発表・掲載日:2015/01/16

音楽に合わせてリアルタイムにロボットを踊らせる制御システム「V-Sido × Songle」を開発

-アスラテック「V-Sido OS」と産総研「Songle」で実現-

ポイント

  • 楽曲の進行に合わせて振り付けパターンを割り当てて人型ロボットを踊らせる制御システムを開発
  • 産総研のSongleが解析済みの80万曲以上を利用でき、楽曲を選んで即座に踊らせることが可能
  • 踊っている最中に、ユーザーによる振り付けパターン選択や歩行指示を組み合わせて動かせる
  • アスラテックのV-Sido OSが、床面を傾けたり歩かせたりしても踊り続けるロボット制御を実現


 アスラテック株式会社【代表取締役社長 酒谷 正人】(以下「アスラテック」という)吉崎 航 チーフロボットクリエイターらと、独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という)情報技術研究部門【研究部門長 工藤 知宏】後藤 真孝 首席研究員らは共同で、楽曲の進行に合わせて振り付けパターンを割り当てて、さまざまな形・サイズの人型ロボットを踊らせることができるシステム「V-Sido × Songle(ブシドー・ソングル)」を開発した。

 アスラテックのロボット制御システム「V-Sido OS(ブシドー・オーエス)」と産総研が開発した能動的音楽鑑賞サービス「Songle(ソングル)」(http://songle.jp)を利用して新たに開発したシステムである。

 「V-Sido × Songle」は、Songleによって自動解析した楽曲のビート構造(拍と小節の構造)と楽曲構造(サビ区間と繰り返し区間)に基づいて事前に用意された複数の振り付けパターンの中から動きを割り当て、V-Sido OSのロボット制御技術によってリアルタイムにさまざまな種類のロボットを踊らせることができる音楽連動ロボット制御システムで、主な特長は下記の通りである。

  • Songleが自動解析したインターネット上の楽曲をユーザーが指定すると、即座に楽曲に合わせてロボットを踊らせることが可能
  • ロボットの形や大きさの違いを制御時に吸収するので、踊りの振り付けパターンを与えるだけで、さまざまな種類の複数のロボットを同一の振り付けで同期して踊らせることが可能
  • 楽曲構造の区間ごとに振り付けを指定できるユーザーインタフェースにより、ロボットが踊っている最中でも振り付けを変更可能
  • ユーザーが歩行方向を指示すれば、踊りの最中でも上半身は振り付けパターンで踊ったまま、下半身を指示した方向へ歩行させられる
  • ロボットの制御情報を動的に生成しているため、ロボットが踊っている最中に床面を傾けてもバランスを取りながら踊り続けるよう自動制御

 「V-Sido × Songle」は図1のように、V-Sido OSとSongleをインターネットを介して連携させながら、ロボットの踊りを制御している。「V-Sido × Songle」では、Songleに登録されている80万曲以上の楽曲の解析結果をSongleの外部から利用できる「Songle Widget(ソングル・ウィジェット)」(http://widget.songle.jp)の仕組みを用いた。Songle Widgetは、楽曲の解析結果をSongleから受け取るが、楽曲はSongleを経由せずに元のウェブサイト上から直接ストリーミング再生する。「V-Sido × Songle」は、楽曲の再生箇所に合わせて踊りの振り付けパターンを切り替えてロボットを制御する。例えば、拍や小節の先頭で手足を動かしたり、サビ区間で派手に踊らせたりする。各関節のモーター制御などには、V-Sido OSのロボット制御技術を用いた。V-Sido OSにより、ロボットの形や大きさなどの違いを制御時に吸収し、動作を乱すような環境変化に強い制御が実現できる。さらに、「V-Sido × Songle」のユーザーインタフェースでは、Songleから得られる楽曲構造の区間ごとに異なる振り付けパターンをユーザーが指定したり、振り付けパターンから逸脱して歩行動作を指示したりできるようにした。このようにロボットを全自動で踊らせつつ、インタラクティブに踊りを変更することは従来困難だった。

「V-Sido × Songle」のシステム構成図画像
図1:「V-Sido × Songle」のシステム構成図
 

 「V-Sido × Songle」は、V-Sido OSが対応済みのさまざまなロボットを踊らせることができる。ただし油圧シリンダーなどアクチュエーターの性能によっては、踊る動きの速さに追従できないこともある。これまでに「V-Sido × Songle」によって、「GR-001」(HPI製)や「ASRA C1(アスラ・シーワン)」(アスラテック製)、「SE-01」(佐川電子製)、「DARWIN-MINI(ダーウィン・ミニ)」(ROBOTIS製)などのロボットを踊らせることができた(図2)。

「V-Sido × Songle」での動作実績のあるロボットの例の写真
図2:「V-Sido × Songle」での動作実績のあるロボットの例(左から「ASRA C1」、「SE-01」、「GR-001」)
 

 今回開発したシステム「V-Sido × Songle」は、アスラテックと産総研との共同研究の成果であり、今後は引き続き両者で共同開発を進めて機能の追加や性能の向上を図るとともに、他企業とも協力して、イベント利用や商品化などを目指して実用化に取り組んでいく予定である。

デモンストレーションビデオ: http://www.asratec.co.jp/2015/01/16/2136/

V-Sido OSについて
 リアルタイムにロボットの動きを生成でき、急な衝撃を受けたときや不安定な足場でも倒れにくい安定性を備えたロボット制御ソフトウエア。汎用性が高く、大きさや形状、用途を問わず、多様なロボットを制御することが可能。開発者はアスラテック チーフロボットクリエイターの吉崎航。
ウェブサイト: http://www.asratec.co.jp/product/os/

Songleについて
 音楽理解技術を用いて、ウェブ上の音楽コンテンツの中身(サビ、ビート、メロディ、コード)を自動解析し、音楽鑑賞を楽しめるサービス。動画共有サイト(ニコニコ動画、YouTube)の音楽動画やMP3形式の楽曲などを対象に、既に80万曲以上を解析済みである。解析誤りはユーザーが訂正することもできる。可視化された楽曲の中身を見ながらユーザーが自在に再生位置を変えて能動的に音楽を鑑賞することができる点だけでなく、Songle Widgetによって、音楽理解技術がなければ困難だった音楽に連動した表示・制御をSongle以外のウェブサービスなどでも可能にした点が優れている。産総研が独立行政法人 科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 (CREST)「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」研究領域における研究課題「コンテンツ共生社会のための類似度を可知化する情報環境の実現(研究代表者 後藤 真孝)」の一環として開発し、実証実験のサービスとして一般公開中である。
ウェブサイト: http://songle.jp
産総研プレス発表: http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/pr20120829/pr20120829.html



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