伝送損失は低いほうがよい。[参照元へ戻る]
◆熱膨張率
熱膨張率は、温度の上昇によって物体の長さ・体積が膨張する割合を、温度当たりで示したもの。熱膨張係数が大きいと精密設計に適さず、内部応力、界面応力など様々な問題を引き起こす。[参照元へ戻る]
◆熱伝導率
熱の移動のしやすさを規定する物理量のこと。デバイスが小型化すると、蓄熱による様々な問題を防ぐために熱伝導率が高い材料が求められる。[参照元へ戻る]
◆誘電率
誘電率は物質内で電荷とそれによって与えられる力との関係を示す係数である。[参照元へ戻る]
◆粗化
ものの表面などに凹凸ができることで、粗くなること。[参照元へ戻る]

▲ ページトップへ

国立研究開発法人産業技術総合研究所