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最近の研究成果

太陽電池性能 2017年9月25日発表

薄膜型太陽電池の特性シミュレーションソフトを無償公開-CIGS太陽電池、ペロブスカイト太陽電池などの量子効率スペクトルが評価可能に-

薄膜型太陽電池の量子効率スペクトルを高精度にシミュレーションできるソフトウェアを開発し、無償公開する(https://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/service/index.html)。開発したソフトウェアは、太陽電池の性能評価に用いられる量子効率スペクトルやこのスペクトルから算出できる短絡電流密度を、膜厚、バンドギャップ、光吸収層の品質パラメーターを変化させながらリアルタイムにシミュレーションすることができる。また、太陽電池の各種構成材料の光学特性データを搭載しておりデバイス設計や特性評価にすぐに利用可能であり、次世代太陽電池の研究開発への貢献が期待される。

量子効率スペクトルシミュレーションソフトのインターフェースと解析結果の一例の図

膵がん治療薬 2017年9月26日発表

膵がん細胞表面の糖鎖をレクチン融合薬で狙い撃ち-ポスト抗体医薬としての新規抗がん治療法開発へ-

難治がんの代表である膵がんの幹細胞表面に強く発現している糖鎖構造と、それを特異的に認識するレクチン(糖鎖結合能力を持つタンパク質)rBC2LC-Nを発見しました。これまで、レクチンの多くは血液凝集活性を持つと考えられてきたため、生体に投与する薬剤として利用されることはほとんどありませんでした。しかし今回、このrBC2LC-Nレクチンは全く血液凝集をもたらさないことを見出し、rBC2LC-Nレクチンを薬剤キャリアーとして応用することができました。緑膿菌の外毒素(PE38)を抗がん薬として融合したLDC(Lectin Drug Conjugate)は、シャーレ上の膵がん細胞株に対して、既存の抗体−薬剤融合体(ADC)の1000倍強力な抗がん効果を示しました。さらに、このLDCはマウスの腹腔内、血管内に安全に投与することができ、様々な膵がんモデルを有効に治療することにも成功しました。現在、抗体薬によるがん標的治療が盛んに開発されていますが、標的となるタンパク質抗原はほぼ探索し尽くされており、今後大きな発展は望みにくい状況です。さらに、抗体医薬による数百万~数千万円/年/がん患者という高額な薬価は医療経済の破綻を招く恐れがあります。今回、安価なレクチンにより細胞表面糖鎖を標的するというアプローチに成功したことは、がん治療だけでなく、多くの疾患に対する新しい治療戦略としての可能性を切り開いたと言えます。

細胞表面の模式図とLDCの作用の図

モデル動物 2017年9月12日発表

脳卒中後に生じる痛みを解明し治療するためのモデル動物を確立-"最悪の痛み"の克服を目指して-

脳卒中後に生じる痛みである脳卒中後疼痛のメカニズムの解明や、脳卒中後疼痛のために開発した治療法を評価するためのモデル動物を開発した。今回、モデル動物であるサルの脳で、皮膚に触れたときの感覚の情報(体性感覚情報)を中継する視床の後外側腹側核に局所的な脳出血を作成し、感覚刺激に対する逃避行動を調べた。脳損傷が安定してから数週間経過した後には、脳損傷前は逃げることがなかった軽い触覚や温度を与えたときにも逃げる様子が見られたことから、アロディニアと呼ばれる症状が生じたと考えられた。これまで、げっ歯類をモデル動物とした研究は複数あったが、いずれもアロディニアの発症に至る時間経過がヒトと異なっていた。今回の研究はヒトに近い脳を持つサルをモデル動物としており、また実際にヒトの患者に近い病態が得られたため、世界で最もヒトの病態に近い脳卒中後疼痛モデル動物であるといえる。このモデルを用いることで、脳卒中後疼痛を引き起こすと考えられている不適切な脳の変化の解明や、この病気を根治する治療法の開発につながる可能性がある。

脳卒中後疼痛のメカニズムの解明や、治療効果の評価につながる可能性のあるモデル動物の図

カーボンナノチューブ生分解性計測 2017年9月12日発表

スーパーグロース単層カーボンナノチューブの生分解性を確認-免疫細胞内カーボンナノチューブ生分解率の測定技術を開発-

近赤外光吸収測定法を用いてカーボンナノチューブ(CNT)の細胞への取り込み量を定量化する産総研独自の技術により、スーパーグロース法で作成した単層CNT(SGCNT)量の免疫細胞内での経時変化を測定し、SGCNTが生分解されることを明らかにした。さらに、発生する活性酸素の経時変化を測定した結果、SGCNTが生分解されると活性酸素の発生量は減少し、細胞への毒性が低下することが示唆された。この測定技術は、CNTの安全管理に重要な新しい定量測定法を提供するのみならず、現在産業化が進んでいる単層CNTの安全性に関わる重要な知見をもたらし、CNT産業の発展に貢献することが期待される。

免疫細胞内でのCNT生分解概念図

圧電素子 2017年8月31日発表

世界最高性能の窒化ガリウム圧電薄膜をRFスパッタ法で作製-金属配向層の利用で窒化ガリウム薄膜の配向性が向上-

低コストで成膜温度の低いRFスパッタ法を用いた、単結晶と同等の圧電性能を示す窒化ガリウム(GaN)薄膜を作製できる方法を見いだした。さらに、スカンジウム(Sc)添加で圧電性能が飛躍的に向上することを実証し、GaNとしては現在、世界最高性能の圧電薄膜を開発した。GaNはLEDやパワーエレクトロニクスへの利用で知られているが、窒化アルミニウム(AlN)と同様に機械的特性に優れた圧電体でもあり、通信用高周波フィルターや、センサー、エナジーハーベスターなどへの利用も期待されている。さまざまな応用が期待される一方で、GaNはAlNに比べて圧電薄膜の作製が難しく、RFスパッタ法では圧電体として利用できる十分に良質な配向薄膜を作製できなかった。今回、ハフニウム(Hf)またはモリブデン(Mo)の金属配向層の上にGaNの結晶を成長させることで、良質なGaN配向薄膜を作製できた。この薄膜は単結晶並みの圧電定数d33(約3.5 pC/N)を示した。さらに、Scを添加するとd33が約4倍の14.5 pC/Nまで増加した。今回の成果により、GaNの圧電体としての応用が広がるだけではなく、GaN薄膜の製造技術への波及効果も期待できる。

今回作製したGaN圧電薄膜の電子顕微鏡写真(左)と構造の模式図(右)

鳥羽地質図 2017年9月14日発表

恐竜化石はなぜ鳥羽で見つかったのか?-志摩半島の地殻変動の歴史を編んだ5万分の1地質図幅「鳥羽」を刊行-

三重県鳥羽地域における地質調査の結果をまとめた5万分の1地質図幅「鳥羽」を刊行した。紀伊半島の東端、志摩半島に位置する鳥羽地域は、古生代~中生代のさまざまな種類の地層・岩石が分布する日本列島でも有数の場所で、1996年には恐竜「トバリュウ」の化石が発見されたことでも知られる。しかし、これまでこの地域の詳細な地質図は作製されていなかった。今回、詳細な地表踏査を基に、複雑に分布する地質を把握して鳥羽地域の精緻な地質図を作製した。また、これまで時代未詳であった地層の年代を決定し、地層名の定義や、地質のまとまりである地質帯の区分と整理を行った。鳥羽地域の地質の成り立ちを解明する上で重要な地殻変動の復元を行った結果、鳥羽で恐竜化石が発見された理由や、この地域の最高峰である朝熊ヶ岳あさまがたけが形成された過程を解明できた。鳥羽図幅は、今後、学術研究に加え、防災・減災計画、都市計画、観光産業、地学教育の基礎となる重要な資料として利活用されることが期待される。

今回刊行した5万分の1地質図幅「鳥羽」の図

結晶欠陥検出 2017年9月21日発表

透過電子顕微鏡画像から結晶欠陥を容易に検出する技術を開発-欠陥の分布表示で次世代半導体のデバイスプロセス技術の改良を促進-

結晶の透過電子顕微鏡画像から欠陥を検出できる画像処理技術を開発した。近年、半導体の性能・寿命を保証するため、半導体デバイスの製造時に発生する構造欠陥を精密に制御するプロセス技術の確立が求められている。原子レベルの欠陥は、従来、透過電子顕微鏡で撮影された高分解能原子配列画像を人が観察して評価していたが、高倍率にするほど視野が狭くなるため、広い領域で欠陥を評価するには非常に手間が掛かっていた。今回開発した技術は、結晶の透過電子顕微鏡画像の広い領域で欠陥を容易に検出できる画像処理である。この技術を次世代パワーデバイスとして期待されている窒化ガリウム(GaN)半導体の透過電子顕微鏡画像に適用したところ、画像全体で欠陥の一種である転位の分布を評価することができた。開発した技術は、半導体デバイスの製造プロセス改良への貢献が期待される。

透過電子顕微鏡画像から転位を可視化する技術の図

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