発表・掲載日:2012/02/27

普遍的な物理定数に基づく新しいキログラムの再定義に道を拓く

- アボガドロ定数の高精度化に成功 -

  • 光の波長の精密制御によるシリコン球体の形状のナノメートル計測技術を開発
  • 国際プロジェクトにより同位体濃縮シリコン結晶を作製、アボガドロ定数の高精度化に成功
  • 人工物ではなく普遍的な物理定数による「質量標準」の確立が現実的に

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)計測標準研究部門【研究部門長 三木 幸信】は、フランス、イタリア、オーストラリア、ドイツ、イギリス、アメリカ合衆国、欧州委員会の計量標準研究機関との国際研究協力(アボガドロ国際プロジェクト)により、アボガドロ定数の高精度化に成功した。

 アボガドロ定数は1 モル(mol)の物質に含まれる原子や分子などの数であり、物理学や化学の分野で用いられる重要な基礎物理定数の一つである。アボガドロ定数の高精度測定により、現在、国際キログラム原器という分銅で定義されている質量の単位を、原子一個あたりの質量に基づき再定義できる。アボガドロ国際プロジェクトではシリコン(ケイ素)の同位体の一つである28Siだけを濃縮した結晶を製作し、その密度、格子定数モル質量を測定して、X線結晶密度法によりアボガドロ定数を決定した。産総研では新たに開発した光の波長をチューニングするシステムを備えたレーザー干渉計により質量1 kgの28Si単結晶球体の形状を1ナノメートルの精度で測定し、その体積と密度を決定した。国際研究協力によって得られた格子定数およびモル質量の値と密度の値を組み合わせることで、アボガドロ定数をこれまでより一桁良い精度(3×10-8)で決定することに成功した。この結果は米国の科学論文誌(Physical Review Letters、2011年、106巻、030801頁)に発表されている。

 産総研などによるアボガドロ定数高精度化を受け、2011年10月に開催された国際度量衡総会において、国際キログラム原器を将来廃止し、基礎物理定数によるキログラムの再定義を実施する合意が得られた。近代度量衡の歴史で初めて、人工物に頼らない質量標準の確立が現実的なものとなっている。

産総研で開発したレーザー干渉計の写真
写真1: 産総研で開発した光の波長の精密制御によりシリコン球体の形状を
ナノメートルの精度で計測するレーザー干渉計


開発の社会的背景

 国際単位系(SI)は、長さ、質量、時間、電流、温度、光度、物質量に対応する7つの基本単位(m、kg、s、A、K、cd、mol)とその組立単位などからなる世界共通の単位系であり、その始まりは近代度量衡の礎となる1875年のメートル条約の成立にまでさかのぼることができる。1889年の記念すべき第1回国際度量衡総会では、白金イリジウム合金製のメートル原器とキログラム原器がそれぞれ長さと質量の単位として承認されている。その後は、整備拡充とともに定義改定も進められ、長さの単位メートルにおいては、これまでに2度の大きな改定が行われた。1960年のクリプトンランプの波長への定義移行と国際メートル原器の廃止、ならびに、1983年の光が真空中を伝わる行程の長さを基準とする新定義への移行の2度である。

 一方、キログラムの定義においては、その誕生から120 年以上経過した現在でも、世界に一つしかない国際キログラム原器(International Prototype of the Kilogram)が未だその基準として用いられている。国際キログラム原器はパリ郊外にある国際度量衡局(BIPM)に保管され、世界の質量標準は国際キログラム原器との定期的な校正によって値付けされた各国のキログラム原器との比較の連鎖によって維持・管理されている。しかし、表面汚染や損耗などの影響により、国際キログラム原器の質量の長期安定性は50 µg 程度であると推定されている。これは1 kg に対して相対的に5×10-8のわずかな変動幅に相当するが、近年の計測技術の進展においては無視しえない大きさとなりつつあり、キログラムの定義もメートルのようにその基準を基礎物理定数へと移行させることが国際度量衡委員会(CIPM)などで検討されてきた。

 キログラムの基礎物理定数を用いた再定義案としては、原子の数から質量を決めるアボガドロ定数に基づくもののほかにも、相対論と光電効果から光子のエネルギーと質量を関連づけるプランク定数に基づくものが検討されている。このため、この2つの定数を国際キログラム原器の長期安定性(5×10-8)を上回る精度で決定することがキログラムの再定義のために切望されていた。 日常生活では、基礎物理定数によるキログラム再定義の影響を直接感ずることはほとんどないと考えられる。ただし、レーザーによるメートルの再定義が、ナノメートルオーダーでの正確な長さ測定を可能とし、原子レベルで物質を制御する「ナノテクノロジー」の土台を築いた例もある。基礎物理定数による正確な質量標準の実現も、原子レベルでの正確な質量測定の基盤技術などを通して、「ナノテクノロジー」を含む先端科学や産業技術に大きなブレークスルーやイノベーションをもたらす可能性を秘めている。

研究の経緯

 産総研は、約40年前にシリコンを用いたアボガドロ定数の精密測定に着手した。シリコンは高純度、無欠陥の大型単結晶が比較的容易に得られ、これまでの半導体研究などによってその物理的性質がよく知られているという利点がある。現行のモルは 質量数12の炭素原子(12C)によって定義されているが、12Cとシリコン原子との質量比は高い精度で測定されていることから、シリコン結晶を用いても1 モルの物質に含まれる原子や分子などの数であるアボガドロ定数を高精度に決定できる。

 当初はシリコン結晶の格子定数を測る実験からスタートした。1987年、シリコン結晶を極めて真球に近い球体に研磨する技術が開発され、シリコン結晶の密度を高い精度で測ることが可能となった。産総研では、数十ナノメートルの真球度で超精密研磨された質量1 kgのシリコン球体の形状を測定するレーザー干渉計を開発した。1994年には世界で最初に真空中でシリコン球体の密度を測ることに成功し、空気の屈折率の影響を受けることなく密度を測定することで固体密度の世界最高測定精度を達成した。

 また、シリコンには質量数の異なる3種類の安定同位体28Si、29Si、30Siが存在するため、そのモル質量(平均原子量)を決めるためには同位体存在比を精密に測定する必要がある。2003年には欧州委員会の標準物質計測研究所【所長 Krzysztof Maruszewski】(Institute for Reference Materials and Measurements、IRMM)との協力によりシリコンのモル質量を測定し、アボガドロ定数を 2×10-7という当時最小の相対不確かさで測定することに成功した(2004年1月20日産総研プレス発表)。しかし、その後はモル質量の測定精度が制約となり、これ以上の精度向上は望めなかった。

 この問題を解決するために7つの計量標準研究機関と協力して、28Siだけを濃縮したシリコン単結晶からアボガドロ定数を決めるためのアボガドロ国際プロジェクトを2004年から開始した。アボガドロ国際プロジェクトには、産総研のほかに、BIPM【局長 Michael Kühne】(Bureau International des Poids et Measures)、イタリア計量研究所【所長 Alberto Carpinteri】(Istituto Nazionale di Ricerca Metrologica、INRIM)、IRMM、オーストラリア計量研究所【所長 Laurie Besley】(National Measurement Institute、NMIA)、英国物理研究所【所長 Brian Bowsher】(National Physical Laboratory、NPL)、米国標準技術研究所【所長 Patrick Gallagher】(National Institute of Standard and Technology、NIST)、ドイツ物理工学研究所【所長 Joachim Ullrich】(Physikalisch-Technische Bundesanstalt、PTB)が参加し、それぞれの機関が得意とする分野を担当する国際分業によりプロジェクトを遂行した。

研究の内容

 アボガドロ国際プロジェクトでは、まず、2年をかけて原料となる四フッ化ケイ素(28SiF4)をロシアの遠心分離技術で99.99 %まで濃縮し、2007年に5 kgの28Si単結晶が完成した。この結晶から直径94 mm、真球度7 nm、質量1 kgの球体が2個研磨された。この球体の密度を決定するために、産総研では新たに光の波長の精密制御によりシリコン球体の形状を1ナノメートルの精度で測定するレーザー干渉計を開発した(写真1)。この干渉計は正確な球体形状測定のためにシリコン球体温度を0.001 ℃より良い精度で制御・計測するシステムを備えた真空チャンバーに格納される(図1)。
シリコン球体形状を計測するレーザー干渉計を格納する真空チャンバーの図
図1 : シリコン球体形状を計測するレーザー干渉計を格納する真空チャンバー
正確な形状測定のために、0.001 ℃より良い精度で球体温度を制御・計測するシステムを備える。

 さらに、正確な体積測定のために、X線反射率法分光エリプソメトリーを組み合わせた表面分析法を開発し、球体表面上の酸化膜の厚さを精密測定した(写真2)。球体の密度値は、表面酸化膜の影響を補正した体積と質量の測定結果から決定された。また、結晶評価として、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構の施設を利用し、格子定数の結晶中での均一性の確認を行った。最終的に産総研を含むプロジェクト参加研究機関による密度、格子定数およびモル質量の測定値から、アボガドロ定数をこれまでよりも一桁良い精度である3.0×10-8で決定した。国際アボガドロプロジェクトは、この結果を米国の科学論文誌に発表した。決定したアボガドロ定数は、2011年6月に公開された科学技術データ委員会(CODATA)による基礎物理定数調整のためのデータとして採用されている。

分光エリプソメーター(左)とX線反射率法による膜厚測定装置(右)の写真
写真2 : 28Si同位体濃縮球体表面分析に用いた分光エリプソメーター(左)とX線反射率法による膜厚測定装置(右)
産総研での薄膜標準物質の供給に用いているX線反射率法による膜厚測定装置で値付けした標準物質で
分光エリプソメーターを校正することで、国家計量標準にトレーサブルな球体表面分析が可能。

 2007年にNISTは、ジョセフソン効果量子ホール効果から決められる電圧と電気抵抗の測定から、プランク定数をワットバランス法により直接実験的に測定し、3.6×10-8の精度で決定している。今回のアボガドロ定数の高精度化により、アボガドロ定数とプランク定数の双方の測定精度が5×10-8を上回ったことになる。これを受け、2011年10月に開催されたメートル条約の最高議決機関である国際度量衡総会において、国際キログラム原器を将来廃止し、基礎物理定数によるキログラムの再定義を実施する方向性を示す決議が採択された。これにより、歴史上初めて人工物ではなくアボガドロ定数やプランク定数といった普遍的な物理定数による質量標準の確立が現実のものとなりつつある。

 国際度量衡総会でのキログラムの再定義の議論においては、シリコン結晶から得られたアボガドロ定数と、ジョセフソン効果や量子ホール効果に基づく電気標準から得られたプランク定数を介して導かれたアボガドロ定数とが比較された(図2)。アボガドロ国際プロジェクトの測定値は誤差の範囲でNPLおよびスイス連邦計量研究所(Bundesamt für Metrologie、METAS)によって得られたデータとは一致するが、ワットバランス法によって決定された最も精度の良いデータであるNISTのデータとは一致せず、7桁目で異なる。この不一致が2011年10月の国際度量衡総会でキログラム再定義が実施されなかった最大の原因であり、今後それぞれの方法を高精度化し、この差の原因を究明するための複数の国際研究協力が実施される予定である。


異なる測定原理によって決定されたアボガドロ定数の比較の図
図2 : 異なる測定原理によって決定されたアボガドロ定数の比較
各データ上のバーは実験データの標準不確かさを表す。NIST-07: NISTのワットバランス法によるプランク定数の測定
(2007年)、NPL-10: NPLのワットバランス法によるプランク定数の測定(2010年)、METAS-11: METASの
ワットバランス法による測定(2011年)、IAC-11: アボガドロ国際プロジェクトによる測定(2011年)。

今後の予定

 シリコン結晶からのアボガドロ定数決定に関しては、産総研、BIPM、INRIM、NMIA、PTBの5研究機関による新たな国際研究協力が2012年より開始される。28Si同位体濃縮シリコン球体の体積測定の高精度化などにより、さらに高精度なアボガドロ定数測定が期待されている。ワットバランス法によるプランク定数に関しては、NIST、NPLおよびMETAS以外にフランス国立計量研究所(Laboratoire National de Metrologie et D’essais、LNE)およびカナダ国立研究機構(National Research Council Canada、NRC)においても測定が進んでいる。これらの多くの独立した高精度実験に基づき、X線結晶密度法とワットバランス法の不一致の原因の解明が行われる予定である。

問い合わせ

独立行政法人 産業技術総合研究所
計測標準研究部門 流体標準研究室
主任研究員   倉本 直樹 E-mail:n.kuramoto*aist.go.jp(*を@に変更して使用して下さい)

用語の説明

◆アボガドロ定数
物質1 モルに含まれる構成要素(原子や分子)の数。科学技術データ委員会によるアボガドロ定数の推奨値はNA= 6.022 141 29(27)×1023mol-1である(2010年現在、括弧内の数値は最後の桁の標準不確かさ(標準偏差で表した測定結果の不確かさ))を表す。[参照元に戻る]
◆モル(mol)
「物質量」(amount of substance)を表す単位であり、現行の定義では、「0.012 kgの12C(質量数12の炭素原子)の中に存在する原子の数に等しい数の要素粒子を含む系の物質量である」と定められている。[参照元に戻る]
◆基礎物理定数
物理法則を支配する普遍的な定数。光速度、アボガドロ定数、プランク定数などは最も重要な基礎物理定数である。これらの基礎物理定数は極めて基本的な定数であり、ほかの多くの物理定数がこれらの定数に依存しているので波及効果も高い。科学技術データ委員会によって世界中で得られた実験データが評価され、4年に一度、約200の基礎物理定数が改訂され推奨値として公表されている。[参照元に戻る]
◆同位体
同じ原子番号をもつ元素(原子核の陽子数が同じ)の原子において、原子核の中性子数(つまりその原子の質量数)が異なる原子を互いに同位体であるという。[参照元に戻る]
◆格子定数
結晶の最小単位である単位胞の寸法を表す数値のこと。シリコン結晶の格子定数は温度20 ℃、圧力0 Paにおいて約543 pm(ピコメートル、1兆分の1メートルを表す)である。[参照元に戻る]
◆モル質量
物質1モルあたりの質量を表す物理量。自然界に存在するシリコンには3種類の安定同位体28Si、29Si、30Siがあるので、その存在比を測定すればシリコンのモル質量(平均原子量)が求められる。[参照元に戻る]
◆X線結晶密度法
アボガドロ定数をシリコン結晶の密度ρ格子定数a、モル質量M の測定から決定する方法。シリコン結晶の単位胞には8個の原子が存在するため、アボガドロ定数はNA= 8M/(ρa3)として求められる。[参照元に戻る]
◆レーザー干渉計
レーザー光を使って長さや変位を測る装置。光の1波長をさらに分割することにより、1ナノメートルよりも短い長さを測定することも可能である。[参照元に戻る]
◆ナノメートル
10億分の1メートルを表す長さの単位。記号nmで表される。1マイクロメートルの1千分の1。ナノテクノロジーという用語で既によく知られているように、およそ数原子間の距離に相当する。[参照元に戻る]
◆メートル条約
◆国際度量衡総会(CGPM:General Conference on Weights and Measures)
◆国際度量衡委員会(CIPM:International Committee for Weights and Measures)
◆国際度量衡局(BIPM:International Bureau of Weights and Measures)
メートル条約は、1875年に創設された国際条約で、国家計量標準の同等性のために国際単位系(SI)のを普及・改良し、計量学上の諸問題を国際的観点から科学的に解決することを目的とする。我が国が加盟したのは1885年。2011年10月現在、55カ国が加盟している。国際度量衡総会、国際度量衡委員会、国際度量衡局はいずれもメートル条約に基づく機関である。国際度量衡総会は加盟国が一堂に会するメートル条約下の最高議決機関である。おおむね4年に1度パリで開催され、2011年10月に第24回国際度量衡総会が開催された。国際度量衡委員会は国際度量衡総会の決定事項に関する代執行機関で、また、事実上の理事機関でもある。国際度量衡局はパリ郊外にある、国際度量衡委員会の事務局であり、国際キログラム原器を保管している。[参照元に戻る]
メートル条約の組織図
メートル条約の組織
◆度量衡
計量に用いられる単位および標準の総称。字義的には「度」は長さ、「量」は容積、「衡」は質量を意味する。18世紀以前は、度量衡は国ごとに異なり、地方ごとに、職種ごとに、さらには時代により異なるものであった。19世紀になり、産業革命を契機とする国際的な科学技術と交易品の流通が飛躍的に増加し、国際的な度量衡の統一が強く望まれた。このような背景のもと、メートル条約が締結された。[参照元に戻る]
◆国際単位系(SI)
キログラム(kg)、メートル(m)、秒(s)、ケルビン(K)、アンペア(A)、モル(mol)、カンデラ(cd)の7つのSI基本単位と、これらの組み合わせであるSI組立単位から構成される単位系。SI組立単位には角度の単位であるラジアン(rd)、圧力の単位であるパスカル(Pa)などがある。これらを総称してSI単位と呼ぶ。[参照元に戻る]
◆校正
計量器が示す値と標準によって実現される値の間の関係を確定する作業。各国のキログラム原器は定期的に国際度量衡局に運ばれ、国際キログラム原器との質量比較測定によりその質量と不確かさが決定される。[参照元に戻る]
◆プランク定数
マックス・プランク(Max Planck 1858-1947)が黒体からの熱放射を研究する過程で導入した定数。量子論における最も重要な定数の一つである。科学技術データ委員会によるプランク定数の最も新しい推奨値はh = 6.626 069 57(29)×10-34 Jsである(括弧内の数値は最後の桁の標準不確かさ(標準偏差で表した測定結果の不確かさ)を表す)。[参照元に戻る]
◆質量数
原子を構成する中性子と陽子の数の和。原子は陽子、中性子、電子よりなる。電子の質量は陽子および中性子の質量に比べて非常に小さく、原子の質量は中性子と陽子の数によってほぼ決まる。このため、中性子の数と陽子の数の和を質量数と呼ぶ。[参照元に戻る]
◆真球度
球体形状の完全な球体からのずれを示す指標。アボガドロ国際プロジェクトでシリコン単結晶球体体積測定に用いたレーザー干渉計は球体の様々な方位の直径を測定し、その平均直径から体積を算出する。球体の真球度が大きい場合、平均直径から精度良く体積を求めることができない。[参照元に戻る]
◆不確かさ
「不確かさ」(uncertainty)は、1993年に国際標準化機構(ISO)から出版された「計測における不確かさの表現のガイド」(Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement)によって定義された測定値の信頼性を表す指標。従来は計測の信頼性を表すのに「誤差」が用いられてきたが、その大きさを見積もる方法が統一されていなかった。このガイドによって「不確かさ」を見積もる方法が国際的に統一された。「標準不確かさ」(standard uncertainty)は標準偏差で表した測定結果の「不確かさ」を表す。[参照元に戻る]
◆X線反射率法
物質の表面にX線を入射した場合、表面で一部が反射されるが、ほかは物質の深部に侵入する。物質の表面に電子密度の異なる薄膜が存在する場合、薄膜表面からの反射X線と薄膜と物質との界面からの反射X線の干渉により、反射強度は入射角度により周期的に変化する。この変化の解析により薄膜の厚さを測定することができる。[参照元に戻る]
◆分光エリプソメトリー
試料に光を照射し、反射の際の光の偏光状態の変化より試料表面上の薄膜の厚さを測定する方法。照射光の波長を変化させることで、正確な膜厚測定が可能である。[参照元に戻る]
◆科学技術データ委員会(CODATA:Committee on Data for Science and Technology)
国際科学会議(ICSU:International Council for Science)によって設置された科学委員会。基礎物理定数、環境、生物、地球、海洋、などの科学技術データを定期的に公表するための幾つかの作業部会からなる。基礎物理定数作業部会は定期的に基礎物理定数の推奨値を公表してきおり、その値はあらゆる分野で採用され、最も信頼性の高いデータとして国際的に広く引用されている。[参照元に戻る]
◆ジョセフソン効果
厚さ2 nm程度の絶縁膜を挟んだ2つの超伝導体の間(トンネル接合)を超伝導電子対のトンネル効果によってトンネル電流が流れる現象。特に交流ジョセフソン効果は電圧の単位であるボルトを設定するのに広く用いられている。トンネル接合された素子(ジョセフソン素子)にマイクロ波を照射すると電流-電圧特性に不連続なステップが誘起される。このときn 番目のステップの電圧はジョセフソン電圧と呼ばれUJ=nν/(2e/h)で表される。ここで、νはマイクロ波の周波数、e は電荷素量、h はプランク定数を表す。特にKJ=2e/h はジョセフソン定数と呼ばれる。[参照元に戻る]
◆量子ホール効果
強磁場下の二次元電子系において、電気抵抗が(h/e2)/ii は整数)となる現象。このときの量子化ホール抵抗はRH= (h/e2)/i で表される。特にRK= h/e2はフォン・クリッツィング定数と呼ばれる。この効果は電気抵抗の標準を設定するためにも用いられている。[参照元に戻る]
◆ワットバランス法
ジョセフソン効果と量子ホール効果によって実現される電圧と抵抗を基準にしてプランク定数を測定する方法のこと。1975年にNPLのBryan Kibbleによって開発された。現在ではNIST、BIPM、LNE、NRCなどで開発が進んでいる。[参照元に戻る]