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発表・掲載日:2002/06/05

銀ナノワイヤ製造法を開発


概要と現状

 近年の電子デバイスのマイクロ集積化に伴い、ナノメートルスケールの材料の製造技術開発は、世界中でしのぎを削っている状態である。(1ナノメートル(nm)は、1mmの百万分の1)将来の集積回路素子や量子素子の開発では、100nm以下の超微細加工が必要となる。

 現在配線加工の主流であるフォトリソグラフィー法では、光の波長で加工精度が制限されるため、数百nm以下の加工は困難である。また、最近開発研究が盛んな直径が数nmのカーボンナノチューブは電気を通しやすい性質を持つため、将来の電子デバイスの配線材料として期待されている。電気を通しやすい金属ナノワイヤ(直径がナノメートルスケールのワイヤ)もまた、カーボンナノチューブ同様、配線材料としての応用が期待できる。しかしながら、電気をよく通す金、銀、銅などの金属ナノワイヤは、アスペクト比(直径に対する長さの比)が小さな針状結晶に近いものについては種々の方法により合成された報告例があるが、いずれの方法もナノワイヤの長さが数千nm程度であり、十分に応用が期待できなかった。導電性のナノワイヤの細線化技術は次世代集積回路の製造に必要不可欠な要素プロセス技術の1つである。

 この研究は海水用抗菌剤の開発の中で見出したものであり、現在産総研新萌芽的研究課題として研究を進めている。



今回の開発

 今回、 産業技術総合研究所海洋資源環境研究部門の槇田洋二主任研究員が開発した方法は、銀イオンを保持した母体に電子線を照射してナノワイヤを合成するもので、直径が数~数十nmの金属銀ナノワイヤを容易に生成できる特徴を持つ。現在、銀ナノワイヤのアスペクト比は2000以上にもなり、ナノ繊維ともいうべき世界最長の銀ナノワイヤの合成手法である。また本手法を用いて、銅など他の金属ナノワイヤの合成も可能である。この研究成果について特許を共同出願しており、この度公開された。

 今回開発した銀ナノワイヤは、銀がすべての金属の中で最も電子をよく通す性質を持つことから、高い電子伝導性を示す。そのため近年飛躍的に小型化する集積回路や量子素子の配線材料や、フラットパネルディスプレーなどのFED(電界電子放出ディスプレー)の電子放出源としての応用が期待できる。

銀ナノワイヤの生成方法および原理

 本手法は、マイナスイオンの電子は通さず、プラスの銀イオン(Ag+)が内部を自由に動き回れる構造を持つ母体を使い、その固体に電子線を当てることにより長い銀ナノワイヤを射出紡糸するものである。この固体に電子線が当たると、電子を通しにくいため、表面が局所的にマイナスイオンに帯電する。このことにより、内部の銀イオン(Ag+)は帯電した局所表面に引き寄せられ、さらにその場所で還元されて金属銀(Ag)となり、外に銀細線として伸びていく。

 この反応が連続的に生じ、金属銀ナノワイヤを成長させる。まるで「蜘蛛」が糸を紡ぐように固体内の銀がなくなるまで銀細線をはき出していく。

写真1
図:銀ナノワイヤ生成メカニズム

ナノワイヤの特徴

 本手法で生成されるナノワイヤは、(酸化物や、銀化合物ではなく)銀単体のみで作られた金属銀ナノワイヤである。銀はすべての元素の中で最も電子をよく通す性質を持つことから、銀ナノワイヤは高い電子伝導性を示すものと期待される。

 銀ナノワイヤの平均的な大きさは、直径が数~数十nm、長さが数万~十万nm程度である。現在最も長い銀ナノワイヤはアスペクト比2000以上にもなる世界最長の銀ナノワイヤである。

 今回の手法は連続的に銀を紡糸できるところに特徴があり、画期的な製造技術である。

写真2
写真3
 
金属銀ナノワイヤの走査電子顕微鏡写真

 走査電子顕微鏡を用いて支持膜の上に置いた銀イオン母体の表面から成長させた金属銀ナノワイヤの電子顕微鏡写真。直径は約40nm、長さは少なくとも0.1mm以上。


問い合わせ

独立行政法人 産業技術総合研究所 海洋資源環境研究部門 槇田洋二
E-mail:y-makita@aist.go.jp




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