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発表・掲載日:2002/03/19

働く人間型ロボットHRP-2プロトタイプを開発

- 人間との共同作業の実現を目指して -

ポイント

  • 身長154cm、体重58kg、腰2軸を含む30自由度を実現。
  • バッテリを含み体重58kgの大幅軽量化に成功。
  • 自由度の高い股関節構造(片持ち構造)で狭い通路も歩行可能。
  • 高密度電装系の実現でスマートな外観(バックパックなし)。
  • 凸凹道の歩行や転倒回復動作の実現を目指す。
  • オープンアーキテクチャで、ユーザーによるソフトウェア開発が可能。
  • 最終成果モデルHRP-2は、出渕裕氏が外観デザインを担当。

概要

デザインイラスト
デザイン(案)

 川田工業株式会社【代表取締役社長 多田 勝彦】(以下「川田工業」という)と、独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)は、株式会社安川電機【取締役社長 中山 眞】(以下「安川電機」という)、清水建設株式会社【取締役社長 野村 哲也】(以下「清水建設」という)と共同で、人間型ロボットHRP-2プロトタイプを開発した。

 HRP-2プロトタイプは、身長154cm、体重58kg(バッテリ含む)、腰2軸を含む30自由度を有し、軽量多自由度を実現している。また、股関節が片持ち構造で隘路の歩行が可能な点、電装系の高密度実装によりバックパックを不要とした点に特徴がある。今後、「不整地歩行転倒制御転倒回復動作等の人間型ロボットの共通基盤技術」及び「人間との共同作業等の応用技術」の研究開発に利用される予定であり、最終成果モデルHRP-2は、内部APIを公開する計画で、ユーザーによるソフトウェア作成が可能であることから、研究開発用プラットフォームとして市販することも検討中で、人間型ロボットの研究開発に大きく寄与するものと期待される。

 共同開発の分担は、川田工業*が主担当として設計製作を行い、産総研知能システム研究部門ヒューマノイド研究グループ( 金子 健二 主任研究員ら )が全体仕様設計、安川電機が腕部仕様設計、清水建設が視覚部仕様設計を行った。

 HRP-2プロトタイプは、経済産業省が1998年から5ヵ年計画で実施中の「人間協調・共存型ロボットシステムの研究開発」【プロジェクトリーダー 井上 博允 教授( 東京大学 )】( HRP: Humanoid Robotics Project )の一環として、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)【理事長 牧野 力】から財団法人 製造科学技術センター(MSTC)【理事長 菊池 功】への委託・産総研との共同研究により開発された。 

 なお、最終成果モデルHRP-2の外観デザインは、アニメーション「パトレイバー」のメカデザイナーとして著名で現在放映中のアニメーション「ラーゼフォン」の監督を務める、出渕 裕氏が担当する計画である。

HRP-2プロトタイプは、ROBODEX 2002(3/28~3/31、パシフィコ横浜で開催)への出展を予定している。
*本件に関する川田工業ホームページ【http://www.robo-craft.com/


人間型ロボットHRP-2プロトタイプの写真1 人間型ロボットHRP-2プロトタイプの写真2 人間型ロボットHRP-2プロトタイプの写真3 人間型ロボットHRP-2プロトタイプの写真4

研究の背景

 我が国の産業用ロボットの市場規模は、世界最大であるとは言え、1980年代から年間5,000億円~6,000億円程度で横ばい状態にある。その最大の理由は、「ロボットに出来る仕事の種類が増えなかったこと」と、「出来る仕事の種類が増えるほど技術革新が進まなかったこと」にある。

 ところが、現今、人間型ロボットにおいては、1996年に本田技研が人間型ロボットP2を発表して以来、幾つかの人間型ロボットが開発され、一つの技術エポックを迎えている。最近では、2000年に本田技研がASIMO、ソニー株式会社【会長兼CEO 出井 伸之】がSDR-3Xを発表し、ASIMOのイベントへのレンタルも開始された。しかしながら、これらのロボットの利用目的は、現在までのところエンターテインメント分野に特化されており、「仕事をする人間型ロボット」を志向したものとはなっていない。ロボットの市場規模を飛躍的に拡大するためには、ロボットに出来る仕事の種類を大きく増やすことが必須である。

 HRPは、人間型ロボットの応用事例を研究することにより、「働く人間型ロボット」の実現可能性を世の中に示すことを目的としている。20世紀最大の商品の一つは自動車であったが、人間型ロボットは21世紀最大の商品の一つになる可能性を秘めており、HRPはその第一歩となるものと期待されている。この様な背景の下で、HRP-2プロトタイプは、「HRPで実施中の応用5分野の一つである屋外共同作業応用を実現するための人間型ロボットHRP-2」のプロトタイプとして開発された。

研究の経緯

 HRPは、1998年からの5年計画のプロジェクトであり、前期2年間で研究の共通基盤となるプラットフォームを開発し、後期3年間でプラットフォームを用いた応用研究を実施中である。前期に開発したプラットフォームは、人間型ロボットHRP-1、遠隔操作コックピット、仮想プラットフォームから構成されている。後期で実施中の応用5分野の内4分野は、HRP-1を用いて研究開発を行っているが、屋外共同作業は不整地上の歩行、転倒制御、転倒回復等の特別の仕様を要求するため、改良型ロボットHRP-2を開発し、これを用いて実現する計画となっている。現在、後期3年計画の2年間がほぼ終了し、HRP-2のプロトタイプの開発を完了した。HRP-2プロトタイプは、人間型ロボットソフトウェアプラットフォームOpenHRPを用いて利用することが可能である。

今後の予定

 2002年度上半期に最終成果モデルHRP-2を開発予定。これを用いて、不整地歩行、転倒制御、転倒回復技術の実現、屋外共同作業への応用の実現を図る。HRP-2は、内部APIが公開される予定で、ユーザーによるソフトウェア開発が可能となる計画である。2002年度下半期以降に、研究開発用として外販することも検討中である。

参考

◇HRP-1との比較
 HRP-1は160cm、120kg、HRP-2プロトタイプは154cm、58kg(バッテリ含む)で、大幅な軽量化が実現されている。HRP-1には腰の自由度がないが、HRP-2プロトタイプは2自由度を持つ。HRP-1はバックパックを持つが、HRP-2プロトタイプでは不要となった。このような特徴から、HRP-2プロトタイプは、より対人親和性に優れた設計がなされている。

◇本田技研ASIMOとの比較
 ASIMOは各腕5自由度、各脚6自由度であるのに対して、HRP-2 プロトタイプは各腕6自由度、各脚6自由度を持ち、さらに腰2自由度を有している。多自由度を有していることから、「仕事をする人間型ロボット」の実現に適している。また、高密度の電装系実装により、ASIMOに見られる様なバックパックを不要としている。腰2自由度があること及びバックパックがないことにより、転倒制御・転倒回復動作の実現に適している。さらに、ASIMOは身長120cmと小学生サイズであるのに対して、HRP-2プロトタイプは154cmで成人女性に近く、人間の生活空間での作業により適している。

 体積が身長の3乗に比例すると仮定して体積重量比を比較すると、ASIMOの120cm,43kgは154cmでは約90kgになり、HRP2プロトタイプは自由度がASIMOより多いにも拘らず58kgで、35%程度体積重量比が向上していると考えられる。

人間型ロボット仕様比較表


HRP-2
プロトタイプ
ASIMO
HRP-1
身長
154cm 120cm 160cm
体重
(バッテリ含む)
58kg*1 43kg*2 120kg
2自由度*3 なし なし
6自由度 5自由度 7自由度
6自由度*4 6自由度 6自由度
バックパック
不要*3 必要 必要
*1)バッテリ含む
*2)体積が身長の3乗に比例すると仮定し体積重比を比較した場合、154cmでは約90kg相当
*3)転倒制御・転倒回復動作の実現に適している
*4)股関節が片持ち構造であるため、隘路歩行に適する

用語の説明

◆自由度
ロボットの関節数のこと。[参照元へ戻る]
◆片持ち構造
一方によって支持された梁構造。本件の場合、股関節が片方で支えられている構造を指す。[参照元へ戻る]
◆オープンアーキテクチャ
インターフェイス仕様が公開されているシステム。[参照元へ戻る]
◆不整地歩行
凹凸や傾斜のある路面上の歩行。[参照元へ戻る]
◆転倒制御
ロボットが転倒した場合にその破損を最小限に抑えるための姿勢制御法。[参照元へ戻る]
◆転倒回復
転倒した状態から起立状態への姿勢回復制御法。[参照元へ戻る]
◆API
Application Programming Interface。ソフトウェアを利用するためのインターフェイスのこと。[参照元へ戻る]

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