産業技術総合研究所（産総研）は、旧通商産業省工業技術院の15研究所と計量教習所の統合・再編により2001年（平成13年）に設立されました。
その歴史は1882年（明治15年）に設立された農商務省地質調査所に始まり、1952年（昭和27年）の工業技術庁から工業技術院への改編を含め、幾多の改称・改編を繰り返し、2001年（平成13年）1月の中央省庁再編を経て、現在に至ります※1。
発足母体となった研究所の中には100年を超える歴史をもつ組織もあり、これまで多くの技術開発成果を上げてきました。
現在、産総研は、革新的な技術を産業化につなぐための「橋渡し」の機能を強化しながら、公的研究機関として、イノベーションの中核的・先駆的な役割を果たすことを目指しています。
この特設サイトでは、前身機関も含めた、産総研の長い歴史が生み出した膨大な研究成果の中から、明治期に生み出された産総研の研究成果についてご紹介します。
【関連領域】
エネルギー・環境領域
生命工学領域
情報・人間工学領域
材料・化学領域
エレクトロニクス・製造領域
地質調査総合センター
計量標準総合センター
明治初期、日本の地質学の黎明期は外国人指導者によって支えられていたが、やがて日本人独自で地質図を作成するようになった。1889年（明治22年）、当時農商務省地質局次長だった原田豊吉は、日本最古の日本列島の地質総図「300万分の1日本群島地質図」を出版する。この地質総図は、土壌調査に貢献したドイツ人指導者フェスカが編纂した「大日本帝国地産要覧図」に折り込まれていたもので、まだ文献も乏しかった当時としては岩層分布の大勢がよく把握されていた。
地質調査総合センター
質量の単位「キログラム（kg）」は、「最大密度にある純水1リットルの質量」と定義されていたが、1889年（明治22年）に「国際キログラム原器の質量」として定義し直された。国際キログラム原器は、パリの国際度量衡局に保管されている直径、高さとも約39 mmの円柱形状の分銅であり、白金90％、イリジウム10％の合金でできている。「日本国キログラム原器」は、国際キログラム原器の複製の一つであり、1890年（明治23年）に校正証明書と合わせて日本に到着した。わが国の質量標準は、この原器によって実現されている。
計量標準総合センター
1889年（明治22年）の第1回国際度量衡総会において、30本のメートル原器のうち、No. 6原器を「国際メートル原器」とすることが承認され、この「国際メートル原器」に基づきメートルが定義された。翌1890年（明治23年）にメートル原器No. 22およびその校正証明書が日本に到着した。メートルの定義は1960年（昭和35年）に光の波長に基づくものに、さらに1983年（昭和58年）には光速度に基づくものに改定され、メートル原器は長さの標準ではなくなった。わが国の度量衡制度の近代化への礎を築いた歴史上、学術上の価値が認められ、2012年（平成24年）9月6日に重要文化財として指定された。
計量標準総合センター
電気試験所（当時）が、日本初の無線電信実験に成功した。グリエルモ・マルコーニ（イタリア）により1895年（明治28年）に無線電信が発明されて間もなく、電気試験所では無線電信の研究に乗り出した。1897年（明治30年）12月、東京・京橋月島海岸と1海里（1.8km）を隔てた品川沖第五台場間の通信実験に成功し、わが国の無線技術の先駆となった。
エレクトロニクス・製造領域
スクアレンは人の皮脂の中に多く含まれ、皮膚の水分蒸発や細菌の侵入を防ぐ効果があるとされる油脂である。1906年（明治39年）、辻本満丸が日本近海の深海に棲むクロコザメの肝臓から発見した。その後の研究により1916年（大正5年）に「squalene（スクアレン）」と名付けた。国民の栄養状態が悪い時代には、栄養補給のための「肝油」として用いられた。
生命工学領域
特殊な火花放電間隙を利用した一種の火花式無線電話機を開発した。電気試験所（当時）の鳥潟右一、横山英太郎、北村政次郎が1912年（明治45年 3月）に共同で発明した世界初の実用無線電話機は、その頭文字から「TYK無線電話機」と呼ばれ、独自開発のこの通話方式は世界的にも高い評価を受けた。電気試験所ではこの無線電話機の発明と同時に実用化研究にも着手し、東京・京橋木挽町の電気試験所と芝区の逓信官吏練習所間（約1.5 km）の通話試験に成功した（1914年（大正3年））。この技術を元に安中電機製作所（現 アンリツ株式会社）が装置を実用化した。モールス符号を使った無線電信しかない時代に、わが国のみならず世界における無線電話実用の先駆となった。
エレクトロニクス・製造領域
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