産総研 - ニュース お知らせ

お知らせ記事2007/08/06

産業技術総合研究所と静岡銀行が相互協力に関する協定を締結
-地域中小企業の経営革新と新事業・新産業の創出への支援に向けて-

ポイント

  • 産総研と静岡銀行(静岡県)は産業振興を目指した相互協力に関する協定を締結した。
  • 産総研の産学官連携推進と静岡銀行の地域中小企業支援のそれぞれの取り組みを協力して行い、地域中小企業の新たな技術革新を目指す。
  • 官公庁が推進する地域産業振興のための新事業・新産業創出事業に対する貢献も期待される。

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)と、株式会社 静岡銀行【取締役頭取 中西 勝則】(以下「静岡銀行」という)は、それぞれが進めてきた産業振興に関する取り組みを連携して行うため、8月6日に相互協力に関する協定書に調印しました。

 これまでの、産総研の技術支援による地域貢献と静岡銀行の企業支援に関するそれぞれの取り組みを、今回の協定締結により、相互協力して進めることになり、中小企業に対し、情報提供、コンサルテーションのみならず、技術支援ニーズの掘り起こしから技術開発まで連続的に支援することが可能となります。

 この取り組みは、経済産業省、文部科学省、静岡県がそれぞれ推進する地域産業技術振興施策や新事業・新産業創出事業に対しても貢献することが期待されます。

 今後、モデルケースを作り上げ、その蓄積を通じて、中小企業の技術経営革新に対する支援を一層強化していきます。

相互協力協定の概要図

社会的背景

 我が国の産業競争力強化を図るため、経済産業省が全国で18プロジェクトを指定して推進する「産業クラスター計画」において、静岡県では、浜松市を対象地域とした「地域産業活性化プロジェクト 三遠南信ネットワーク」が進められています。そこでは、光学機器や輸送用・産業用機械等の製造業を中心に、地域の中堅・中小企業、ベンチャー企業等の新事業展開やイノベーションの創出に向けての取り組みが行われています。

 また、文部科学省の「知的クラスター事業」において「浜松オプトロニクスクラスター」が推進され、特に、次世代の産業・医療を支える「超視覚イメージング技術」に焦点を当て、新事業や新産業の創出を目指しています。

 さらに、静岡県でも、「静岡トライアングルリサーチクラスター形成事業」と銘打ち、西部地域(浜松市など)の「フォトンバレー」で光・電子技術関連産業、中部地域(静岡市など)の「フーズ・サイエンス・ヒルズ」と東部地域(三島市など)の「ファルマバレー」で健康関連産業の創出を目指しています。

 中堅・中小企業への優れたネットワークと情報収集力・仲介能力を有する静岡銀行と、研究開発に取り組む中堅・中小企業へ研究開発成果の移転を積極的に行う産総研とが連携することにより、中堅・中小企業の技術開発ニーズの収集と産学官連携が促進され、静岡発のイノベーションの創出等、ひいては各機関が推進する新事業・新産業創出事業に対する貢献が期待されます。

経緯

 産総研は、平成13年の発足以来、基礎研究から製品化研究まで幅広い連続した研究「本格研究」を通じて、大学と産業界、あるいは、地域間、国際間を繋ぐ結節点(イノベーションハブ)として、持続的発展可能な社会を支える産業を実現するためのイノベーションの創出を促進してきました。また、地域の技術的特性を踏まえた世界水準の研究開発の実施、産業クラスター計画等の推進を通じた地域産業技術への発展に貢献してきました。 

 一方、静岡銀行は、第9次中期経営計画「創造と変革への挑戦」のもと、政策要請でもある「事業再生・中小企業金融の円滑化」などに取り組み、地域社会および中小企業の持続的な成長を支援してきました。具体的には、本年4月には、次世代を担う若手経営者・後継者・実務担当者に研鑽と交流の「場」を提供する会員制サービスを組織し、幅広い経営情報の提供や、人脈形成、会員間のビジネスマッチングを支援し、会員企業の企業価値向上、ひいては静岡県経済の発展に寄与することを目指す取り組みを開始しています。

 産総研と静岡銀行は、これまでそれぞれが進めてきた産業クラスター計画推進、産業振興と地域経済の活性化への貢献を、協働することにより更に発展させるため、相互協力協定を締結することになりました。 

協定の内容

  • 静岡銀行は、支店網や若手経営者支援組織を通じて技術的な支援を要請する中堅・中小企業を産総研に紹介します。
  • 産総研は技術的なアドバイスを行うほか、必要に応じて、共同研究、受託研究、ノウハウ開示等を行います。
  • 中小企業の技術開発に向けた取り組みを活性化し、新産業を創出することを目的に「技術交流会」等を共同開催します。
  • 連携活動の進捗状況や成果を把握するため、「連絡協議会」を共同で組織します。
  • 有効期間は、平成22年3月31日までとしますが、双方合意により延長可能とします。

今後の予定

 今回の協定締結により、中堅・中小企業に対し、情報提供、コンサルテーションのみならず、技術支援のニーズ掘り起こしから技術開発まで、連続的な支援することが可能となります。

 今後モデルケースを作り上げ、その蓄積を通じて、中堅・中小企業の技術経営革新に対する支援を一層強化していきます。

用語の説明

◆産業クラスター
経済産業省の地域産業施策の一つ。地域の比較優位性を踏まえて、世界市場を目指す勢いのある中堅・中小企業、約200大学の参加を得て、全国で18プロジェクトを展開。経済産業省の地域関連施策(地域コンソーシアム事業、新規産業創造技術補助金、インキュベータの整備など)を総合的、効果的に投入している。中堅・中小企業の発展を産学官で支援し、地方自治体事業や文部科学省の知的クラスター事業などとも連動させている。[参照元へ戻る]
◆知的クラスター
文部科学省が、大学シーズをもとにした産学官連携による研究開発を促進するために設けた研究開発事業。各自治体主導で知的クラスター事業本部をつくり、大学などを拠点に新技術を生み出して競争力を持った産業化に結びつけるものであり、採択された各地域事業には文部科学省から研究開発予算が交付され、18地域事業が選定されている。[参照元へ戻る]
◆静岡トライアングルリサーチクラスター形成事業
静岡県が提唱している、既存産業の高付加価値化による国際競争力の強化と新事業・新産業の創出を図るため、ファルマバレー、フーズ・サイエンス・ヒルズ、フォトンバレーという3つの産業集積プロジェクトの推進を図る事業。静岡県では、プロジェクト相互の連携を強化し、各々の研究成果を相互利用して新たな製品開発を図るなど相乗効果を高めることとしている。[参照元へ戻る]
◆本格研究
産総研では、未知現象より新たな知識の発見・解明を目指す研究を「第1種基礎研究」、既知の知識を幅広く選択・融合・適用する研究を「第2種基礎研究」、またプロトタイプなどの社会が利用可能な最終成果物を創り出すための研究を「製品化研究」と呼ぶ。
研究テーマを未来社会像に至るシナリオの中で位置づけて、そのシナリオから派生する具体的な課題に幅広く研究者が参画できる体制を確立し、第2種基礎研究を軸に、第1種基礎研究から製品化研究にいたる連続的・同時並行的に進める研究方法論を「本格研究(Full Research)」と呼ぶ。[参照元へ戻る]
◆イノベーションハブ
産総研では、イノベーションを担う様々な繋がり(大学・産業界・行政など)の結節点となり、イノベーションの要素となる「人・技術・情報」の出会いと流れを促進し相乗させる役割を目指している。[参照元へ戻る]