産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2007/03/27

産業技術総合研究所と名古屋工業大学が連携・協力協定を締結
-産学官連携による地域産業への貢献と人材育成を目指し産総研と名工大が協力-

ポイント

  • 産総研と名工大がセラミックス関連技術分野において広範な連携・協力
  • 学術・産業の振興と合わせて地域産業への貢献を視野に入れ研究開発を共同して推進
  • 世界、我が国、地域の産業に貢献できる人材の育成を協力して実施
  • セラミックスに関わる産学官連携および国際的な技術交流のハブ拠点の形成

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)と国立大学法人 名古屋工業大学【学長 松井 信行】(以下「名工大」という)は、我が国の学術、産業技術の振興、並びに地域産業の活性化に寄与することを目指して、セラミックスを中心とする材料技術分野において、相互の長所・得意分野を持ち寄ることにより協力し、総合力を発揮するための連携・協力協定を、3月27日(火)産総研東京本部理事長室において調印した。

 本協定の下、産総研と名工大は、共同研究を推進すると共に、研究施設・設備の相互利用を促進する。また、研究の交流を進め、人材育成や成果普及活動において相互に支援を行う。

 先ず、環境調和を基本的なコンセプトとして、セラミックスを基軸とした新しい材料技術の研究開発に取り組み、人材の育成と、セラミックスに関わる産学官連携および国際的な技術交流の中心としての役割を果たすハブ拠点の形成を目指す。

 

調印の写真
松井 名古屋工業大学学長(左)、吉川 産総研理事長(右)

経緯

 材料は、長い歴史を持ち、様々な形で社会を支えている。特に、セラミックスは、日常生活用の陶磁器や電子機器に使用されるコンデンサ、圧電体といった電子デバイスとして広く利用されている。しかしながら、セラミックスは焼き固めるという工程を経るため、エネルギー多消費型産業と考えられており、セラミックス関連分野では国際的な分業が進み、付加価値の低い日用陶磁器等においては生産拠点を我が国から海外展開する例も多い。このため産地では、生産が減退している例が多くなっている。産総研と名工大が、協力して技術開発や人材育成に取り組むことにより、セラミックス生産過程における資源多消費の改善、進歩した高付加価値デバイスのための技術の陶磁器への適用、新機能の導入による高付加価値化など、地域産業の活性化が期待できる。

 名工大は、東海地域における技術者教育の拠点として100年を超える歴史を持ち、陶磁器の一大産地である東濃地区にセラミックス基盤工学研究センターを設置し、地域産業に貢献してきた。又、平成19年1月には、セラミックス科学研究教育院を設置し、セラミックス科学の研究を推進しているところである。

 産総研は、経済産業省所管の研究所として、産業競争力の向上を目指して科学的基礎研究と製品との間にある死の谷を橋渡しする「本格研究」を実施し、異分野の技術や概念の架け橋となり実用技術に繋げるイノベーションハブの役割を果たすことにより、産業技術の発展に尽くして来た。

 産総研と名工大は、これまで主にセラミックス材料科学分野で協力し、連携大学院協定を締結し、多くの共同研究や技術研修(大学院生の実験実習等)を実施している。

 これまでの研究協力を更に発展させ、より広範な連携・協力を進めることにより効率的な体制を取れるようにするため、産総研と名工大の間で、包括的な協力協定を締結する準備を進めて来た。

協定の内容

  • 我が国の学術、産業技術、さらに地域産業の振興に寄与
  • 共同研究の推進、研究施設・設備等の相互利用による戦略的研究拠点の構築、研究者の研究交流を含む相互交流、人材育成、情報発信の推進及び相互支援
  • 協定推進の戦略的な意志決定に関わる連携協議会、恒常的な情報交換と戦術的な方針決定に関わる連携推進会議を設置
  • 連携プロジェクトの選定と実施
  • 有効期間は平成22年度で、双方合意の上更新

今後の予定

 本連携・協力協定においては、従来からのセラミックス材料分野における協力関係を発展させ、先ず、産総研中部センターが、名工大によるグローバルCOE拠点の形成計画における人材育成に協力すると共に、セラミックス産業の技術競争力を維持・向上させるために必要な技術開発を、持続的発展可能な社会の構築という基本的理念の下に、連携プロジェクトとして構築し推進する。また、産総研と名工大は情報共有のため定期的に技術交流会を開催する。

用語の説明

◆本格研究
産総研では、未知現象より新たな知識の発見・解明を目指す研究を「第1種基礎研究」、既知の知識を幅広く選択・融合・適用する研究を「第2種基礎研究」、またプロトタイプなどの社会が利用可能な最終成果物を創り出すための研究を「製品化研究」と呼ぶ。
研究テーマを未来社会像に至るシナリオの中で位置づけて、そのシナリオから派生する具体的な課題に幅広く研究者が参画できる体制を確立し、第2種基礎研究を軸に、第1種基礎研究から製品化研究にいたる連続的・同時並行的に進める研究方法論を「本格研究(Full Research)」と呼ぶ。[参照元へ戻る]