研究ハイライト 質量の単位「キログラム」の新たな基準となるプランク定数の決定に貢献

2017研究ハイライト 質量の単位「キログラム」に新たな基準となるプランク定数の決定に貢献

工学計測標準研究部門 藤井 賢一、倉本 直樹、水島 茂喜、物質計測標準研究部門 張 ルウルウ

要点

基礎物理定数の一つであるプランク定数を世界最高レベルの精度で測定し、キログラムの定義改定に向け大きく貢献した。

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シリコン単結晶球体
 
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シリコン単結晶球体の質量を高い精度で測定する真空天びん
 
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産総研で開発したシリコン単結晶球体の形状を高い精度で測定するレーザー干渉計
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シリコン単結晶球体の表面層の厚さと質量を評価するための
X線光電子分光システム

背景

キログラムは現在、世界に一つしかない分銅「国際キログラム原器」の質量と定義されている。しかし国際キログラム原器の質量は、長期的には表面の汚染などによって変動してしまうことがわかってきた。そのため、普遍的な基礎物理定数に基づいた定義に改定すべく、基礎物理定数を国際キログラム原器の質量の長期安定性よりも高い精度で決定するための研究が各国で進められてきた。

新たな成果

産総研では超高精度のレーザー干渉計と表面分析システムなどを開発し用いて、直径約94 mmのシリコン単結晶球体の形状を1 nm未満の精度で測定することで、プランク定数を世界最高レベルの精度で測定した。さらに、科学技術データ委員会(CODATA)は、産総研や複数の海外の研究機関のプランク定数の高精度測定結果に基づいて、キログラムの新しい定義に用いられるプランク定数の値を決定した。

今後の展開

プランク定数に基づく新たなキログラムの定義に移行するかどうかが、2018年に審議されることとなっている。わが国が国際単位系(SI)の基本単位の定義の決定に直接関与するのは初めてであり、約130年ぶりとなるキログラムの定義改定に貢献する歴史的な成果と言える。
 

関連リンク

 

本研究テーマに関するお問合せ先

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工学計測標準研究部門

首席研究員 藤井 賢一(ふじい けんいち)(左)、
質量標準研究グループ 研究グループ長 倉本 直樹(くらもと なおき)(中央)、主任研究員 水島 茂喜(みずしま しげき)(右)


〒305-8569 茨城県つくば市梅園1-1-1 つくば中央第3
話:029-861-4346(計量標準調査室)
FAX:029-861-4152
ウェブ:https://unit.aist.go.jp/riem/
 

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物質計測標準研究部門 表面・ナノ分析研究グループ

主任研究員 張 ルウルウ(ちゃん るうるう)


〒305-8569 茨城県つくば市梅園1-1-1 つくば中央第3
話:029-861-4346(計量標準調査室)
FAX:029-861-4099
ウェブ:https://unit.aist.go.jp/mcml/