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地熱チーム

※掲載情報は、2023年度時点のものです。

地熱適正利用のための技術

地熱チーム 研究チーム紹介ビデオ
「地球の恵みを生かす」
地熱の適正利用のための研究開発
[ YouTube 3分55秒 ](外部サイトへのリンク)

研究背景

  火山国である我が国には膨大な地熱エネルギーが存在しています。地熱エネルギーは気象条件等に依存せず安定しているため、再生可能エネルギーの中ではベースロードを賄う役割が期待されています。

研究目標

 当チームでは「地熱の適正利用」をキーワードに、地熱エネルギーを地下や社会の状態に合わせて適正な規模および形態で持続的に利用するための研究開発を実施しています。
 短期的には、温泉と共生した地熱発電のためのモニタリング機器・解析手法の開発や貯留層変動の高度モニタリング等により、持続的な発電と発電量の増大に直接的に寄与すること目指しています。
 また、長期的には沈み込み帯に起源を有する超臨界地熱資源を利用した革新的発電方法の開発や、地熱エネルギーの社会実装手法の導出等により、ベースロード電源として地熱エネルギーを大規模に利用可能にします。

地熱研究開発の必要性
【図1】地熱研究開発の必要性
FREA地熱研究のロードマップ
【図2】FREA地熱研究のロードマップ

研究内容

 現在、当チームでは、地熱の適正利用を実現するために、国や民間企業等からの委託を受け、様々なプロジェクトを実施しています。それとともに、地熱システムの科学的理解の深化へ向け、地球科学に関連した様々な基礎研究も実施しています。
 地下は不可視であり、また、地熱資源の特性は地域に大きく依存するため、地熱研究では、フィールドで実データの取得を行ない、それをベースに研究を行うことが非常に重要です。このため、東北地方を中心とした多数のフィールドで、野外実験、モニタリング、機器テスト等を実施しています。
 当チームでの研究開発の主な達成目標は以下のようになります。

  • 沈み込み帯に起源を有する超高温・高圧の超臨界地熱資源の開発可能性を探求し、2040年以降に大規模ベースロード発電のために利用可能にします。
  • 室内実験やシミュレータの開発を通じて、水圧刺激や注水による貯留層の最適作成・制御技術を開発します。これにより地域に依存せず、持続性を有した開発・利用方法を導出します。
  • 地震、電磁波信号等の高度解析手法の開発に加え、MEMS、光ファイバ等を利用した高機能センシングシステムの開発等を進め、地下数kmの貯留層内で生じている現象の解明と可視化を実現します。
  • AIやIoT技術の導入により、温泉と地熱発電の共生のためのモニタリングシステムや蒸気生産量の監視・評価システム、様々な目的に対応する次世代型の地熱資源量評価法を実現します。
  • 東日本大震災被災地域の企業が有する技術シーズの実用化支援を通じて地熱関連産業の振興に寄与します。

 地熱チームの研究者が国内研究者のリーダーシップを取り、沈み込み帯に起源を有する超臨界地熱資源の開発による国内総容量数GW~数100GWの発電可能性を提示しました。現在、2040年以降にベースロード電源として大規模に利用可能にするための研究開発を進めています。

超臨界地熱システムの概念モデル
【図3】超臨界地熱システムの概念モデル
地表設置型3成分地震計の設置状況
【図4】地表設置型3成分地震計の設置状況
微小地震情報統合可視化システム(注水した水の挙動のモニタリング)
【図5】微小地震情報統合可視化システム(注水した水の挙動のモニタリング)

主な研究成果

1.超臨界地熱資源の開発

 国内研究者からなる研究チームを統率して、国内複数地点で物理探査や地質学的情報の収集等を行い、超臨界地熱システムの性状を明らかにするとともに超臨界地熱資源を利用した商用発電の実現可能性を示しました。現在、有望地での試掘を目指した詳細調査を実施しています。

比抵抗構造探査による超臨界地熱システムのイメージング(Yamaya et al., 2022)
【図6】比抵抗構造探査による超臨界地熱システムのイメージング(Yamaya et al., 2022)

2.微小地震による地熱貯留層の高度モニタリング

 地熱フィールドで取得した微小地震の高度解析を進め、精度の高い微小地震発生位置の推定を可能としました。
 また、震源位置に加え、地震波に含まれる散乱波や反射波および地面の定常的な揺れ(常時微動)の性質変化等の解析から、地下での水の流れや、貯留層構造の可視化を実現しました。

<関連情報>産総研プレス発表:人が感じないごく小さな揺れの成分解析から地熱発電に利用可能な熱水の流動を検出(2021/04/19)

3.人工地熱システムシミュレータの開発

 岩石力学・貯留層工学に関する室内実験等を通じてEGS(Enhanced Geothermal Systems)型地熱貯留層造成・生産シミュレータを開発しました。

4.AI-IoT温泉モニタリングシステムの開発

 地熱発電と温泉との関連を科学的に説明可能にするために、温泉の泉質(温度、流量、電気伝導度等)を自動遠隔モニタリングできるシステムを開発するとともに、取得したデータのAIによる解析手法を導出しました。

<関連情報>NEDO:地熱発電と温泉との共生を目指した温泉モニタリングシステムの実証試験を開始(外部サイトへのリンク)

IoT遠隔温泉モニタリング装置
【図7】IoT遠隔温泉モニタリング装置

5.被災地企業の技術シーズ支援

 被災地企業の技術シーズ支援を行い、坑内計測機器、地熱貯留層シミュレータ、温泉発電装置、温泉水利用水素製造システム等について実用化へ向けた機能向上を実現してきました。

 

地熱貯留層シミュレータ
【図8】地熱貯留層シミュレータ
小型温泉発電装置
【図9】小型温泉発電装置
シーズ支援事業により開発した地熱井・温泉井用ボアホールスキャナー
【図10】シーズ支援事業により開発した地熱井・温泉井用ボアホールスキャナー

主な研究設備

温泉システム模擬装置

温泉の配管系を室内で模擬することが可能です。温泉モニタリング用センサの評価や、温泉発電装置の実験等に使用します。

温泉システム模擬装置
【図11】温泉システム模擬装置

亀裂せん断滑り実験装置

高温・高圧の地熱貯留層内で発生する力学現象を模擬可能な装置です。

亀裂せん断滑り実験装置
【図12】亀裂せん断滑り実験装置

超高温坑内模擬装置

350℃、600気圧の坑内環境を模擬可能な装置です。機器、素材の開発に使用します。

超高温坑内模擬装置
【図13】超高温坑内模擬装置

メンバー

※2024年10月1日時点

役職 氏名  
研究チーム長 山谷 祐介 YAMAYA Yusuke
主任研究員 石橋 琢也 ISHIBASHI Takuya
主任研究員 渡邉 教弘 WATANABE Norihiro
主任研究員 岡本 京祐 OKAMOTO Kyosuke
主任研究員 鈴木 陽大 SUZUKI Yota
研究員 松永 康生 MATSUNAGA Yasuo
研究チーム付 最首 花恵 SAISHU Hanae
国立研究開発法人 産業技術総合研究所