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発表・掲載日:2008/06/02

環境調和型建材実験棟完成

-省エネルギー建築部材の実使用環境における評価を開始-

ポイント

  • 快適性を損なわずに住環境の省エネを図る建築部材の性能等の評価を実使用環境にて行うための実験棟が完成
  • 調光ミラー、木製サッシ、調湿材料、保水材料など研究開発中の建築部材の省エネルギー性能等の評価を開始
  • 民生部門への省エネ建築部材を普及させることにより、地球温暖化対策に寄与


概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)サステナブルマテリアル研究部門【部門長 中村 守】は、中部センター内に環境調和型建材実験棟を竣工させ、気象や室内環境などの計測機器等の整備を行った。

 同部門で開発中の革新的省エネ建材である「調光ガラス」、「木製サッシ」、「調湿材料」、「保水材料」、「太陽エネルギー制御壁」など各種省エネルギー建築部材を実験棟内外に設置し、それぞれの部材の実際の使用環境における省エネルギー性能や耐久性などの評価計測を開始している。

 これまでも革新的省エネ建築部材の開発は国の内外の研究機関で行われてきているが、その評価のほとんどが室内の実験スペースにおいて実施され、実際の使用環境下において評価されることはほとんどなかった。

 この実験棟で、実環境下での部材評価を行うことにより、省エネ建築部材の実用化普及を促進させ、地球温暖化対策に寄与することが期待される。

環境調和型建材実験棟全景の写真

環境調和型建材実験棟全景


開発の社会的背景

 2005年2月の京都議定書の発効を受け、地球温暖化対策としてCO2排出量削減が義務付けられた。しかしながら我が国のCO2排出量は産業部門と運輸部門では横ばいになってきているものの、排出量の3割を占める民生部門(業務用+家庭用)では依然として増加を続けている。民生部門の排出で最近特に増加の著しいのは室内温熱環境制御用の空調機器類(エアコン類)だが、単なる省エネルギー機器の導入だけでは限度もあるため、快適性を損なうことなくかつ高度な技術を必要としない省エネルギー技術を開発することにより、民生部門での省エネルギーすなわちCO2排出量削減を図ることが求められている。

研究の経緯

 このため、サステナブルマテリアル研究部門では、重点研究課題の一つとして革新的な省エネ建材である「省エネルギー型建築部材」の研究開発に取り組んできている。具体的には、建物の窓ガラスのエネルギー透過率を制御する「調光ガラス」、断熱性が高く耐久性・形状安定性に優れた窓サッシを開発する「木製サッシ」、室内の湿度を自律的に制御することで空調負荷を減らす「調湿材料」、屋上やベランダなどの夏季のヒートアイランド現象などを防止する「保水・透水材料」の研究開発を行っている。また、「太陽エネルギー制御壁」(外壁面の工夫による太陽エネルギーの有効利用)の検討も行っている。

 これまでも革新的省エネ建材の開発は国の内外の研究機関で行われてきているものの、その評価のほとんどが室内の実験スペースにおいて実施され、実際の使用環境下において評価されたことはほとんどない。

 そこで、これらの材料の実使用条件における省エネルギー性能を評価するとともに、耐久性等実使用環境における問題点を把握し、実用化を加速するためにこのほど環境調和型建材実験棟を完成させた。

研究の内容

 環境調和型建材実験棟は鉄骨構造3階建、1フロアあたり8m×10mの床面積である。1階は1フロア1室、2階、3階はそれぞれ同一面積の4室に区切っており、建物の方位を正確に東西南北に合わせている。1階は大空間として事務室をイメージしており、2階3階は一般住居の居室をイメージしている。

 2階南面2室は「太陽エネルギー制御壁」による省エネルギーの評価を行う予定で、南面全面を壁とし、現在は上面を白色とした三角タイル及び比較用に平面タイルを貼り付けている。三角タイルにより太陽高度が高い夏季には太陽光の反射量を増やし、太陽高度が低い冬季には太陽光をよく吸収させて、季節による太陽エネルギーの建物への流入の自律的な制御の効果を、通常のタイルを貼った場合と比較評価する研究を行う。

 2階の北側2室は木質材料室及び調湿材料室として、それぞれの室内壁や天井、サッシに各材料を設置している。3階は調光ミラーを窓に設置し、設置しない部屋と比較する。これらのそれぞれの部屋において、温度・湿度などの室内環境データを計測評価するとともに、同一機種のエアコンを設置し、同一室内条件を維持するために必要な電力消費量からも省エネルギー性能を評価する。

 屋上には、保水性タイルの設置を行い、敷設の有無による屋上面並びに直下天井裏への温度上昇防止効果を評価するとともに、材料の耐久性等も評する。また、室外気象条件を計測するための日射計、風向風速計などの気象計測機器も設置している。データは3階北側部屋に設置したパソコンで収集解析する。

太陽エネルギー制御壁の写真
太陽エネルギー制御壁
  木質材料室の写真
木質材料室
     
屋上での保水材料試験の写真
屋上での保水材料試験
   

今後の予定

 調光ガラス、外壁タイル、屋上保水性タイルについては、直ちに各季節での効果を評価するため、計測を開始している。木質材料と調湿材料については、まず、建築時に設置した市販の木質壁やサッシ、また市販の調湿タイルでの室内環境の評価を行った後に、当部門で開発中の木質材料や調湿材料に交換してその性能を評価する予定にしている。

問い合わせ

(研究担当者)
独立行政法人 産業技術総合研究所
サステナブルマテリアル研究部門
副研究部門長 田尻 耕治
E-mail:k.tajiri*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)

用語の説明

◆調光ガラス
光の透過率や反射率を変化させられるガラス。窓に使用することで、必要に応じ、透明状態にして太陽光エネルギーを室内に取り込んだり、また着色あるいは反射状態にして太陽光エネルギーの室内への流入を防ぐことで空調負荷の削減ができる。駆動方式により、透明状態と光吸収状態を電気で変化させる「エレクトロクロミック」、温度で透明状態と光吸収状態を変化させる「サーモクロミック」、水素を含んだガスと酸素を含んだガスでスイッチングを行う「ガスクロミック」などがある。また、反射率を変化させることで、透明な状態と鏡の状態が切り替えられるものは「調光ミラー」と呼ばれ、従来の吸収型の調光ガラスに対してより大きな省エネルギー効果が期待されている。今回は当部門で現在精力的に研究開発を行っている「調光ミラー」から、実証試験を行う予定としている。[参照元に戻る]
◆木製サッシ
アルミニウムの1/1000以下の熱伝導率という木材の高い断熱性能により、窓からの熱の流入や逸失を2~3割削減する。また結露防止の効果もある。従来の木材の欠点を解消するため、耐久性、寸法安定性(変形をおこさない)、難燃・不燃性付与、などを圧密加工などにより行っている。また、押し出し成型により製品形状を一気に作製する加工法も研究しており、今まで使用できなかった小枝など端材の有効利用も図っている。[参照元に戻る]
◆調湿材料
周囲空気の湿度が高ければ水分を吸着して湿度を下げ、周囲空気の湿度が低くなれば吸着していた水分を放出して湿度を適当な範囲に自律的に維持する材料。結露防止効果もある。天然多孔質粘土などを用いた調湿タイルが市販されている。室内温熱環境の快適さには温度の他に湿度も大きく関係するので、湿度を自律的に人が快適と感じる40-60%に制御できれば空調設定温度を上げることができ、空調の省エネに繋がる。そのため当部門では調湿性能のさらに優れた材料の開発を行っている。[参照元に戻る]
◆保水材料
雨水などを材料中に蓄え、打ち水と同様に強い日射時にわずかずつ水が蒸発することにより表面温度の上昇を抑える材料。ブロックとして屋上や屋外床面に設置されるが、コストや環境を考え、当部門では100%リサイクル品で非焼成の保水性ブロックの研究を行っている。[参照元に戻る]
◆太陽エネルギー制御壁
大げさな名称としたが、壁面の工夫により駆動エネルギーなどを使うことなく太陽の高度によって壁を通って建物内に入る太陽熱を制御することを意図した壁。日本家屋のひさしなども夏は日射を遮り冬は室内まで日射を入れることを意図しているので同じ目的といえる。[参照元に戻る]
◆京都議定書
1997年に京都で開催されたCOP3で採択され、2005年に発効した。日本はCO2など温室効果ガスの排出量を1990年基準で6%減とすることが義務付けられている。ただし、1990年以降も温室効果ガスの排出量は増え続けているので、2002年を基準とすると13.6%の削減を必要とする。[参照元に戻る]




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