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発表・掲載日:2007/06/19

ナノ空間を利用した抵抗スイッチ「ナノギャップスイッチ®」を開発

ポイント

  • 幅約10nm以下の隙間をはさんだ電極だけで抵抗スイッチ効果を実現
  • 超小型不揮発性メモリーの実現が期待できる
  • 既存の製造装置で開発できる可能性を持ち、量産化も比較的容易と考えられる

概要

 高速動作や高集積化、低消費電力などを目指し、FeRAM・MRAM・PRAM・RRAM・分子メモリー・原子スイッチなど数多くの次世代不揮発メモリーが盛んに研究されている。その中でも近年、ナノスケール空間を利用した抵抗スイッチの研究が数多く行われている。これには、スイッチ効果を持つ化合物(導電性有機化合物、カーボンナノチューブ、アモルファスカーボンなど)を電極間にはさんだ分子スイッチや、白金(Pt)電極と、硫化銀(AgS)や硫化銅(CuS)電極との間で銀または銅原子を物質移動させ、電極間の接続・非接続を制御することによる原子スイッチ等がある[1]。特に原子スイッチは、チャージや磁気的性質をまったく用いず、印加電圧によって電極間の金属s子をコントロールして抵抗変化を実現している。一般に、(MRAMなど一部を除いて) メモリー素子は素子サイズを小さくすると応答速度は増し、消費電力は低下するが、信号の保持時間は短くなる傾向にある。しかし、原子スイッチはチャージの拡散や励起状態の緩和などが起こらないため、サイズが小さくても保持時間はあまり短くならないと考えられる。そのため、このような物質移動を介した原子スイッチは他の技術に比べて非常に微細化しやすいと考えられ、次世代不揮発性メモリー開発の鍵となる重要な技術である。

 内藤らは、シリコン基板上に作製した約10nmの微小間隙(かんげき)を有する金電極(以下ナノギャップ電極、図1参照[2])に電圧を印加することによって、金属原子の物質移動を介した抵抗スイッチ効果が現れることを見いだした[3]。この効果は、ギャップサイズが約10nm以下でのみ動作し、ナノスケール特有の現象である事がわかる。また、スイッチにともなう抵抗変化のOn・Off比は最大で107にも達し、図2のように状態間の変化を10000回以上繰り返しても動作し続けた。電気計測と走査電子顕微鏡(SEM)観察の同時測定結果から、ナノギャップ電極における抵抗変化は、図3のように金原子の物質移動によるギャップ幅の変化にともなうトンネル抵抗の変化によると考えられる。また、電極材質も金に限らず様々な金属材料で動作し、広い材料選択性を有している。

 このスイッチ効果はナノスケールで発現し、微細化のサイズ限界が微細配線加工のみであるため、超小型不揮発性メモリー実現の可能性を持っている。また、シリコン酸化膜基板上で動作可能であり、絶縁体上の金属という構造は様々な素子の配線部で用いられる構成なので、既存のシリコンテクノロジーとの整合性がよく、新たに高価な製造装置を開発しなくても、超小型不揮発性メモリーが開発できる可能性がある。次世代の超小型不揮発性メモリーやストレージの実現のために、現在スイッチ効果発生のメカニズムの解明とともに要素技術開発を進めている。

 NanoGapSwitch~ナノギャップスイッチ~は産総研ナノテクノロジー研究部門の登録商標です。

図1

図1 ナノギャップ電極の概略図とSEM像


図2

図2 スイッチング動作の繰り返し特性


図3

図3 抵抗スイッチ効果のモデル図



[1] 寺部一弥、長谷川剛、中山知信、青野正和、「原子スイッチ―原子(イオン)の移動を利用したナノデバイス―」、表面科学 Vol. 27, No. 4, 232 (2006).

[2] Y. Naitoh, K. Tsukagoshi, K. Murata, and W. Mizutani, “A Reliable Method for Fabricating sub 10 nm Gap Junctions Without Using Electron Beam Lithography,” e-J. Surf. Sci. Nanotech. 1, 41 (2003).

[3] Y. Naitoh, M. Horikawa, H. Abe, and T. Shimizu, “Resistance Switch Employing a Simple Metal Nanogap Junction” Nanotechnology 17, 5669-5674 (2006).



問い合わせ

(研究担当者)
独立行政法人産業技術総合研究所
ナノテクノロジー研究部門分子ナノ物性グループ
兼 独立行政法人科学技術振興機構 さきがけ「ナノ製造技術の探索と展開」研究分野
内藤 泰久
E-mail:ys-naitou*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)

独立行政法人産業技術総合研究所
ナノテクノロジー研究部門ナノ科学計測グループ
清水 哲夫
E-mail:tetsuo-shimizu*aist.go.jp(*を@に変更して送信下さい。)




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