産総研:研究ハイライト 液中試料をそのまま10nmの分解能で観察する新規技術の開発

2017研究ハイライト 液中試料をそのまま10nmの分解能で観察する新規技術の開発

バイオメディカル研究部門 小椋 俊彦

ポイント

細胞などの生物試料を液中で生きたまま10 nm程度の高分解能で観察することができる新たな誘電率顕微鏡を開発した。


走査電子誘電率顕微鏡
開発した走査電子誘電率顕微鏡
 
図下に図1のキャプションを表示
新規誘電率顕微鏡による細胞とナノビーズの観察
 (Okada & Ogura, Sci. Rep. 2017,7:43025)
  図下に図2のキャプションを表示
牛乳の乳脂肪エマルジョンの可視化
(Ogura & Okada, BBRC, 2017,491, pp.1021)

背景

近年、溶液中の生細胞試料やナノ粒子溶液を非染色、非固定、非侵襲の状態で観察したいとの要望がある。電子顕微鏡などは染色や固定などの前処理や真空状態での観察の為、生きたままでの観察が非常に困難であった。

新たな成果

この顕微鏡は、水と対象物の誘電率の違い(差)を可視化する新しい原理に基づくもので、溶液中の生物試料や有機ナノ材料を無処理(非染色、非固定、非侵襲の状態)で観察することが可能で、かつ10 nmの高分解能を実現した。平成29年度は試料調整方法や画像解析技術の改善により、従来技術では困難であったそのままの状態の細胞の内部構造について詳細な観察に成功するとともに、溶液中の生物試料や牛乳、有機ナノ粒子、セラミック粒子等をそのまま観察することにも成功した。

今後の展開

計測装置メーカーとの共同研究を継続し、実用化のための装置開発を進展させた。本技術に関連する技術コンサルティングも実施し、材料化学系1社、分析関連1社、食品系2社、油脂関連1社の計5社との契約を締結した。また、大手飲料会社、日用品化学企業と本技術を利用した資金提供型共同研究を実施した。今後、製薬、食品、化粧品、材料・化学、精密機器、機械、石油化学に関するナノ粒子材料など極めて広い分野での研究開発に適応可能となる。

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本研究テーマに関するお問合せ先

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バイオメディカル研究部門 構造生理研究グループ

上級主任研究員 小椋 俊彦(おぐら としひこ)

 

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