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発表・掲載日:2006/11/27

形状デザイン可能なカーボンナノチューブ高密度固体

-次世代のキャパシター開発へ弾み-

ポイント

  • 高密度、配向、高純度、高比表面積、高導電性、柔軟性を有するカーボンナノチューブ固体を合成した。
  • シート状や棒状に形状デザイン可能な新規な材料。
  • 高エネルギー密度でハイパワーのキャパシター開発への展望を開いた。

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)ナノカーボン研究センター【センター長 飯島 澄男】ナノカーボンチームの畠 賢治 チーム長、Futaba Don主任研究員は、単層カーボンナノチューブの優れた物理・化学特性を保持したまま、配向高密度化した固体の開発に成功した。

 単層カーボンナノチューブ一本一本は、優れた物理・化学特性を示すことが知られているが、多数を集めたバルク材料は、多くの場合、本来持つ優れた特性を示さない。これは、バルク形状に加工する際の分散・精製・形成等の製造プロセスによって、ナノチューブがダメージを受けるためである。

 今回開発されたカーボンナノチューブ固体は、配向した、高純度、超長尺単層カーボンナノチューブを、稲穂を束ねたようなもので、導電性、比表面積、柔軟性において、単層カーボンナノチューブの特性を保持している。また、目的に応じて様々な形にデザインすることが可能であり、例えば、コンパクトなエネルギー・物質貯蔵、柔軟性を有するヒーター等の様々な応用に適しており、特に、今回開発した単層カーボンナノチューブ固体を電極材料として用いるキャパシターは、活性炭を電極とする従来型のキャパシターよりも、高エネルギー密度、ハイパワーを示すことを実証した。今回の結果は、カーボンナノチューブが、次世代のキャパシターの実現へのキー技術であることを確認できた。

 本研究成果は、英国科学誌Nature Materialsのオンライン版に2006年11月26日(英国時間)「Shape Engineerable and Highly Densely Packed Single Walled Carbon Nanotubes and their Application as Super-Capacitors Electrodes」のタイトルで掲載される。

カーボンナノチューブフォレストから作られたカーボンナノチューブ固体の写真
図1 カーボンナノチューブフォレストから作られたカーボンナノチューブ固体

開発の社会的背景

 単層カーボンナノチューブは、高導電性、柔軟性、異方性、低次元性等の新しい機能を持つ炭素材料である。そのため、次世代のナノデバイス材料として大きな注目を集めており、21世紀におけるナノテクノロジーの中核となる基盤材料として期待されている。

 単層カーボンナノチューブの優れた可能性を最大限に活用するためには、優れた導電性、柔軟性、熱伝導性といった性質を損なうことなく、手にとって触れられる大きさのマクロな高密度材料に成型加工する技術が不可欠である。しかしながら、従来は、カーボンナノチューブを溶媒に分散させ、精製、成型する製造プロセスが主流であったが、ナノチューブが非常に分散しづらいこともあり、製造プロセス中にダメージを受け、本来の特性を十分に引き出せないことが問題となっていた。

研究の経緯

 産総研では、2004年度に発表した世界最高の成長効率を誇る、スーパーグロース法をもとに、様々応用商品への展開を念頭に、カーボンナノチューブの成型加工技術開発に精力的に取り組んできた。畠 賢治 チーム長、Futaba Don主任研究員らは、スーパーグロース法で成長させた、単層カーボンナノチューブの垂直配向構造体(フォレスト)を、溶液に浸し乾燥させると、溶媒の表面張力とカーボンナノチューブ間のファンデルワールス力により、ジッパー効果が発現し、配向したナノチューブを稲穂の束のように高密度化できることを見出し、カーボンナノチューブ固体を創製した。

溶媒ジッパー効果によるフォレストの高密度化とナノチューブ固体の模式図
図2 溶媒ジッパー効果によるフォレストの高密度化(左)とナノチューブ固体(右)の模式図

 本研究は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という)の委託事業、ナノテクノロジープログラム「ナノカーボン応用製品創製プロジェクト」(平成14~17年度)」及びナノテクノロジープログラム「カーボンナノチューブキャパシタ開発プロジェクト」(平成18~22年度)」の支援を得て実施された。

シート状とバー状のナノチューブ固体の写真
図3 シート状(左上)とバー状(右上)のナノチューブ固体。
固体の柔軟性(左下)とそれを活用した導電性ヒーター(右下)

研究の内容

 スーパーグロース法を用いて合成した、カーボンナノチューブ垂直配向構造体を出発材料とした。構造体中の単層カーボンナノチューブは、ミリメートル以上の長さ、1000m2/gの高い比表面積、99.9%以上のカーボン純度を持ち、かつ配向している。しかしながら、成長直後にはカーボンナノチューブの体積占有率は4%程度と、非常に密度の低い材料であり、そのままでは、各種用途開発に使うことが難しい。このフォレストのカーボンナノチューブを従来法のように、分散させ、ばらばらにして、成型加工してしまうと構造特性が失われてしまう。そこで、畠 賢治 チーム長、Futaba Don主任研究員らはフォレストの構造特性を損なわずに、高密度化する技術について検討を重ねた結果、直配向構造体を、溶液に浸し乾燥させると、溶媒の表面張力とカーボンナノチューブ間のファンデルワールス力により、チューブをくっつけるジッパー効果が発現し、配向したナノチューブを稲穂の束のように高密度化(0.5g/cm3以上)できることを見出した。また、非常に弱い外力を本プロセス中に与えると、形状を棒状や、シート状等様々な形に成型することが可能であることを見出した。本プロセスは、分散・精製等を一切使用しないため、カーボンナノチューブにダメージをまったく与えないで、高密度化成型加工ができる。そのため、創製されたカーボンナノチューブ固体は、単層カーボンナノチューブの本来の特性をそのまま保持し、高い比表面積1000m2/g、導電性(1Ω/□)、柔軟性(シート形状の場合折り曲げ可能)を持つ。また、高密度化のため、フォレストと比較して70倍強度も増し、グラファイト並みの強度(Vickers強度7-10)を持つ。固体中のカーボンナノチューブはミリメートル超えの長尺、99.9%以上のカーボン純度、かつ配向性といったフォレストの優れた特性も同時に保持している。この固体は、コンパクトなエネルギー・物質貯蔵、柔軟性を有するヒーターをはじめとする、様々な応用に適していると考えられる。実際、カーボンナノチューブ固体を電極材料として用いた、キャパシターを開発し、活性炭を電極として用いた従来型のキャパシターよりも、高エネルギー密度、ハイパワーを示すことを実証した。

様々な形に成型されたナノチューブ固体の写真
図4 様々な形に成型されたナノチューブ固体

今後の予定

 NEDOの委託事業「カーボンナノチューブキャパシタ開発プロジェクト」の支援を得て、日本ゼオン株式会社と共同で、今回カーボンナノチューブ固体の材料となる、ナノチューブフォレスト(垂直配向構造体)の工業的量産技術を開発し、数年以内で配向、長尺、高純度、高比表面積のバルク単層カーボンナノチューブ固体の工業的量産化を目指す。また、本法によって合成されたカーボンナノチューブ固体を電極材料として用いたカーボンナノチューブキャパシターを開発し、キャパシタの需要に求められる高出力、高エネルギー密度、長寿命の電気二重層キャパシターを開発する。


用語の説明

◆単層カーボンナノチューブ(SWNT:Single-Walled Carbon Nanotube
カーボンナノチューブは炭素原子のみからなり、直径が0.4~50nm(1ナノメートル:10億分の1メートル)、長さがおよそ1~数10μmの一次元性のナノ材料である。その化学構造はグラファイト層を丸めてつなぎ合わせたもので表され、層の数が1枚だけのものを単層カーボンナノチューブと呼び、グラファイト層の巻き方(らせん度)に依存して電子構造が金属的になったり半導体的になったりする。[参照元へ戻る]


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