産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2009/06/18

つくばナノテクノロジー拠点形成の推進について
-世界的研究開発拠点形成に向け、産総研、物材機構、筑波大、産業界が協力-

ポイント

  • 産総研、物材機構、筑波大の三者が、つくば市に世界的なナノテクノロジー研究開発拠点の形成を産業界と共に目指すことで合意し、推進組織を設立する
  • 平成20年度および21年度補正予算により、研究開発拠点施設を整備し、三者が連携して研究開発促進、人材育成に取り組む
  • デバイス研究、材料研究、大学院教育、産業育成にかかわる人々が一堂に会する場が形成され、ナノテクノロジーの産業貢献と人材育成が一体で加速される

概要

独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)と、独立行政法人 物質・材料研究機構【理事長 岸 輝雄】(以下「物材機構」という)、および国立大学法人 筑波大学【学長 山田 信博】(以下「筑波大学」という)は、つくば市に世界的なナノテクノロジー研究開発拠点を形成することで合意し、日本経済団体連合会産業技術委員会【共同委員長 中鉢 良治】(以下「日本経団連」という)の参加を得て、推進組織として「つくばナノテクノロジー拠点運営最高会議」を設置する。

経済産業省と文部科学省の平成20年度および21年度補正予算約360億円により、ナノテクノロジー研究開発の中核となる施設が、つくばにある産総研と物材機構内に整備される。これまで、産総研、物材機構、筑波大学は、各々ナノテクノロジーの要素技術の研究開発に取り組んできた。新たな中核施設の整備と連携により、企業が要望する異分野技術を融合した実証研究が可能となる。

「つくばナノテクノロジー拠点運営最高会議」では、中核施設を効果的に活用できるよう、産業界の研究開発需要の把握、材料研究とデバイス研究との密接な連携、国内主要大学の参加する大学院を中心とする研究開発人材の育成を検討していく。

つくばナノテクノロジー拠点の整備により、日本のナノテクノロジー研究の成果をいち早く産業化し、市場への提供できるように支援して行きたい。

「つくばナノテクノロジー拠点運営最高会議」設置の写真
左から、中鉢 日本経団連産業技術委員会共同委員長、山田 筑波大学学長、野間口 産総研理事長、岸 物材機構理事長

経緯

産総研、物材機構、筑波大学の三者は、平成14年3月に「研究交流の推進に係る協定」に調印し、個別研究テーマの共同研究や、大学院学生を中心とする教育を連携して推進してきた。

産総研は、経済産業省所管の研究所として、産業競争力の向上を目指して科学的基礎研究と製品との間にある死の谷を橋渡しする「本格研究」を実施し、異分野の技術や概念の架け橋となり実用技術につなげるイノベーションハブの役割を果たすことにより、産業技術の発展に尽くしてきた。特にカーボンナノチューブの研究において中心的な役割を果たしてきた。

物材機構は、文部科学省所管の研究所として、ナノテクノロジーを活用した持続社会形成のための物質・材料科学を実施し、基礎的・基盤的研究開発、成果の普及と活用の促進、施設及び設備の共用、研究者・技術者の養成という4つのミッションを国際的に果たしてきた。特に、一昨年、「世界トップレベル研究拠点」の一つとして物材機構が採択され、「国際ナノアーキテクトニクス研究拠点」(MANA)として活動を推進してきている。

筑波大学は、先端的・独創的な知の創出と個性輝く人材の育成を通じて世界に貢献することを使命とし、特に、筑波研究学園都市の充実した研究環境を活かし、卓越した研究成果と有為な人材を産み出す新たな教育研究拠点の創出を目指している。数理物質科学研究科を中心に平成4年度から産総研、物材機構等との間で連携大学院を開始し、物材機構並びに産総研とはそれぞれナノサイエンス、ナノエレクトロニクスに関する共同研究を組織的に進め、連携研究強化を図っている。

産業界の声として、産業競争力懇談会【会長・代表幹事 勝俣 恒久】がナノエレクトロニクス分野の研究開発のあり方を議論し、「基幹産業創出のためのナノエレクトロニクス研究拠点設置の提案」として政策提言している。日本経団連においても、本年2月9日に提言「日本版ニューディールの推進を求める」をとりまとめ、重点プロジェクト事例として「ナノエレクトロニクス研究拠点形成プロジェクト」を取り上げた。

ナノテクノロジー分野において、これまで日本は強い技術力を保持してきたが、近年の主要国における中核拠点を基盤とした国家レベルのナノテクノロジー戦略には見習うべき点が多数ある。四半世紀にわたる投資により研究施設と技術とが蓄積されてきたつくばは、拠点形成により大きく飛躍できる要素を備えている。これまでの三者の協力関係が、研究開発拠点の形成により一段と加速されることが期待できる。

「つくばナノテクノロジー拠点運営最高会議」の活動内容

  • 目的
  • つくばにおいて、研究・教育両面に亘る統合的な戦略とマネジメントの再構築と実行により、我が国及び人類社会の繁栄に貢献できるナノテクノロジー拠点 (” Tsukuba Innovation Arena [TIA]  nano ”)の形成を産業界とともに目指す。

  • 委員
  • 産総研 理事長 野間口 有
    物材機構 理事長 岸 輝雄
    筑波大学 学長 山田 信博
    社団法人 日本経済団体連合会 産業技術委員会共同委員長 中鉢 良治

  • 検討内容
  • ナノエレクトロニクスの研究開発
    パワーエレクトロニクスの研究開発
    ナノテクノロジーと微小電気機械システム(MEMS)との融合
    カーボンナノチューブの研究開発
    ナノテクノロジーを活用した環境・エネルギー技術の研究開発
    ナノ材料の安全性評価
    拠点を活用した大学院教育による人材育成
    他の研究機関、大学との連携

今後の予定

2010年度からの本格活動に向け、拠点施設の詳細設計と整備を行うとともに、拠点を活用したナノテクノロジー研究開発に参画する企業と大学を募る。この拠点を利用した研究開発によって、日本全体のナノテクノロジーの産業化を図ると同時に、その成果を国民に還元していきたい。

用語の説明

◆本格研究
産総研では、未知現象より新たな知識の発見・解明を目指す研究を「第1種基礎研究」、既知の知識を幅広く選択・融合・適用する研究を「第2種基礎研究」、またプロトタイプなどの社会が利用可能な最終成果物を創り出すための研究を「製品化研究」と呼ぶ。
研究テーマを未来社会像にいたるシナリオの中で位置づけて、そのシナリオから派生する具体的な課題に幅広く研究者が参画できる体制を確立し、第2種基礎研究を軸に、第1種基礎研究から製品化研究にいたる連続的・同時並行的に進める研究方法論を「本格研究(Full Research)」と呼ぶ。[参照元へ戻る]
◆ナノエレクトロニクス
ナノスケール(10-9 m)という微細な領域で発現する種々の量子力学的効果を利用して動作させる電子素子。[参照元へ戻る]