産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2001/08/29

高分子アクチュエーター技術を基盤としたベンチャー企業創出

概要

 産総研人間系特別研究体では、世界に先駆け、イオン導電性高分子膜と独自の金メッキ技術を用いて高分子アクチュエーター(人工筋肉)を開発しました。(8年前)

 その後、民間企業との研究プロジェクトにより、高分子アクチュエーター技術の性能は大きく向上しました。この技術の事業化に向けて、民間企業及び産総研関西センターの研究者が出資してベンチャー企業イーメックス(瀬和信吾社長、本社:池田市、資本金:2,000万円)を設立しました。

 イーメックスでは高分子アクチュエーターを医療器具カテーテルの先端に取り付けた能動型カテーテルの製品開発、内視鏡等の医療器具、さらには人工筋肉応用製品の開発を進める予定です。

研究内容

 8月1日に産総研発のベンチャー企業「イーメックス株式会社」(代表取締役社長 瀬羽信吾)が誕生した。この会社は産総研の独自技術であるイオン導電性型高分子アクチュエーターの実用化を目指している。この技術は1991年に旧大阪工業技術研究所の小黒啓介により発明され、イオン導電性高分子ゲルと金メッキ技術を融合したしなやかなアクチュエーターが実現した。同研究所とカネカメディックス(株)のその後の共同研究も順調に進展し、能動カテーテルという他に類を見ない独創的医療技術の開発に成功した。従来の血管内手術における難点を克服し、高度な手術が可能になることが動物実験で確認されている。遺伝子治療や再生医療と結びついた医療技術開発の視野に入ってきた。イーメックス株式会社は、この能動カテーテル事業をはじめ、ホビー関係の商品開発まで視野に入れた経営戦略をもった企業である。

 高分子アクチュエーターは、電圧をかけると瞬時に変形するアクチュエーターであり、従来広く用いられている電流駆動型モーターとは根本的に異なる省エネルギー型動作装置である。現状では出力や耐久性の面で人体の持つ「筋肉」に及ばないが、近年の急速な研究開発は間もなくその溝を埋めてしまうであろう。そこまで到達すると、日常生活の中の駆動装置の多くがこのアクチュエータに置き換わる大きな可能性を秘めている。省エネ性とともに軽量性も注目されており、NASAとの共同研究も開始されている。

 産総研とイーメックス(株)が連携し、このような先端的融合技術を世界に先駆けた開発を推進している。本年12月13,14日には、高分子アクチュエーターや次世代型人工筋肉であるバイオアクチュエーターの第一線の研究者を世界中から集め、人工筋肉コンファレンスを関西センターで開催する。

高分子アクチュエーターの能動カテーテルへの応用の図

図:高分子アクチュエーターの能動カテーテルへの応用

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