研究内容
太陽光発電の将来にわたる持続的な普及・発展には、その中心となる結晶シリコン太陽電池セル・モジュールの一層の高効率化・低コスト化が必要です。当チームでは、結晶シリコンインゴットのスライスからセル・モジュールの製作までの一貫試作施設を保有し、ウェハ・セル・モジュールを一体とした研究開発を進めています。
以下に主要な研究開発課題を示します。
新しいセル作製プロセスの開発
イオン注入技術による新しいセル作製プロセスの開発に取り組んでいます。ステンシルマスクを用いたイオン注入を行うことで、選択エミッタを有するPERCセルや裏面電極型セルなどの変換効率の向上を図りながら、作製工程数を大幅に削減することを目指しています。
【図2】イオン注入技術による新しいセル作製プロセス
太陽電池の新コンセプト「熱回収型太陽電池」
従来棄てられていた熱を回収し、より高いエネルギー変換効率が得られる「熱回収型太陽電池」を理論的に提案しました。この太陽電池では、SQ限界として知られるシリコンの限界効率(約29%)を超える変換効率を得ることが可能です。現在、この新コンセプト太陽電池の実現に向け実証実験を進めています。
モジュールの高信頼性に関する研究
モジュールの高信頼性のために、信頼性試験における劣化モードの調査・研究を行っています。導電性フィルムを使った配線や、ダブルガラス構造を使ったモジュールにより、DML試験において従来構造のモジュールより高い信頼性が確認されています。
また、湿熱試験においてモジュール部材が劣化に与える影響の調査を行っており、劣化メカニズムの解明を目指しています。
【図3】DML試験(16,000cyc)後のモジュールEL像
左:標準構造モジュール、右:ダブルガラス構造モジュール
次世代多接合太陽電池「スマートスタック技術」
バンドギャップの異なる様々な材料を接合する手段として、金属ナノ粒子配列を接合媒体として用いる「スマートスタック技術」を開発しました。金属ナノ粒子配列を用いた世界で初めての高効率多接合太陽電池であり、格子定数に関係なく様々な太陽電池の接合が簡単に可能になります。
【図4】スマートスタックの方法
これまでにGaAs/InP系4接合太陽電池で変換効率33.1%、GaAs/CIGS系3接合太陽電池で24.2%を達成しています(産総研太陽光発電研究センターとの共同成果)。量産性にも優れた実用的手法として、対象を拡大しています。
また、ボトムセルに薄型結晶シリコンを用いれば高効率・低コストを同時達成可能になります。FREAの結晶シリコン太陽電池技術とスマートスタック技術を融合し、結晶シリコン太陽電池の理論限界効率(29%)を超える「結晶シリコンスマートスタックセル」の開発を進めています。試作セル(GaAs-/Si系3接合)において、変換効率27.7%を達成しています。
【図5】GaAs/Si系3接合スマートスタックセル
主な研究設備
【図6】電極焼成炉
電極に用いる銀ペーストと拡散層とのコンタクトやアルミBSF層を形成するための装置です。
【図7】スピンエッチング装置
ウェハを回転させながら片面をエッチングする装置です。保護膜なしで片面のみをエッチングできます。
【図8】イオン注入装置
リンやホウ素のイオンを加速して基板に打ち込むための装置です。精密な拡散の制御が可能です。