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太陽光チーム

薄型結晶シリコン太陽電池モジュール技術

太陽光チーム紹介ビデオ

  • 太陽光チームの表紙 「太陽の無限のエネルギーを掴む」
    薄型結晶シリコン太陽電池技術
    [ YouTube 3分30秒 ]

研究背景

   太陽光発電は、2012年7月に開始された固定価格買取制度(FIT)により、急速に導入量が増加しています。それまでの住宅の屋根への設置に加えて、メガソーラーと呼ばれる大規模発電所が各地に設置されていますが、その結果として再エネ賦課金による国民負担も増加しています。このため、太陽光発電のコスト低減は、最も重要な課題となっています。

研究目標

   当チームでは、高効率・高信頼性モジュール(変換効率目標22%)を低コストで作製するための技術開発として、以下の課題に取り組んでいます。

  • シリコンインゴット高精度スライス技術(薄型ウェハの作製)
  • 高効率セル構造の検討およびその作製技術(イオン注入技術など)
  • モジュールの高効率化・高信頼性化技術
  • 新しいセル/モジュール評価技術
    また、次世代の高効率太陽電池(セル変換効率30%以上)として、以下の開発も進めています。
  • 結晶シリコンをベースとした多接合太陽電池(スマートスタック技術など)
  • 新しいコンセプト「熱回収型太陽電池」の理論構築と実証実験


【図1】太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)

研究内容

   太陽光発電の将来にわたる持続的な普及・発展には、その中心となる結晶シリコン太陽電池セル・モジュールの一層の高効率化・低コスト化が必要です。当チームでは、結晶シリコンインゴットのスライスからセル・モジュールの製作までの一貫試作施設を保有し、ウェハ・セル・モジュールを一体とした研究開発を進めています。
   以下に主要な研究開発課題を示します。

  • 新しいセル作製プロセスの開発

       イオン注入技術による新しいセル作製プロセスの開発に取り組んでいます。ステンシルマスクを用いたイオン注入を行うことで、選択エミッタを有するPERCセルや裏面電極型セルなどの変換効率の向上を図りながら、作製工程数を大幅に削減することを目指しています。



    【図2】イオン注入技術による新しいセル作製プロセス

  • 太陽電池の新コンセプト「熱回収型太陽電池」

       従来棄てられていた熱を回収し、より高いエネルギー変換効率が得られる「熱回収型太陽電池」を理論的に提案しました。この太陽電池では、SQ限界として知られるシリコンの限界効率(約29%)を超える変換効率を得ることが可能です。現在、この新コンセプト太陽電池の実現に向け実証実験を進めています。


  • モジュールの高信頼性化に関する研究

       モジュールの高信頼性化のために、信頼性試験における劣化モードの調査・研究を行っています。導電性フィルムを使った配線や、ダブルガラス構造を使ったモジュールにより、DML試験において従来構造のモジュールより高い信頼性が確認されています。
       また、湿熱試験においてモジュール部材が劣化に与える影響の調査を行っており、劣化メカニズムの解明を目指しています。



    【図3】DML試験(16,000cyc)後のモジュールEL像
    左:標準構造モジュール、右:ダブルガラス構造モジュール

  • 次世代多接合太陽電池「スマートスタック技術」

       バンドギャップの異なる様々な材料を接合する手段として、金属ナノ粒子配列を接合媒体として用いる技術「スマートスタックテクノロジー」を開発しました。金属ナノ粒子配列を用いた世界で初めての高効率多接合太陽電池であり、格子定数に関係なく様々な太陽電池の接合が簡単に可能になります。



    【図4】スマートスタックの方法

       これまでにGaAs/InP系4接合太陽電池で変換効率33.1%、GaAs/CIGS系3接合太陽電池で24.2%を達成しています(産総研太陽光発電研究センターとの共同成果)。量産性にも優れた実用的手法として、対象を拡大しています。
       また、ボトムセルに薄型結晶シリコンを用いれば高効率・低コストを同時達成可能になります。FREAの結晶シリコン太陽電池技術とスマートスタックテクノロジーを融合し、結晶シリコン太陽電池の理論限界効率(29%)を超える「結晶シリコンスマートスタックセル」の開発を進めています。試作セル(GaAs-/Si系3接合)において、変換効率27.7%を達成しています。



    【図5】GaAs/Si系3接合スマートスタックセル

主な研究設備

【図6】電極焼成炉 【図7】スピンエッチング装置 【図8】イオン注入装置
電極に用いる銀ペーストと拡散層とのコンタクトやアルミBSF層を形成するための装置です。 ウェハを回転させながら片面をエッチングする装置です。保護膜なしで片面のみをエッチングできます。 リンやホウ素のイオンを加速して基板に打ち込むための装置です。精密な拡散の制御が可能です。

主な研究成果

  • 1.スクリーン印刷による電極形成や細線ワイヤーを用いることで、量産に適した両面受光ー裏面電極型セルを作製し、変換効率21.1%を達成しました。
  • 2.イオン注入を用いた裏面電極型セルのセルフアラインプロセスを初めて構築し、エミッタ、BSF、FSFを全てイオン注入で作製したセルにおいて、変換効率20.5%を得ました。
  • 3.ステンシルマスクを用いたイオン注入技術により選択エミッタを有するPERCセルの作製に成功しました。また、リン熱拡散とエッチバックプロセスにより選択エミッタを作製した場合においても高い開放電圧を得ることができました。
  • 4.モジュール(封止材EVA)の劣化が、従来の酢酸による要因だけでなく、配線材のはんだからのスズの溶出により、より促進されている可能性を初めて示しました。
  • 5.結晶シリコンスマートスタック技術を、GaAS/Si系の3接合セルに適用し、変換効率27.7%を達成しました。
  • 6.太陽電池の新コンセプト「熱回収型太陽電池」を理論提案しました。この構造の太陽電池を用いることで、SQ限界として知られるシリコンの限界効率(約29%)を超える高い変換効率が得られること理論的に示しました。



【図9】両面受光ー裏面電極型セル

メンバー

役職 氏名  
研究チーム長 高遠 秀尚 Takato Hidetaka
主任研究員 水野 英範 Mizuno Hidenori
主任研究員 望月 敏光 Mochizuki Toshimitsu
研究員 立花 福久 Tachibana Tomihisa
研究員 Joonwichien Supawan Joonwichien Supawan
研究員 上出 健仁 Kamide Kenji
研究チーム付 棚橋 克人 Tanahashi Katsuto

国立研究開発法人産業技術総合研究所