発表・掲載日:2002/04/10

働く人間型ロボット

-「人間協調・共存型ロボットシステムの研究開発」中間成果を発表-

ポイント

  • 人間と共に、又は人間に替わって働く人間型ロボットの応用例を5種類呈示。
  • 「対人サービス」「留守宅管理作業」「人間との共同作業」「建設機械の代行運転」「プラントの保守・点検」の5種類。
  • 21世紀の巨大産業創出に向けた第一歩と位置付け。

概要

 経済産業省は、1998年度から5ヵ年計画で「人間協調・共存型ロボットシステムの研究開発」【プロジェクトリーダー 井上 博允 教授(東京大学)】( HRP:Humanoid Robotics Project )を推進中である。HRPは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)【理事長 牧野 力】への委託、財団法人 製造科学技術センター(MSTC)【理事長 菊池 功】を管理法人として、独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)【理事長 吉川 弘之】との共同研究により実施されている。

 HRPは前・後期から成り、前期2年間で研究の共通基盤となるプラットフォーム(人間型ロボットHRP-1、遠隔操作コックピット、仮想ロボットプラットフォーム)を開発した。これを用いて、後期3年間では5つの応用分野【(1)対人サービス、(2)ビル・ホーム管理サービス、(3)屋外共同作業、(4)産業車両代行運転、(5)プラント保守】の応用研究を推進中である。この3月で、後期の2年間が経過したので、応用研究の中間成果をデモの形での発表を行った。

 詳細については、(1)~(5)の各応用分野の説明資料を参照されたい。

  1. 人間型ロボットによる対人サービス動作の実現
  2. 人間型ロボットによる留守宅管理作業の実現
  3. 人間型ロボットと人間の共同作業の実現
  4. 人間型ロボットによる建設機械の代行運転の実現
  5. 人間型ロボットによるプラントの保守・点検の実現

研究の背景

 我が国の産業用ロボットの市場規模は、世界最大であるとは言え、1980年代から年間5,000億円~6,000億円程度で横ばい状態にある。その最大の理由は、「ロボットに出来る仕事の種類が増えなかったこと」と、「出来る仕事の種類が増えるほど技術革新が進まなかったこと」にある。

 ところが、現今、人間型ロボットにおいては、1996年に本田技研株式会社【取締役社長 吉野浩行】が人間型ロボットP2を発表して以来、幾つかの人間型ロボットが開発され、一つの技術エポックを迎えている。最近では、2000年に本田技研がASIMO、ソニー株式会社【会長兼CEO 出井 伸之】がSDR-3Xを発表し、ASIMOのイベントへのレンタルも開始された。しかしながら、これらのロボットの利用目的は、現在までのところエンターテインメント分野に特化されており、「仕事をする人間型ロボット」を志向したものとはなっていない。ロボットの市場規模を飛躍的に拡大するためには、ロボットに出来る仕事の種類を大きく増やすことが必須である。

 HRPは、人間型ロボットの応用事例を研究することにより、「働く人間型ロボット」の実現可能性を世の中に示すことを目的としている。20世紀最大の商品の一つは自動車であったが、人間型ロボットは21世紀最大の商品の一つになる可能性を秘めており、HRPはその第一歩となるものと期待されている。

今後の予定

 2002年度は、本プロジェクト5ヵ年計画の最終年度である。2003年3月末にその最終成果を発表する予定となっている。



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