金沢大学ダイヤモンド研究センターの德田規夫教授、大学院自然科学研究科電子情報科学専攻博士後期課程の中村勇斗らの研究グループは、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)先進パワーエレクトロニクス研究センター ダイヤモンドデバイス研究チームの長井雅嗣研究員らとの共同研究により、世界で初めて、トレンチ型反転層チャネルダイヤモンドMOSFETの動作実証に成功しました。
本成果は、これまで実現されていた横型反転層チャネルダイヤモンドMOSFETから、プレーナ型を経ることなく、最も低損失なトレンチ型へと一足飛びに到達したものです。また、プレーナ型とトレンチ型はいずれも縦型構造であることから、反転層チャネルを備えた縦型ダイヤモンドMOSFETの世界初の動作実証となります。
カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネルギー技術の重要性が高まっています。ダイヤモンドは、その卓越した物性により、超低損失パワーデバイスを実現可能な「究極の半導体材料」として期待されています。特に、トレンチ型ダイヤモンドMOSFETは、低損失パワーデバイスの究極形の一つとされ、その実用化に向けた研究開発が精力的に進められてきました。しかし、これまで報告されてきたトレンチ型ダイヤモンドMOSFETは、その原理上、パワーデバイスに要求されるノーマリーオフ動作を安定して実現することが課題となっていました。
そこで本研究グループは、原理的にノーマリーオフ特性を実現できる横型反転層チャネルダイヤモンドMOSFETの作製技術と、水蒸気雰囲気下におけるニッケル(Ni)への炭素固溶反応を用いた独自の結晶異方性ダイヤモンドエッチング技術を組み合わせました。これにより、トレンチ型反転層チャネルダイヤモンドMOSFETを作製し、その動作実証に成功しました。作製したデバイスは、室温だけでなく300℃の高温環境下でも明瞭なFET特性を示し、パワーデバイスの安全性の観点から重要なノーマリーオフ動作を実現できることを確認しました。
今後は、本研究で得られた知見をもとにデバイス構造の最適化を進め、さらなる低損失化を目指します。将来的には、電気自動車(EV)や電力網への搭載を通じて、カーボンニュートラルの実現に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年9月4日に国際学術雑誌『Diamond and Related Materials』のオンライン版に掲載、9月10日に正式掲載されました。
詳細は以下をご覧ください。
https://www.kanazawa-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2026/09/20260918.pdf [PDF:741KB]