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水素・熱システムチーム

水素エネルギーシステム・熱利用技術

研究背景

   固定買い取り制度が始まり、近年は特に大型の太陽光発電が敷設されています。一方、需給バランスの調整力不足や送電線の容量不足のために、出力抑制といった制約が多く発生し、利用できない再生可能エネルギーが発生し、今後さらに増加していくことが懸念されています。また、CO₂の排出抑制のためには、建築物のゼロエミッション化も重要であり、これらのミスマッチを解消し、再生可能エネルギーをできるだけ使いこなすことが必要です。従来技術では有効に活用できない再生可能エネルギーを水素に変換し、また発生する熱エネルギーを使いこなすために、再生可能エネルギーでの発電から、需要までをトータルに水素と熱を使いこなすエネルギーシステムの研究開発を行なっています。

研究目標

   当チームでは、再生可能エネルギーの大量導入のために、電力系統や既存蓄エネルギー技術では解決できない長期、大量の蓄エネルギーが可能な水素や熱を利活用するエネルギーシステムの開発を行います。今後ますます導入される太陽光発電の余剰電力を用いて高効率、低コストな水素製造技術を開発していきます。また、日本のCO₂排出の40%を占める建築物からの排出を低減するために、CO₂フリーな水素を活用し、街区利用可能な安全な水素貯蔵技術を発展させ、電力だけでなく熱の需要にあわせ、水素・熱エネルギーを使いこなすエネルギーシステムを開発します。さらには、水素の利用先として燃料電池自動車の普及を見据え、安全な水素昇圧、精製技術にも取り組んでいきます。

研究内容

   今後も大量に導入普及が見込まれる太陽光発電での余剰電力を活用する高効率水素製造技術を開発します。固定買取制度終了時に想定される系統連系と水素製造の両立を目指します。具体的には、太陽光発電の直流電力を水電解装置に導き、電解セル数を制御する独自の技術で高効率を目指しています。
   水素を貯める技術として、水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵装置を開発しています。街区での水素利用普及のために、1MPa以下の圧力、かつ着火しない水素吸蔵合金を用いることで、高圧ガス保安法や消防法の適用を受けない安くて安全・大量な水素貯蔵方法を開発しています。

  • 建築物でのゼロエミッション化を目指して、電力と熱の需要を、水素を利用したエネルギーシステムで供給する技術開発を行なっています。ここでは、開発した水素貯蔵装置を利用し、実証しています。
  • 水素の利活用範囲を広げるため、新しい水素圧縮技術、精製技術を開発いたします。
  • 上記技術の更なる高機能化のために、太陽熱や未利用排熱を有効利用するための熱発電・蓄熱技術を開発、実証していきます。
BEMSによるエネルギーシステム実証の概要図

BEMSによるエネルギーシステム実証の概要図

水素吸蔵合金の外観(左インゴット、右粉砕したもの) 
水素吸蔵合金の外観
(左 インゴット、右 粉砕したもの)
太陽熱集熱装置
太陽熱集熱装置
開発中の水素透過膜の電子顕微鏡写真
開発中の水素透過膜の電子顕微鏡写真

主な研究設備

太陽光発電直接電解装置 水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵技術
キャパシタによる平滑化装置を備えた太陽電池を直結した水電解装置 電解放出型走査顕微鏡
20kW級太陽電池が水電解装置に直結されています。水電解装置は、電解セル数を切替え、太陽電池の最大電力点を追随できます。さらに、リチウムイオンキャパシタ(LiC)を接続して、日射の変動の平滑化を試みています。 これまでの研究開発で製作した種類の異なる水素吸蔵合金を充填したタンクが8つ設置されています。吸蔵・放出の運転は80℃未満で行なえ、水素貯蔵量は1MPa以下で計100Nm³程度であり、再生可能エネルギーによって作った水素を貯蔵することができます。
各種分析装置 高圧水素設備
電解放出型走査顕微鏡 高圧水素設備外観と100MPa耐圧・200℃耐熱反応容器
当チームで以下の各種分析装置を備えています。
装置例:電解放出型走査顕微鏡/エックス線回折装置/PCT特性評価装置/水素透過膜評価装置/表面張力計/熱伝導率測定装置/熱分析装置(TG-DTA/DSC)
高圧水素設備には、高圧水素供給ブースター(<90MPa)、蓄圧器(<90MPa, 200L)、水素カードル(19.6MPa, 1250L)、高圧・高温対応反応容器(<100MPa, <200°C, 1L)、太陽熱パネル等を備えており、水素貯蔵合金による水素昇圧の実証試験を行っています。また再生可能エネルギーで作った水素をカードルに充填してそのカードルをステーションに供給すれば、燃料電池自動車で利用することも可能となります。

主な研究成果

1.水電解の劣化防止技術
   20kW太陽電池および5Nm³/時の水電解装置を用いて、太陽エネルギーの約15%を水素エネルギーに変換する事に成功しています。天候に依存し変動する電解電流をリチウムイオンキャパシタにより平滑化でき、これにより電解装置の長寿命化が期待できます。
キャパシタ図

2.安全な水素貯蔵技術(燃えない水素吸蔵合金)
   非レアアースからなる安価な水素吸蔵合金を開発しました。写真で示すように水素吸蔵・放出を繰返した後でも、着火せず消防法危険物非該当な合金です(認証取得)。

金属粉の危険物判定(着火試験)

金属粉の危険物判定(着火試験)

メンバー

役 職 氏 名  
研究チーム長 前田 哲彦 Maeda Tetsuhiko
研究員 遠藤 成輝 Endo Naruki
研究員 五舛目 清剛 Goshoume Kiyotaka
研究チーム付 金久保 光央 Kanakubo Mitsuhiro
研究チーム付 牧野 貴至 Makino Takashi
研究チーム付 河野 雄樹 Kono Yuki