産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2014/02/20

東北大学と産業技術総合研究所が東日本大震災からの復興・再生を目指した産学官連携・協力に関する協定を締結
-共同研究・人材育成などを通して被災地における再生可能エネルギー産業の振興を支援-

ポイント

  • 再生可能エネルギー分野における東北大の理論・基礎研究のポテンシャルと産総研の実証研究のポテンシャルを融合し、新たな再生可能エネルギー技術の実用化を促進
  • 平成26年4月に開所する産総研福島再生可能エネルギー研究所などを活用して、両機関が連携して再生可能エネルギーの大量導入を支える研究開発や人材育成を推進
  • これらの共同研究・人材育成・連携交流などを通して被災地における再生可能エネルギー産業の振興を支援し、東日本大震災からの復興・再生に貢献

概要

 国立大学法人 東北大学【総長 里見 進】(以下「東北大」という)と独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)は、東日本大震災からの復興・再生を目指した産学官連携・協力に関する協定を平成26年2月20日に締結した。

 本協定に基づき、平成26年4月に福島県郡山市に開所する産総研福島再生可能エネルギー研究所などを活用して、水素キャリアの製造・利用技術、太陽光発電、地熱・地中熱利用などの再生可能エネルギー分野の共同研究や人材育成を推進する。さらに、両機関のマッチングを促進する仕組みを導入し、新たな共同研究テーマの掘り起こしなども実施する。

 これらの活動を通して、新たな再生可能エネルギー技術の実用化を促進するとともに東日本大震災の被災地における関連産業の振興を支援し、被災地の復興・再生に貢献することを目指す。

連携内容概要図

連携・協力協定の締結の様子の写真
調印式の様子
(左)産総研 中鉢理事長  (右)東北大 里見総長

経緯

 東北大と産総研は、平成18年1月31日に初めて協定を締結し、わが国の学術および産業技術の振興に寄与することを目的として、これまで約8年間にわたり、幅広い分野での共同研究の推進や研究者の研究交流を含む相互交流、共催行事の開催などの各種連携プロジェクトを実施してきた。今般、両機関の連携・協力をさらに推進し、特に東日本大震災からの復興・再生に向けた取り組みを強化して社会貢献を果たすために、新たな協定を締結することに合意した。

協定締結のねらい

 東北大は、環境科学研究科、工学研究科、金属材料研究所、流体科学研究所、原子分子材料科学高等研究機構などにおいて、水素製造・貯蔵・利用、高効率太陽電池・二次電池・燃料電池、地熱・地中熱利用などの研究について多くの成果を挙げている。

 産総研は、福島再生可能エネルギー研究所を平成26年4月に開所し、これまでに蓄積してきた水素キャリアの製造・利用技術、太陽光発電、地熱・地中熱利用などの研究成果を活用して、再生可能エネルギーの大量導入を支える実証研究を推進する。

 本協定の締結を契機として、東北大の理論・基礎研究のポテンシャルと産総研の実証研究のポテンシャルを融合し、新たな再生可能エネルギー技術の実用化を促進する。

具体的な連携・協力内容

 協定に基づく連携・協力事項として、共同研究を推進するとともに、人材育成や人材交流などを進める。

(1)共同研究の推進

 連携当初は、以下の共同研究を推進する。
  ①水素キャリア(アンモニア)を直接燃焼してガスタービンにより発電する技術の研究開発
  ②高密度水素貯蔵材料およびそれを用いた安定的な水素貯蔵技術の研究開発
  ③高効率太陽電池(結晶シリコン太陽電池量子ドット太陽電池)の研究開発
  ④都市近郊の未利用の地熱資源の研究開発

 また、両機関の研究者による新たな連携を構築するために、両機関のマッチングを促進する仕組みを導入する。具体的には、共同研究テーマを両機関内で募り、審査の上、有望な提案に対して比較的少額の研究費を配分し、フィージビリティスタディ(調査研究)を実施する。フィージビリティスタディ(調査研究)終了後は、外部研究資金の獲得などを共同で目指す。これにより、新たな共同研究テーマの掘り起こしを行う。

(2)人材育成・人材交流

 産総研リサーチアシスタント制度などを活用して東北大の学生を産総研福島再生可能エネルギー研究所に受け入れ、再生可能エネルギーに関する実証研究のOJTなどを通して人材育成を行う。さらに、両機関の研究者の交流などを通して、再生可能エネルギー研究の活性化を図る。

用語の説明

◆水素キャリア
水素は、燃料電池を用いて電気への変換が容易である、燃焼による二酸化炭素の発生がないなど、エネルギー・燃料として優れた性質を持つ。その水素を大量に貯蔵・輸送するための材料を水素キャリアという。例えば、水素キャリアの一つのメチルシクロヘキサンでは、水素をトルエンに反応させてメチルシクロヘキサンにして水素を貯蔵する。逆に、化学反応によりメチルシクロヘキサンからトルエンに変化させ、水素を放出する。メチルシクロヘキサンは常温常圧で液体であり、ガソリンと同様に取り扱えるため、既存の石油系インフラが活用できるメリットがある。[参照元へ戻る]
◆高密度水素貯蔵材料
原子状の水素を高密度に結晶内部に貯蔵できる金属系または非金属系の材料。貯蔵された水素は加熱などの処理で容易に放出される。また、水素の貯蔵-放出を繰り返し行うことができる。[参照元へ戻る]
◆結晶シリコン太陽電池
結晶シリコンを材料として用いた太陽電池で、一般的に普及している太陽電池の9割近くを占める。[参照元へ戻る]
◆量子ドット太陽電池
電子を閉じ込めるナノメートルサイズの構造体(量子ドット)を基板上に持つ太陽電池。理論的には60 %以上の変換効率が得られるといわれ、超高効率太陽電池として研究が進められている。[参照元へ戻る]
◆産総研リサーチアシスタント制度
優秀な大学院生が経済的な不安なく産総研での研究活動に専念できるように、産総研が大学院生を雇用し給与を支払う制度。大学院生は、産総研の研究開発プロジェクトに参画するとともに、その研究成果を学位論文に活用できる。給与額は、博士後期課程(博士課程)の大学院生で月額最大20万円程度(1ヶ月あたり14日勤務)、博士前期課程(修士課程)の大学院生で月額最大8万円程度(1ヶ月あたり7日勤務)。[参照元へ戻る]