産総研:研究ハイライト 素材も走りも環境にやさしい自動車の実現へ

材料・化学領域
素材も走りも環境にやさしい自動車の実現へ
-重希土類フリー、高耐熱、高保磁力の磁石粉末を合成-
  • 磁性粉末冶金研究センター岡田 周祐
  • 高木 健太

掲載日:2020/10/09

これまでにない高い保磁力を持つ重希土類フリーの磁石粉末

還元拡散反応に特化した回転式熱処理技術の開発により、重希土類元素を使わず、室温での保磁力30kOe以上のサマリウム-鉄-窒素系磁石粉末の作製技術を開発した。

開発した磁石粉末の外観写真
今回開発したプロセスと従来のプロセスで合成したサマリウム-鉄-窒素(Sm2Fe17N3)磁石微粉末の粒子径と室温保磁力の関係(左)、開発した磁石粉末の外観写真(右)
 

ハイブリッド自動車の高性能化へ、求められる磁石の耐熱性

自動車駆動用モーターは内部温度が200 ºC程度まで上昇するため、高い残留磁化とともに耐熱性が求められる。現在用いられているネオジム-鉄-ホウ素系磁石(ネオジム磁石)は高温では保磁力が激減するので、ジスプロシウムやテルビウムなどの重希土類元素の添加で耐熱性を付与している。しかし、重希土類元素は価格や供給が不安定なので、重希土類元素フリーの耐熱性高性能磁石が求められている。

 

サブマイクロメートルサイズに磁石粉末を均一化する新技術

サマリウム-鉄-窒素系磁石粉末の保磁力向上には、還元拡散反応系の均一化が必要である。そのため、多相系の撹拌と気密空間での熱処理が同時にできる回転式熱処理技術を開発した。さらに、これまでに開発した粒径微細化技術により、室温で約32 kOe自動車駆動用モーター用途の目安の200 ºCで約11 kOeと、重希土類フリーの希土類-鉄系磁石ではこれまでにない高い保磁力を実現した。耐熱性に優れているため、今後、高温環境下ではネオジム磁石を超える磁石の実現が期待される。

磁石粉末の写真
 

さらなる高性能化と実用化に欠かせない焼結技術の開発へ

今回作製した磁石粉末の分散性を向上させて配向性を良くし、残留磁化を改善する。また、今回開発した磁石粉末の焼結技術の開発を行う。

岡田主任研究員の写真
 
 

本研究テーマに関するお問合せ先

岡田主任研究員の写真
石井研究グループ長の写真
磁性粉末冶金研究センター ハード磁性材料チーム

主任研究員 岡田 周祐(おかだ しゅうすけ)

研究センター付 高木 健太(たかぎ けんた)

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