産総研:研究ハイライト 医療機器のデジタルものづくりがいよいよ社会へ

生命工学領域
医療機器のデジタルものづくりがいよいよ社会へ
-材料の薬事承認取得を牽引!3Dプリンティング技術による人工歯(入れ歯)の実用化-
  • 健康工学研究部門岡崎 義光

国内初!3Dプリンターで作る医療機器の人工歯

コバルトクロム合金粉末の国内初の医療機器としての薬事承認を取得し、3Dプリンティング技術による人工歯の作製を可能にした。

図下に写真のキャプションを表示
3Dプリンティング技術を用いた人工歯の製造工程

歯科産業ものづくりの未来を支える

従来の歯科鋳造技術では、複雑な立体構造の人工歯の作製は困難であった。一方、切削加工による部分義歯の作製では、加工時間が長く、材料の歩留りが悪い。歯科技工士就業者数は減少し、高齢化も進んでおり業界の未来も明るくない。そこで、歯科産業ものづくりの魅力の向上のため、最新技術の採用により低コスト化、行程削減などが可能な3Dプリンティングによる三次元積層造形技術を用いる人工歯の実用化を目指した。三次元積層造形技術は、口腔内データを取得し、患者に最適な人工歯を設計する。その設計データに基づき、積層造形し、表面仕上げ後、人工歯として完成した後歯科治療に使用する。これにより、歯科デジタルものづくりが可能となった。

3Dプリンティング技術を用いた人工歯とコバルトクロム合金粉末の写真

薬事承認に向け中核を担った産総研

歯科補綴物開発の促進を目指して、産総研が事務局となり、「三次元積層造形技術を用いた歯科補綴装置の開発ガイドライン」を作成し、公開した。それに基づき、株式会社アイディエスはコバルトクロム合金粉末の薬事製造販売承認申請を行い、産総研は積層造形材のミクロ構造の解明や粉末サイズや積層方向が耐久性におよぼす影響について明らかにし、実用化に必要な条件を整えた。これにより、破損しにくく、患者に最適な人工歯を短時間で製造できるようになった。夜間に自動造形すれば翌朝には仕上げ加工ができ、製造時間が短縮できる。従来の歯科鋳造技術では、達成できなかった鍛錬材と同レベルの引張り強度と破断伸びが実現でき、1000万回まで繰り返し負荷した疲労強度は、鋳造材の2倍となった。粉末の溶解と急冷凝固の繰り返しにより、析出物が微細に分散した金属組織となるため、高強度・高延性・高耐久性・高耐食性が実現することが一連の研究から明らかとなった。

装置の一部の写真

保険適用、アレルギー対策・・・。 さらなる課題解決でもっと身近に。

今後は、積層造形技術の保険適用に向けて関連機関と連携する。また、コバルトクロム合金の国産粉末を含めた薬事認可を目指す。さらに、敏感なアレルギー患者への配慮のため、チタン材料での人工歯を開発する。

岡崎上級主任研究員の写真

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本研究テーマに関するお問合せ先

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健康工学研究部門 生体材料研究グループ

上級主任研究員 岡崎 義光(おかざき よしみつ)

〒305-8566 茨城県つくば市東1-1-1 中央第6

話:029-861-7840
メール:hri-ic-ml*aist.go.jp(*を@に変更して使用してください。)