産総研:研究ハイライト 二酸化炭素からメタノールを常温で合成できる触媒を開発

エネルギー・環境領域
二酸化炭素からメタノールを常温で合成できる触媒を開発
-触媒でカーボンリサイクルに貢献-
  • ゼロエミッション国際共同研究センタ-姫田 雄一郎
  • 尾西 尚弥
  • 省エネルギー研究部門兼賀 量一

掲載日:2021/01/14

低温・低圧で二酸化炭素からメタノール合成が可能な触媒

触媒分子に2個のイリジウムを精密に配置した複核触媒を新たに開発し、二酸化炭素と水素からメタノールを低温・低圧条件で合成することに成功。

2つのイリジウムを持つ触媒を用い二酸化炭素を水素化しメタノ-ルを生成のイメージ図
2つのイリジウムを持つ複核触媒を用いた二酸化炭素の水素化によるメタノール合成
 

二酸化炭素からメタノール製造の効率化

プラスチックや燃料等の様々な原料となるメタノールを二酸化炭素から製造する触媒の開発が活発に行われている。既存の固体触媒では、200℃以上の高温が必要なため、熱力学的平衡によって転化率が20~30%程度に制約され、かつ一酸化炭素やメタンが副生するなど、実用化への課題が多く残されている。

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低温低圧で二酸化炭素からメタノールを合成

今回開発した複核イリジウム錯体触媒を固体の状態で、水素と二酸化炭素の混合ガスと反応させると、反応の温度が30℃、あるいは圧力が0.5 MPaでも、二酸化炭素をメタノールへ変換することに成功した。また、メタンや一酸化炭素は検出されなかった。これは、触媒分子中に精密に配置した高活性な2つのイリジウムが協奏的に二酸化炭素を還元したためと考えている。生成したメタノールはガス相に存在するため回収がしやすく、フロープロセスへの適用が可能であり、実用化が期待できる。

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カーボンリサイクル技術の実現に向けた触媒プロセスにつなげる

触媒のさらなる高性能化と低コスト化を目指す。また、メタノールの生産性をより向上させるため、フロープロセスを開発して実用性の高い触媒プロセスの開発を進めていく。

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本研究テーマに関するお問合せ先

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ゼロエミッション国際共同研究センタ-

首席研究員 姫田 雄一郎(ひめだ ゆういちろう)

〒305-8569 茨城県つくば市小野川16-1 西事業所

メール:gzr-info-ml*aist.go.jp(*を@に変更して使用してください。)

ウェブ:https://www.gzr.aist.go.jp/

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省エネルギー研究部門 エネルギー貯蔵システムグループ

研究員 兼賀 量一(かねが りょういち)

〒305-8565 茨城県つくば市東1-1-1 中央第5

メール:M-ene-storage_all-ml*aist.go.jp(*を@に変更して使用してください。)

ウェブ:https://unit.aist.go.jp/ieco/est-2021/