産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2012/05/15

佐賀県と産業技術総合研究所が連携・協力協定を締結
-相互の技術、人材、施設を活かして研究開発、産学官連携を推進-

ポイント

  • 太陽光発電における長期信頼性の共同研究をはじめとした産学官連携による研究開発の推進
  • 両者が連携して支援を行うことによる、地域企業の技術課題の解決や新技術・新製品開発の促進、および我が国と佐賀県の産業競争力の強化

概要

 佐賀県【知事 古川 康】と独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下、「産総研」という)は、平成24年5月15日、研究開発や人材などの連携・相互協力に関する協定を締結する。

 協定に基づき、佐賀県工業技術センターが主体となって行う経済産業省補助事業「太陽光発電における信頼性・品質試験方法に関する国際標準化」に係る共同研究推進を主軸に、地域企業を対象とした産総研紹介セミナーの開催や、佐賀県、県公設試験研究機関等と産総研の定例的な意見交換会の開催などを行う。

連携概念図

協定締結式の様子の写真
協定締結式の様子
産総研 野間口理事長(左)と佐賀県 古川康知事(右)

経緯

 産総研は、旧国立研究所群を統合して平成13年4月に発足した日本最大級の公的研究機関である。約2,300人の研究者が環境・エネルギー、ライフサイエンス、情報通信・エレクトロニクス、ナノテクノロジー・材料・製造、計測・計量標準、地質という多様な研究分野で世界を先導する研究を行うとともに、産業界・大学・行政とも積極的に産学官連携を行い、基礎研究から製品化研究まで幅広い連続した研究を実施している。産総研九州センターはその前身である九州工業技術試験所が昭和39年に発足以来、佐賀県有地を借用して研究活動を続けている。

 佐賀県は、住宅用太陽光発電の普及率で5.8%(平成22年度)と、9年連続日本一の実績を持ち、今後の普及とあわせた地域産業振興を目指して産総研の第Ⅱ期高信頼性太陽電池モジュール開発・評価コンソーシアムに参加している。また、経済産業省「アジア基準認証推進事業費補助金」太陽光発電技術研究組合、一般財団法人 電気安全環境研究所と共に採択され、産総研九州センター内で「太陽光発電における信頼性・品質試験方法に関する国際標準化」の共同研究を開始した(平成23年3月~平成25年3月)。

 佐賀県と産総研の共同研究、施設・設備の相互利用、研究交流・人材交流などの連携を推進することを主な狙いとして両者の意向が合致し、かつ、組織的な連携の基盤を築くことにより更なる発展が期待できることから連携・協力協定を締結することとなった。

協定の内容

 共同研究や人材交流などを進めることで、我が国および佐賀県の産業競争力の強化と、活力のある個性豊かな地域社会の形成・発展、地域産業の振興に寄与することを目的とする。

 連携・協力の内容は次のとおり。

  ○研究開発の強化およびその産業利用の促進
  ○研究施設・設備の相互利用
  ○研究交流および人材交流
  ○広報・啓発活動の協力 など

 連携・協力を具体的に推進するため、定期的に連絡協議会を開催する。

協定締結のねらいと想定する主な効果

【佐賀県にとって】
  • 産総研、佐賀県、公益財団法人佐賀県地域産業支援センターでチームを構成し、御用聞き型企業訪問を実施することにより、県内企業の技術課題の解決および技術力向上、新製品開発につながる。
  • 両者が連携して太陽光発電の長期信頼性に関する新たな評価基準を確立し、将来に亘り国際的な評価・研究拠点の構築を進めることにより、太陽光関連産業の集積につなげることができる。
  • 産総研のものづくり支援ツール(MZプラットフォーム)を県内中小企業に普及することにより、企業の経営力の強化を図ることができる。
【産総研にとって】
  • 太陽光発電研究における中心的な機関としてのポテンシャルの強化を図ることができる。
  • 御用聞き型企業訪問を実施することにより、現場での技術ニーズを把握し、研究開発の効率化を図ることができる。
  • 佐賀県および関連研究機関などとの共同研究・連携の促進ができる。
  • 佐賀県、佐賀県工業技術センター、佐賀県窯業技術センター等との情報交換や研究者の交流を促進できる。

今後の予定

 産総研、佐賀県、公益財団法人佐賀県地域産業支援センターでチームを構成し、御用聞き型企業訪問を実施することにより、県内企業の技術課題の解決と技術力向上を図る。また、あわせて企業ニーズの掘り起こしと技術シーズのマッチングを図ることにより、産学官の共同研究による新技術・新商品開発を推進する。

 佐賀県と産総研九州センターが連携し、産総研および県公設試験研究機関を紹介するセミナーを県内各地において順次開催し、県内企業との共同研究のマッチングや技術支援の推進、およびMZプラットフォームの普及に取り組む。

 佐賀県、佐賀県工業技術センター、佐賀県窯業技術センター、佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター、公益財団法人佐賀県地域産業支援センターと産総研の間で開催している意見交換会を定例化し、より密接な連携の強化を図る。

 産技連九州・沖縄地域部会が中心となって平成23年度より開始した「九州・沖縄地域 産業技術オープンデー」の定例開催に向け、佐賀県関係機関との連携を強化する。

 その他、連携・協力の具体的なテーマの選定や、円滑な推進のために、両機関の関係職員からなる連絡協議会を開催して協議する。

用語の説明

◆第Ⅱ期高信頼性太陽電池モジュール開発・評価コンソーシアム
民間企業、大学、公設試験研究機関など計78機関から成る、産総研が組織したコンソーシアム(平成23~25年度)。多数の共同研究員を九州センターに受け入れて、太陽電池モジュールの劣化要因を明確化すると共に、九州センター内に設置した試作・評価ラインを用いて、現状では20年と言われるモジュール寿命を30年以上に延ばす研究を実施している。[参照元へ戻る]
◆経済産業省「アジア基準認証推進事業費補助金」
経済産業省においては、日本でアジア各国と協調しながら長期信頼性に関する性能評価方法を研究して基準を確立し、各国も含めた認証機能の強化を進めることでアジア・太平洋市場の発展を推進し、日本メーカーの新たな市場獲得につなげる目的で、平成22年度補正予算により「アジア基準認証推進事業」を新設、平成24年度にかけて実施する計画である。[参照元へ戻る]
◆太陽光発電技術研究組合(PVTEC)
日本国内の太陽光発電システム関連企業、産総研などの65機関(平成23年7月現在)で組織。
研究目標は、下記のとおり。
 1.世界のエネルギー問題に貢献する低コスト、高効率太陽光発電システムの技術開発
 2.CO2削減など、地球環境に大きく貢献する超高信頼性太陽電池システムの研究
 3.太陽光発電に関する技術動向調査・情報収集等 [参照元へ戻る]
◆太陽光発電における信頼性・品質試験方法に関する国際標準化
本事業は、国の補助金の採択を受け、太陽光発電システムにおける長期信頼性に関する評価・認証基準について、日本国内の太陽光発電システム関連企業や産総研で組織する太陽光発電技術研究組合および現在、太陽光発電システムに関して国際電気標準会議基準に準拠した5~10年相当の認証事業を実施している一般財団法人 電気安全環境研究所と佐賀県(工業技術センター)の3者で共同研究を実施するものである。[参照元へ戻る]
◆MZプラットフォーム
MZプラットフォームは、中小企業のものづくり支援を目的に、産総研が新しく開発したソフトウェア開発・実行環境。コンポーネントと呼ぶソフトウェア部品を組み合わせて、設計・製造業務を支援するシステムを手軽に短期間で開発することができる。[参照元へ戻る]
◆産技連九州・沖縄地域部会
産技連は、経済産業省、産総研、地方自治体、関係公設試験研究機関などから構成される全国組織の「産業技術連携推進会議」の略称で、その下部機関の九州・沖縄地域部会は、産総研九州センター、九州・沖縄の公設試験研究機関、および九州経済産業局が協力しあって地域の産業活性化に寄与するために産業技術オープンデーのほか、合同研究者研修会、合同成果発表会などの活動を行っている。[参照元へ戻る]