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こんなところに産総研 地層研究が明らかにした1100年前の大地震 地質学的なアプローチから大震災級の津波被害を解き明かす

予測されていた東日本大震災

2011年3月11日、牡鹿半島の東南東約130kmの三陸沖の海底を震源として発生した東北地方太平洋沖地震、いわゆる東日本大震災は、東北地方を中心に広域沿岸部を巨大な津波が襲い、甚大な被害をもたらしました。「想定外」であり、「未曾有」の災害とも称された大震災でしたが、実はこの前年、産総研の海溝型地震履歴研究グループでは、450〜800年間隔で東北地方を津波が襲っていたこと、つまり今後も津波を伴う大地震が発生する可能性があることを予見し、2010年に研究結果を国に報告していたのです。
しかし残念ながら、この研究結果が広く知られたのは、東日本大震災後でした。通常、地震の中長期予測には信頼性のある史料の記録や、地質学に基づいた活断層調査の結果などが用いられますが、産総研では更なる判断材料として、地下水の水位変動や地殻変動の観測を、特に東海トラフ巨大地震の予測に繋げることを目指し、研究してきました。それに対し、研究グループが行ってきたのは、これまであまり注視されてこなかった津波堆積物を用いた研究でした。

予測されていた東日本大震災

地層調査を地震予測に生かす

海底で地震が起こると、そこに地殻変動が生じ、それによって大きく動いた海水が、津波となって陸地に押し寄せます。四方を海に囲まれた日本では、これまでにも盛んに津波の研究が行われてきましたが、歴史的な文献に残っている記録は過去1400年ほどで、信頼性の高い史料となると、江戸時代以降のものと限られてきます。また、機器による観測記録は過去100年ほどしか残っておらず、長期的なスパンで地震を捉えることが難しいという弱点がありました。
海溝型地震履歴研究グループでは、そういった既存の予測材料を補うため、津波堆積物に着目しました。津波堆積物とは、過去の津波によって海底の砂などが陸上に打ち上げられ、地層中に砂層として残されたものです。この津波堆積物を詳細に調べ、地質学的なアプローチから、過去に発生した地震による津波の高さ、浸水域、地殻変動量や、被害の状況を明らかにしようとしたのです。そこで注目したのが、東北地方で過去に発生したという、ある巨大地震でした。

地層調査を地震予測に生かす

1000年以上前の地震を明らかに

平安時代、藤原時平や菅原道真らによって編纂された「日本三代実録」には、869年、東北地方で発生した貞観地震と貞観津波について記されていました。この地震の存在は古くから知られており、1990年代には既に貞観津波による津波堆積物も発見されていました。しかし、具体的な断層の実態が不明だったことから、政府の「地震調査研究推進本部」による海溝型地震の長期評価からは外されていたのです。
研究グループでは、仙台平野の地層120cmほどの堆積物から、1000年以上に渡るこの土地の様子を調べ、貞観地震発生当時の海岸線の位置も考慮したうえで、貞観津波によるおおよその浸水域を推測することに成功。その結果、その浸水域は、それまでに観測されたどの津波よりも大きかったことが明らかになりました。さらに、この結果とコンピュータによるシミュレーションを組み合わせ、津波の発生源と地震の大きさも推定。あまりに遥か昔のことで、全容がわからなかった貞観地震の実態が、ようやく判明したのです。

1000年以上前の地震を明らかに

複合的な観点から地震予知を

貞観地震の実態を踏まえ、近い将来にこれに匹敵するほどの大きな地震が発生するリスクを明らかにした研究結果でしたが、政府の公式見解として公表される前に、残念ながら恐れていた巨大地震・津波が起こってしまいました。科学的な根拠に基づいてリスクを示していたにもかかわらず、それが生かされることなく、周知しきれなかったというこの現実は、私たちにとって大きな教訓となりました。
国の中央防災会議においても、これまで地震学などに偏重していた地震予知の方法論を改め、まずは古文書などの分析、津波堆積物や海岸・地形調査など、科学的知見に基づいて想定地震や津波被害を設定し、地震学、地質学、考古学、歴史学など様々な見地から研究を充実させることを検討すべき、という趣旨の提言がまとめられました。
何千年、何万年前もの歴史を私たちに伝えてくれる地質学。地層の堆積物を調査し、過去の地震や津波を明らかにすることが、後世に生きる人々のためにも重要だと言えるでしょう。(この分野の第一人者である寒川旭名誉リサーチャーが、産総研サイエンスカフェで講演した動画を産総研チャンネルに掲載しています。是非ご覧ください。)

サイエンス・カフェ寒川名誉リサーチャーの講演動画へのリンク

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