独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)ナノカーボン研究センター【センター長 飯島 澄男】ナノカーボンチーム 畠 賢治 チーム長、平岡 樹 産総研特別研究員および日本ゼオン 株式会社【代表取締役社長 古河 直純】(以下「日本ゼオン」という)は、共同で単層カーボンナノチューブの合成手法の一つであるスーパーグロース法を用いて、初めて大面積金属板上に直接大量の単層カーボンナノチューブを合成する技術を開発した。
これまでスーパーグロース法は高価なシリコン基板を用いて単層カーボンナノチューブを合成していたが、今回、安価なニッケル合金基板上での合成に成功した。さらに、日本ゼオンと共同で、今回開発した技術を適用できる合成炉を設計・試作し、A4サイズの金属板の全面に均一な単層カーボンナノチューブ構造体を合成することに成功した。これは成長面積として従来の100倍のスケールアップであり、生産量はグラム単位である。合成された単層カーボンナノチューブは、金属板フォイル上で、垂直に起立した形で成長し、高さ1ミリメートルの構造体をわずか10分で形成する。構造体中の単層カーボンナノチューブは、シリコン基板上で合成されたものと同程度、すなわち世界最高レベルの高純度、高比表面積、長尺といった優れた特性を示し、スーパーキャパシタ、アクチュエータなど様々な用途において非常に有用と考えられる。今回の成果は、基板コストを従来の100分の1に抑えることができるもので、カーボンナノチューブの大面積・連続生産技術を開発する上でのキー技術であり、単層カーボンナノチューブの工業的量産への大きな礎となる。本研究成果の一部は、米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society, Vol.128, p13338, 2006年)に掲載された。
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図1 A4サイズの金属フォイル上に合成された単層カーボンナノチューブ構造体 |
図2 インコネル(ニッケル合金)上での垂直配向単層カーボンナノチューブ構造体 |
単層カーボンナノチューブは、高導電性、柔軟性、異方性、低次元性等の新しい機能を持つ炭素材料である。そのため、次世代のナノデバイス材料として大きな注目を集めており、21世紀におけるナノテクノロジーの中核となる基盤材料として期待されている。単層カーボンナノチューブの応用研究開発は世界中でしのぎを削る激しい競争状態にあるが、単層カーボンナノチューブ合成技術が未成熟なために非常に高価であり、未だ産業的材料としての使用の目処がたってない。単層カーボンナノチューブの優れた可能性を最大限に活用するためには、単層カーボンナノチューブに高配向性、高密度、高比表面積、長尺、高純度といった性質を持たせる合成法の開発が不可欠である。しかもこのような高次構造制御された単層カーボンナノチューブを産業的材料として用いるために、成長効率を大幅に向上させ、安価な基板の上で大面積かつ連続に製造する大量生産技術を開発することが必要とされている。
なお、本研究は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という)の委託事業、ナノテクノロジープログラム「カーボンナノチューブキャパシタ開発プロジェクト」(平成18〜22年度)」の支援を得て実施されたものである。
日本ゼオンと共同で、今回開発した技術を適用できる大面積スーパーグロース合成炉を設計・試作し、A4サイズの金属板の全面に均一な単層カーボンナノチューブ構造体を合成することに成功した。合成された単層カーボンナノチューブは、世界最高レベルの高純度(炭素純度99.9%以上)、高比表面積(非開口状態で1000m2/g以上)、長さを持ち、かつ配向しており、スーパーキャパシタ、アクチュエータなど様々な用途において非常に有用なものと考えている。
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図3 各種Ni-Fe-Cr(ニッケル-鉄-クロム)合金上での単層カーボンナノチューブ構造体の合成。 |
今後、今回開発された、スーパーグロース金属基板カーボンナノチューブ合成技術をコア技術とし、これまで小型基板バッチ処理で行われてきた合成反応を、スケールアップ・連続化・高効率化することにより、従来の数百分の一という大幅な単層カーボンナノチューブの製造コストダウンを図る。今回の成果により、従来の小型バッチ、シリコン基板上での数ミリグラム単位の生産量から、一気にグラム単位の生産が可能となり、キャパシタなどの応用開発に弾みがつくと期待される。NEDOの委託事業「カーボンナノチューブキャパシタ開発プロジェクト」の支援を得て、数年以内に、配向、長尺、高純度、高比表面積のバルク単層カーボンナノチューブの工業的量産化を目指す。また、本法によって合成された単層カーボンナノチューブは、比表面積あたりの電気容量が活性炭より大きく、高エネルギー密度かつハイパワーのキャパシタ材料となる可能性を持つ。こういった特性を利用し、キャパシタの需要に求められる高出力、高エネルギー密度、長寿命の電気二重層キャパシタを開発する。
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図4 大面積スーパーグロース単層カーボンナノチューブ合成炉 |
独立行政法人 産業技術総合研究所 広報部 報道室