産総研:研究ハイライト GaNとSiCを一体化したハイブリッド型トランジスタを世界で初めて動作実証

エネルギー・環境領域
GaNとSiCを一体化したハイブリッド型トランジスタを
世界で初めて動作実証
GaNトランジスタの過電圧脆弱性を解決
  • 先進パワーエレクトロニクス研究センター中島 昭
  • 原田 信介

掲載日:2021/12/12

GaNトランジスタとSiCダイオードをモノリシック化

独自の一貫製造プロセスラインの構築によって、窒化ガリウム(GaN)を用いた高電子移動度トランジスタと炭化ケイ素(SiC)を用いたPNダイオードの両者をモノリシックに一体化し、ハイブリッド型トランジスタの作製および動作実証に世界で初めて成功した。このトランジスタは、高い信頼性が求められる電気自動車や太陽光発電用パワーコンディショナーなどへの適用が期待される。

ハイブリッド型トランジスタとその等価回路のイメージ図
直径100mmウエハー上に形成されたハイブリッド型トランジスタとその等価回路
 

従来のGaN高電子移動度トランジスタにおける課題

2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、電気自動車や太陽光発電などに使用される電力変換器には、高効率化・小型化および高い信頼性が必要である。電力変換器に使われているパワートランジスタにも、さらなる技術革新が不可欠である。GaNトランジスタは、電力変換の効率化に有効であるが、回路の異常動作時におけるノイズエネルギーの吸収力が小さいという弱点があり、これが普及の妨げとなっていた。

 

回路異常動作時に起こるGaNトランジスタ耐圧破壊の問題を解決

作製したハイブリッド型トランジスタでは、SiC側の耐電圧をGaNに対してわずかに低く設計することで、SiCダイオードの耐電圧を超えた場合に、SiC側で熱としてエネルギーを逃がしGaN側が過電圧とならず、複数回の掃引に対して安定した可逆的降伏動作が確認できた。また、導電性(移動度)が非常に高い2次元電子ガスを通して電流が流れるため、300mA/mmの高いドレイン電流および47Ωmmと低いオン抵抗を確認した。また、SiCは熱伝導率がSiの3倍と高いことから、優れた放熱特性を得ることができる。

 

変換器に利用可能なデバイスの動作実証

実際の変換器に利用可能な大面積デバイスの定格10A以上の動作実証に取り組む。同デバイス技術は、次世代電力変換器の高効率化および信頼性向上につながる。

 
 

本研究テーマに関するお問合せ先

中島昭主任研究員の写真
先進パワーエレクトロニクス研究センター パワーデバイスチーム

主任研究員 中島 昭(なかじま あきら)

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