お知らせ

お知らせ記事2008/11/10

筑波研究学園都市の独法研究所間で異分野研究融合を推進
-産総研と農研機構が連携・協力協定を調印-

ポイント

  • 農学分野と工学分野を融合した研究を共同して推進することで、地域活性化に貢献する。
  • 緊急の課題である食の安全・安心の確保への取り組みを効率的に推進する体制づくりを推進する。
  • つくば地域の独立行政法人研究組織の横断的な連携が促進される。

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)と独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構【理事長 堀江 武】(以下「農研機構」という)は、我が国の学術、産業技術の振興、ならびに、21世紀の豊かで持続発展可能な社会の実現に寄与することを目指して、連携・協力協定に調印した。

 本協定の下、産総研と農研機構は、相互の長所と得意分野を持ち寄ることにより生物分野、情報通信分野、環境・エネルギー分野を中心にした、広範囲な研究連携・協力を展開し、研究施設・設備等の相互利用、研究者の研究交流を促進する。そのため組織的に研究テーマのマッチングを図り研究開発を効率化する。

 産総研と農研機構とは、農業・食品分野と産業技術振興のための共同研究プロジェクトを中心とした連携を従来より行ってきている。この連携の円滑な運用、異分野融合による課題の解決と今後の発展を目指し、同時に、学術・産業の振興と合わせて、21世紀の豊かで持続発展可能な社会の実現にむけ、両研究所の技術を共同して社会へ移転することにより、相互の研究分野に関する緊密な連携・研究協力の促進を通じた社会貢献を果たしていきたい。


調印式の写真
吉川 産総研理事長(左)、堀江 農研機構理事長(右)

社会的背景

 筑波研究学園都市に国立研究所群が移転して四半世紀以上経過し、個々の研究者同士や、プロジェクト毎の連携協力は進んできた。また、筑波研究学園都市交流協議会(筑協)が組織され、筑波にある研究所間の研究交流や産学官連携活動の促進に努めてきている。

 総合科学技術会議の第三期基本計画においても、筑波研究学園都市の研究所間連携や融合の必要性が述べられており、省庁間の行政的な分野を越えた組織的な連携を今後より一層強化する必要がある。加えて本年5月、農林水産業と商業・工業等の産業間の壁を越えた連携促進による地域経済活性化の実現を図るため、「農商工等連携関連2法」が成立し、当該連携に係る法的な枠組みが整備された。これを受け、経済産業省と農林水産省が連携して地域経済活性化の支援を開始しており、その取り組みの中で各省が所管する独立行政法人である産総研と農研機構に対する期待は大きい。

協定締結の経緯

 産総研は「持続的発展可能な社会を構築する」という基本理念の下で基礎研究から製品化研究までの連続した研究である「本格研究」を幅広い分野で推進している。農研機構は食料・農業・農村に関する研究開発を総合的に推進している。

 農研機構と産総研とは、筑波研究学園都市エリア事業などを共同で推進し、平成19年度実績だけでも11件の受託研究契約及び14件の共同研究契約が結ばれ、その共同研究の成果として数多くの論文発表や特許申請等がなされている。また、研究管理関連部門の職員の出向を伴う人事交流が平成19年から開始されている。

 そこで、筑波研究学園都市の研究所のもつ幅広く高いレベルの研究ポテンシャルを活用するため、研究所間の緊密な連携・協力を通じて、より効果的な研究開発を組織的に促進すべきことから、両研究所間で積極的な連携の検討を行なってきた。具体的には、個別のプロジェクトの枠組みにとどまらない広範な協力連携を目指して、生物分野、情報通信分野、環境・エネルギー分野等の広範な分野において、両研究所の高い研究ポテンシャルを用いた研究協力等について協議を重ね、その結果、分野融合的な研究成果を生み出すような、緊密な横の協力・連携を目指した連携・協力協定を締結するに至った。

協定の内容

  • 産総研と農研機構は、共同研究等による研究開発の推進、両者間の研究交流を促進する。
  • 合同成果発表会等の開催など情報発信の相互支援と共同実施を行う。
  • 「連絡協議会」を運営することで両者の連携活動の進捗、成果等の状況を把握し、戦略的な連携を推進する。
  • 有効期間は平成22年3月31日までとする。

 本連携・協力協定の下に、連携研究テーマ設定のために、研究情報の交換、施設の相互視察等を実施するとともに、定期的に連携協議会・連携推進会議を開催し、広範な分野での研究連携を推進し、両研究所で研究テーマのマッチングを進めていく。

 この連携を核として、研究学園都市内をはじめとする研究組織間のより一層の連携を推進していきたい。

用語の説明

◆筑波研究学園都市交流協議会(筑協)
筑波研究学園都市の国際性を活かし、筑波研究学園都市の将来像をふまえ、 会員相互が研究交流、共通問題等について相互に緊密に連携し、必要な意見交換を行うとともに、真に住み良い成熟した都市づくりを図ることを目的として結成された組織。筑波研究学園都市に関係する国等の研究機関、大学、地方自治体、公益法人、民間の研究機関や企業等から構成される。
(参照 http://www.tsukuba-network.jp/index.shtml[参照元へ戻る]
◆農商工等連携関連2法
平成20年5月16日に成立した、「中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律(農商工等連携促進法)」、「企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律(企業立地促進法改正法)」を指す。2法の概要は以下のとおり。
<農商工等連携促進法>
 中小企業者と農林漁業者とが有機的に連携し、それぞれの経営資源を有効に活用して行う事業活動を促進することにより、地域を支える中小企業の経営の向上及び農林漁業経営の改善を図るため、(1)基本方針の策定、(2)農商工等連携事業計画の策定及び支援制度の創設などの総合的な支援措置を講ずる。
(参照 http://www.meti.go.jp/press/20080208002/20080208002.html
<企業立地促進法改正法>
 企業立地の促進等を通じて、地域の特性を踏まえた個性豊かで多様な産業集積を図るために昨年制定された同法について、多くの地域において取組みの動きが見られている農林水産業に関連性の高い産業の集積を促進するため、所要の支援措置を追加する。
(参照 http://www.meti.go.jp/press/20080208001/20080208001.html[参照元へ戻る]
◆筑波研究学園都市エリア事業
平成14年度からの6年間実施された、文部科学省の「都市エリア産学官連携促進事業」のひとつ。平成17年度からの3年間は産総研、農研機構、筑波大学の3研究機関が協力し、「安心・安全な都市生活の構築」を目的とした研究開発を行うとともに、企業との共同研究を推進し、数多くの成果をあげた。
(参照 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/04/05051001.htm
    http://www.pref.ibaraki.jp/news/2007_10/n071001_01.html[参照元へ戻る]