産総研:研究ハイライト 航空機が電気で飛ぶ時代へ、超電導線材に大きな前進

2017研究ハイライト 安価な超電導線材で世界最高の臨界電流特性を実現

省エネルギー研究部門 和泉 輝郎

ポイント

高い磁場環境で大電流が流せるイットリウム系酸化物超電導線材を開発した。

図下にキャプションを表示
溶液塗布熱分解法の概要(多数回原料溶液を塗布・熱処理を繰り返す)

背景

モータや発電機、MRI や重粒子線加速器といった医療機器など、高い磁場が加えられる環境で使用する機器の超電導磁石には、磁場中でも高い性能を維持できる超電導線材が必要である。超電導特性の低下には、導体内部に侵入した磁束線が電流の流れにより発生するローレンツ力で移動し、電圧の発生による電気抵抗が要因として挙げられる。磁束の移動を押さえる方法として人工ピン止め効果(結晶中に欠陥を作る)があるが粒子サイズや均一分散などまだ十分ではない。

新たな成果

今回、イットリウム系酸化物超電導線材について、気相法に比べ低コストな溶液塗布熱分解法により、人工ピン止め点を超微細化、かつ高濃度均一分散化することで、磁場中の特性を向上させることに成功した。これにより、超電導状態を維持しつつ流せる最大の臨界電流密度は400 万アンペア(液体窒素温度65K、3Tの磁場中で 1 平方センチメートルあたり)を実現し、臨界電流値も 360 アンペアを超えた。

今後の展開

今回の成果をベースに昭和電線は製品開発を行う予定である。産総研と成蹊大学は引き続き高性能化の技術開発により実用化を支援する。
これらの成果は、航空機用電気推進システムにおける超電導発電機、超電導モータ及び超電導ケーブル等への展開が期待されている。

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