産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2007/10/03

産業技術総合研究所と信州大学が組織的連携・協力に関する協定を締結
-ファイバー工学、精密工学、バイオ工学等の幅広い先端研究分野で協力-

ポイント

  • ファイバー工学、精密工学、バイオ工学等の幅広い先端研究分野に関する組織的連携・協力協定を、産総研と信州大学が締結
  • 学術・産業の振興と合わせて地域産業への貢献を視野に入れ研究開発を共同して推進
  • 連携大学院制度等を活用し、わが国の産業の高度化・グローバル化に貢献できる人材の育成を協力して実施

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川弘之、東京都千代田区霞が関一丁目3番1号】(以下「産総研」という)と国立大学法人 信州大学【学長 小宮山淳、長野県松本市旭三丁目1番1号】(以下「信州大学」という)は、研究開発・人材育成等、相互協力が可能な事項について、両機関の連携・協力を促進することで、相互の研究開発能力および人材等の総合力を発揮し、わが国の学術および産業技術の振興、ならびに地域産業の活性化に寄与するため、相互の連携・協力に関する協定を、10月3日(水)産総研東京本部理事長室において調印した。

 本協定により、わが国唯一の繊維学部など8つの学部を擁する信州大学と、産業科学技術に関する国内最大の研究拠点である産総研との連携・協力を促進し、ファイバー工学、精密工学、バイオ工学等の先端科学技術における研究開発の推進を図る。併せて両機関が取り組んでいる幅広い研究分野においても、産総研と信州大学の全学組織の間で、協力関係を構築する。

 本協定の下、産総研と信州大学は、共同研究を推進すると共に、連携大学院制度等を活用し、わが国の産業の高度化・グローバル化に貢献できる人材の育成を協力して実施する。

調印式の写真
吉川 産総研理事長(左)、小宮山 信州大学学長(右)

経緯

 信州大学は、8学部と大学院を有する総合大学である。特に、信州大学繊維学部【学部長 平井利博、長野県上田市常田三丁目15番1号】は、わが国唯一の繊維学部として、これまで文部科学省21世紀COEプログラム「先進ファイバー工学研究教育拠点」を実施、さらに平成19年度より文部科学省グローバルCOEプログラム「国際ファイバー工学教育研究拠点」ならびに文部科学省科学技術振興調整費先端融合領域イノベーション創出拠点プログラム「ナノテク高機能ファイバー連携融合拠点」文部科学省科学技術振興調整費若手研究者の自立的研究環境整備促進プログラム「ファイバーナノテク国際若手研究者育成拠点」を開始しており、また長野・上田地域知的クラスター創成拠点ならびに知的クラスター(第Ⅱ期)長野県全域により、教育・研究の両面で、学術および産業に貢献してきた。

 産総研は、経済産業省所管の研究所として、産業競争力の向上を目指して科学的基礎研究と製品との間にある死の谷を橋渡しする「本格研究」を実施し、異分野の技術や概念の架け橋となり実用技術につなげるイノベーションハブの役割を果たすことにより、産業技術の発展に尽くして来た。

 産総研と信州大学との間では、これまでも、ファイバー科学技術に関連したナノテクノロジー・材料・製造分野を中心とした先端・基礎分野における研究協力ならびに人的交流を実施している。

 これまでの協力関係をさらに発展させ、より広い範囲で相互の連携・協力を進めることにより、効率的な体制が組めるよう、産総研と信州大学の間で、包括的な協力協定を締結する準備を進めて来た。 

協定の内容

  • わが国の学術、産業技術、さらに地域産業技術の高度化・グローバル化に寄与
  • 共同研究の推進、連携大学院の構築、研究施設・設備等の相互利用による戦略的研究拠点の構築、研究者の研究交流を含む相互交流、人材育成、情報発信の推進および相互支援
  • 協定推進の戦略的な意志決定にかかわる連携協議会、ならびに恒常的な情報交換と戦術的な方針決定にかかわる連携推進会議を設置
  • 連携プロジェクトの選定と実施

今後の予定

 今回、協定の締結により、全国に展開する産総研と信州大学の全学組織との相互協力がより一層促進し、両者間の研究協力による新たな産学官連携や、地域の技術特性を踏まえた世界最高水準の共同研究開発を行う予定である。現在、ジョイントセミナーの開催、連携講座の創設、イノベーション創出のためのプロジェクトの協働推進等について検討を開始している。

用語の説明

◆ファイバー工学
ファイバーは細くて長い材料の形態である。その形態でなければ発現できない機能は、強い、しなやか、軽い、肌触りや心地が良いなどが求められる衣類・生活用品に止まらず、吸・撥水性、触媒性、清浄性、抗菌性、電磁気・光学特性などさまざまな先端産業に欠かせない産業用資材・用品に不可欠なものである。ファイバー工学は、多様で多機能・高機能なファイバーを製品にするために、それを創る生産システムからそれを使う環境における感性工学にいたるまでの幅広い分野を含む、まさに原子から感性までを紡(つむ)ぐ総合科学技術である。[参照元へ戻る]
◆文部科学省21世紀COEプログラム「先進ファイバー工学研究教育拠点」
本拠点は、世界最先端の卓越した研究教育拠点の形成を重点的に支援し、国際競争力のある世界最高水準の大学づくりを推進するもので、従来の繊維工学に最先端工学を展開し、未来のライフスタイルと文化を創造する21世紀の先進ファイバー工学研究と世界におけるこの分野をリードする研究者の育成を行う。[参照元へ戻る]
◆文部科学省グローバルCOEプログラム「国際ファイバー工学教育研究拠点」
本拠点は、平成19年度に採択されたもので、21世紀COEプログラム「先進ファイバー工学研究教育拠点」における成果を継承・発展・深化を目指し、従来の繊維工学と最先端科学技術を融合して、「極限分子構造の追及、高次複合機能の創出、感性生産システムの創成、最終製品の評価技術、繊維技術マネジメントさらには人材育成」と広範囲にわたるファイバー工学分野を国際連携のもとで推進し、生活全般にかかわるライフスタイルと文化の創造に資することを目標としている。[参照元へ戻る]
◆文部科学省科学技術振興調整費先端融合領域イノベーション創出拠点プログラム「ナノテク高機能ファイバー連携融合拠点」
本拠点は平成19年度に採択されたもので、組織、教育・人材育成などのシステム改革に取り組み、超微細加工技術、機能性材料の設計技術と匠の技術を融合したイノベーション創出を目指している。本構想は、世界にも類がなく、そのイノベーション創出システムは、他機関・他分野産業への波及効果が極めて大きいものである。[参照元へ戻る]
◆文部科学省科学技術振興調整費若手研究者の自立的研究環境整備促進プログラム「ファイバーナノテク国際若手研究者育成拠点」
本拠点は平成19年度に採択されたもので、国際公募により優秀な人材を国の内外から集め、世界をリードする若手研究者を育成し、強固な国際的研究教育拠点の確立を目指す。制度面においても「テニュア制度」を軸とする人材システム改革を行い、「国際的な視野と高い能力をもつ若手研究者の採用と育成」、「若手が自立的な立場で研究に取り組める場の創出」、「適材適所の人材登用が可能な、柔軟な人事システムの構築」ができるインフラを整備し、もって、第3次科学技術基本計画の目標「若手研究者の育成」、「教育と研究の質保証」、「グローバルCOE」の達成を目指している。[参照元へ戻る]
◆長野・上田地域知的クラスター創成拠点
本事業は、平成14~18年度までの5年間にわたり、信州大学等と長野県を中心とした開発型企業が連携し、新技術を共同開発して新商品・新事業を生み出す取り組みで、信州大学等におけるナノテクノロジーを実用レベルに具現化して、超微細・高機能デバイス(素子・部品)、その応用商品群の創出を進めてきた。[参照元へ戻る]
◆知的クラスター(第Ⅱ期)長野県全域(平成19年度から)
長野県の強みである精密加工関連企業・技術の集積をベースにして、産学官協働によってカーボンナノチューブなど新たなナノテクノロジー・材料の高度活用に挑戦し、国際的に優位なクラスターの形成を目指す。[参照元へ戻る]
◆本格研究
産総研では、未知現象より新たな知識の発見・解明を目指す研究を「第1種基礎研究」、既知の知識を幅広く選択・融合・適用する研究を「第2種基礎研究」、またプロトタイプなどの社会が利用可能な最終成果物を創り出すための研究を「製品化研究」と呼ぶ。
研究テーマを未来社会像にいたるシナリオの中で位置づけて、そのシナリオから派生する具体的な課題に幅広く研究者が参画できる体制を確立し、第2種基礎研究を軸に、第1種基礎研究から製品化研究にいたる連続的・同時並行的に進める研究方法論を「本格研究(Full Research)」と呼ぶ。[参照元へ戻る]