統計数理研究所の村上隆夫准教授、電気通信大学の清雄一教授、産業技術総合研究所の江利口礼央研究員の研究グループは、「TEE(Trusted Execution Environment)」と呼ばれる高信頼実行環境を用いて、パーソナルデータの漏洩を防ぐデータ解析アルゴリズムを開発しました。開発したアルゴリズムは、近年プライバシー保護分野で研究されている「拡張型シャッフルモデル」を、TEEを搭載した1台のサーバを用いて実現します。拡張型シャッフルモデルは一部の悪意を持ったユーザが不正を試みてもデータの漏洩を防ぐことを可能とするもので、TEEはサーバ管理者でさえも内部のデータを閲覧・改ざんできないことを保証します。これらにより、悪意のあるユーザやサーバ管理者に対してもデータの漏洩を防ぐことが可能となります。
このようなアルゴリズムを開発するにあたり、TEEに対するサイドチャネル攻撃まで考慮した安全性指標を導入しました。具体的には、TEEは内部のデータを保護するものとして注目されていますが、メモリアクセスパターンや制御フローに基づくサイドチャネル攻撃によって、内部のデータが漏洩するリスクがあることが近年の研究で明らかになっています。この問題を解決するため、本研究では、攻撃者がアルゴリズムの出力・メモリアクセスパターン・制御フローの全てを入手したとしても、内部のデータに関する情報をほとんど得ることができないことを数理的に保証する「FODP(Fully Oblivious Differential Privacy)」という安全性指標を新たに導入し、FODPを満たすようにアルゴリズムを設計しました。これにより、サイドチャネル攻撃に対しても高い安全性を保証することが可能となります。また、開発したアルゴリズムが高い精度と効率性(短い実行時間)を達成できることを、他の既存のアルゴリズムやモデルとの比較を通して明らかにしています。
本成果は、情報セキュリティ分野のトップ国際会議The 35th USENIX Security Symposium(USENIX Security 2026、採択率:12.0%)に採択されました。
詳細は以下をご覧ください。
https://www.ism.ac.jp/ura/press/ISM2026-08.html