産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2020/10/01

「新原理コンピューティング研究センター」を新たに設立
-量子コンピューターなどの非ノイマン型コンピューティング技術の実現を目指して-

国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 石村 和彦】(以下「産総研」という)は、2020年10月1日に新たな研究推進組織「新原理コンピューティング研究センター」【研究センター長 湯浅 新治】を設立しました。

概要図

実現をめざす新原理コンピューティング技術の概要

わが国が目指す未来社会「Society 5.0」では、クラウドコンピューティングおよびエッジコンピューティングの両方において情報処理量の爆発的な増大が見込まれています。しかし、デジタル回路技術とノイマン型コンピューティングをベースとする従来の情報処理技術だけでは将来的に情報量増大への対応は困難になると予想されており、従来技術では達成できないような飛躍的な情報処理能力の向上が長期的に求められています。このような要求に対し、当研究センターは、量子コンピューティング脳型(ニューロモルフィック)コンピューティングなどの新しい物理原理に基づく非ノイマン型コンピューティング技術を開発し、情報処理技術の飛躍的な発展によりSociety 5.0の実現に寄与することを目指します。

令和2年1月に政府が発表した「量子技術イノベーション戦略」最終報告において、量子技術の基礎研究から技術実証まで産学官で一気通貫に取り組む「量子技術イノベーション拠点」を形成する方針が示されました。産総研は、超伝導集積回路やシリコンLSIの研究開発施設などを保有し、量子コンピューターのみならず、その制御エレクトロニクスを含むトータルシステムの開発を産学官連携により進めており、これらを総合した量子デバイス開発拠点の構築を進めています。当研究センターは、この開発拠点を構成する主要な研究ユニットの一つとして、国内外の大学、企業、公的研究機関と連携した研究開発を推進します。

 

用語の説明

◆Society 5.0
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画においてわが国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱された。
出典 https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html [参照元へ戻る]
◆クラウドコンピューティング
情報をデータセンターのサーバーに送って処理する技術や考え方のこと。[参照元へ戻る]
◆エッジコンピューティング
センサーや端末デバイスなどからのデータを、データの発生現場に近い場所(エッジ)で処理する技術や考え方のこと。[参照元へ戻る]
◆ノイマン型コンピューティング
メモリーにデータとプログラムを内蔵し、メモリーの命令を逐次取り出しプロセッサーで実行する、現代社会に広く普及している従来型の情報処理技術。フォン ノイマン(von Neumann)型コンピューティングともいう。[参照元へ戻る]
◆非ノイマン型コンピューティング
ノイマン型ではない情報処理技術の総称。具体的には、量子コンピューティングや脳型(ニューロモルフィック)コンピューティングなどがある。[参照元へ戻る]
◆量子コンピューティング
重ね合わせ状態など量子力学的な現象を利用した情報処理技術。組み合わせ最適化問題、機械学習、量子化学計算など社会的に重要な問題を従来のコンピューティング技術を遥かに上回る速度で処理できる。[参照元へ戻る]
◆脳型(ニューロモルフィック)コンピューティング
ヒトの脳の神経回路網の電気的振る舞いを電子回路(集積回路)で模倣した、高効率の情報処理技術。従来のコンピューティング技術に比べて、低消費電力で認識問題を解くことができる。[参照元へ戻る]
◆量子技術イノベーション戦略
量子技術の研究開発に関する今後10~20年にわたるわが国の指針。量子技術を人工知能(AI)、バイオと並ぶ重要技術に位置づけ、世界に後れをとらないために産学官で取り組むさまざまな施策が盛り込まれた。
出典 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tougou-innovation/ [参照元へ戻る]