研究ハイライト 溶剤フリーで楽しめるジェルネイルへ

材料・化学領域
溶剤フリーで楽しめるジェルネイルへ
-光で接着・剥離を制御する新材料-
  • 機能化学研究部門山本 貴広

掲載日:2020/10/09

光で接着・剥離を制御する

塗料材に液晶成分を混合して密着性を光制御する技術を開発、近紫外光の照射で密着性が大きく下がることを実証。溶剤を使用しない剥離技術への応用が期待。

混合物と従来混合物との比較した図
図1 新しい混合物と従来混合物との比較 左)硬さ(貯蔵弾性率)、右)密着性
 

健康や安全面に課題のあるジェルネイル

ジェルネイルを使用する際には、液状の光重合性組成物を爪に塗布し、光照射により重合・硬化させて塗膜を形成する。一方、塗膜の剥離に有機溶剤が必要となり、健康・安全の面で課題がある。酸性またはアルカリ性の水溶液による方法が提案されているが、実用化されていない。有機溶剤を使用しない除去技術の開発が望まれていた。

ジェルネイルの写真
 

無色透明!しかも10分の光照射で密着性が低下

今回開発した材料は、光重合性物質を混合した樹脂と液晶の混合物であり、これに可視光(波長405nm)を3分間照射して光硬化させると、硬さの指標である貯蔵弾性率は従来混合物と比較して約1000倍向上した。さらに、アゾベンゼン系とは異なる化合物の液晶成分を検討し、無色・透明の混合物を開発した。この混合物に近紫外光(波長365nm)を10分間照射すると、密着性は1/10に低下することを実証した。

ジェルネイルを塗る山本主任研究員の写真
 

塗料や接着剤などへの展開に期待

今後は、材料メーカーとの連携を進め、数年以内の実用化を目指す。また,本研究成果は,ジェルネイルだけでなく,広く塗料剤や接着剤などへの応用展開が期待できる。

山本主任研究員の写真
 
 

本研究テーマに関するお問合せ先

山本主任研究員の写真
機能化学研究部門 スマート材料グループ

主任研究員 山本 貴広(やまもと たかひろ)

305-8565 茨城県つくば市東1-1-1 中央第5

メール:isc-web-ml*aist.go.jp(*を@に変更して使用してください。)

ウェブ:https://unit.aist.go.jp/ischem/