産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2003/09/09

産総研とセイコーインスツルメンツ(株)が三洋電機(株)とフラッシュメモリに関する特許の実施許諾契約を締結

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)とセイコーインスツルメンツ株式会社【代表取締役社長 茶山 幸彦】(以下「SII」という)は、両者が保有するスプリットゲート型フラッシュメモリに関する特許の実施許諾契約を三洋電機株式会社【代表取締役社長 兼 COO 桑野 幸徳】と締結しました。

 何度でも電気的に記憶の消去・書き込みができるROMであるフラッシュメモリは、パソコン、デジタルカメラ、家庭用ゲーム機などの記憶部分に現在広く使われています。スプリットゲート型とは、データ消去時の過剰消去エラーの心配がない構造を持ち、周辺回路の簡素化を図ることができるものです。

 今回、実施許諾の対象となっている特許は、このスプリットゲート型フラッシュメモリに関するもので、ソース注入(ソースサイド注入)を行うことにより、記憶した情報の読み出し部分を大幅に広げることができるというものです。ソース注入とは、従来のドレイン側からのチャネル注入(ドレインサイド注入)に比べて、書き込み時の電流を桁違いに減少させ、読み出しを確実なものとし、かつチャネル長の微細化にも耐えられる技術です。また、CMOSロジックICの製造プロセスとフラッシュメモリ用製造プロセスとの共有化が容易であるので、CMOSロジックICとの混載に向いています。

 この特許技術を用いることによって、フラッシュメモリの設計自由度が大きく増し、新たな技術市場での競争力を一段と強化することができます。

 この技術は、高速プログラミングが可能であることからマイコンに内蔵されるフラッシュメモリとして理想的です。そして、現在パソコン、携帯電話などで利用されているフラッシュメモリにも広く応用されることが期待されることから、今後も、重要な技術となります。産総研とSIIは、フラッシュメモリ技術について強力な日本特許、海外特許を多数保有しています。この保有成果を広く活用いただくため、積極的に特許の公開を進めていきます。

スプリットゲート型フラッシュメモリの断面図

スプリットゲート型フラッシュメモリ断面図

用語の説明

◆ROM
Read Only Memoryの略。読み出し専用メモリ。[参照元へ戻る]
◆スプリットゲート型フラッシュメモリ
浮遊ゲートだけでなく選択ゲートの一部もスイッチングに利用するフラッシュEEPROMセルで構成するフラッシュメモリがスプリットゲート型と呼ばれ、両方のゲートをオンにしないとトランジタがオンになりません。通常のスタックゲート型セルと違って過剰消去エラーの心配がない構造です。[参照元へ戻る]
◆ソース注入(ソースサイド注入)
ソース・ドレイン間のゲート領域下の多数キャリア(電気伝導を担っている荷電粒子)が流れる通路をチャネルと呼びます。チャネルのソース領域でホットキャリア(高エネルギー状態のキャリア)を得てこれを浮遊ゲート電極に注入する方法です。従来の「ドレインサイド注入」に対照して理解しやすくするために、ソースサイド注入と呼ばれることもあります。[参照元へ戻る]
◆ドレイン側
フラッシュメモリなど電界効果型トランジスタにおいて、キャリアを外に取り出す電極をドレイン、キャリアの供給源となる電極をソースと呼びます。キャリアはソースからドレインに向かって移動し、電流はドレインからソースに向かって流れます。[参照元へ戻る]
◆チャネル注入(ドレインサイド注入)
チャネルのドレイン領域にてホットキャリアを得てこれを浮遊ゲート電極に注入する方法です。[参照元へ戻る]
◆CMOSロジックIC
CMOSで論理構成された半導体集積回路。[参照元へ戻る]