つくって学ぼう
(2/4ページ)
色のついている材料をまったく使わないのに、どうして色がついたのか、わかるためには、光(と色)の性質、偏光の性質、偏光板の性質、セロファンテープの性質を知らないといけません。少し難しいのですが、説明してみましょう。
これは、虹の色です。太陽の光が空の上の水滴によって分かれて、いろんな色が見えるのです。太陽や電球の光は色がついてないように見えますが、実はいろんな色に見える光が混じっています。
光は波の性質をもっています。光を波で表わすことにしましょう。図にあるように、色がちがって見えるのは、光の波長(波の長さ)がちがっているからです。赤は長くて、青は短く、緑はその間の波長の波です。
普通の光を正面から見ると、いろんな方向の光が混じっています。
ところが、正面から見ると一直線になっている光があります。これを直線偏光、簡単に偏光といいます。
直線偏光のほかに、らせんのように、くるくると進む偏光があります。正面から見て円になっているのを円偏光、だ円になっているのをだ円偏光といいます。
偏光板とは、どんな働きをするのでしょう。ひとつは偏光を作り出す働きです。図のように、普通の光が偏光板を通ると、偏光になって出てきます。また、いろんな偏光が偏光板を通っても、同じ向きの直線偏光になって出てきますが、偏光の種類や向きによって、強さが変わります。(通れないこともあります。)たとえば円偏光が、偏光板を通ると、直線偏光になって、光の強さが半分になります。
セロファンテープの性質のうち、ここで利用している性質は「複屈折」というものです。テープのたて方向(ピンク)と横方向(緑)で、光に対する性質(屈折率)がちがっています。屈折率といっても、ここでは光の屈折(光が曲がる)を利用しているのではありません。屈折率がちがうと光の速度がちがうことを利用しています。
セロファンテープに、斜めに(直線)偏光が入ると偏光が変化してしまいます。図で、左から偏光がテープに入ったときの変化を示しています。右の白いところがテープで、そこに青で書いてあるのが、正面から見た偏光です。たて向きの直線偏光だったのが、テープの中を進むにつれて、だ円偏光、円偏光、だ円偏光と変化していって、横向きの直線偏光になります。さらに進むと、逆に変化して、たて向きの直線偏光に戻ります。これを繰り返しながらテープの中を進んで行きます。
では、テープに入る光の波長(色)がちがうと、どうなるでしょう。波長の長い赤や緑の直線偏光も、青と同じように変わりながらテープの中を進みます。でも、波長の短い青は、変わり方が早く、波長の長い赤はゆっくり変わりながら進みます。(図では、変わり方をおおげさに書いてあります。)そして、テープを出たときには、波長によってちがった偏光になっています。
ただ、人間の目は偏光を区別できないので、このままではどの光も同じ強さに見えます。ですから、人間の目には元の光と同じように見えます。(色がついて見えない。)
このいろんな偏光が混じった光が、偏光板を通るとどうなるでしょうか。図のように、青は横向きの偏光なので偏光板を通りません。たて向きの偏光の赤はそのまま通って強く見えます。緑は円偏光なので偏光板を通ると弱くなります。赤が強いので、偏光板を通った光は人間の目には赤っぽく見えます。
では、偏光板の向きを変えるとどうなるでしょう。今度は、逆に青が強くなって、赤が通りません。人間の目には青っぽく見えるようになります。
偏光万華鏡で、コップを1つだけ回したら色が変わったのは、こういうことが起こっていたからです。
今度はテープの厚さが変わったらどうなるか、考えて見ましょう。厚さが変わると、テープを出たときの偏光の状態が変わります。でも、このままでは人間の目には同じように見えます。偏光板を通すと、図のように、偏光板の向きが同じでも、出てきた光はちがった色に見えます。
偏光万華鏡で、いろんな色が見えたのは、たくさん貼ったテープの厚さ(や向き)が、場所によってちがっていたからです。
偏光万華鏡で色がついて見えたわけを、まとめてみましょう。まず、普通の光は1つめの偏光板で(直線)偏光になります。次に、いろんな厚さや向きのテープを通ると、波長によっていろんな種類の偏光になりますが、まだ色がついて見えません。もう1枚の偏光板を通ると、テープの厚さや向きによってちがう色がついて見えるようになります。
偏光、偏光板、セロファンテープの性質をうまく組み合わせることで、色のついていない材料で作る偏光万華鏡ができたわけです。科学の知識をうまく使うことで、ちょっとビックリするようなものができました。知識は覚えるだけではなく、それをうまく使うことが大切ですね。