株式会社東レリサーチセンター(所在地:東京都中央区日本橋本町一丁目7番2号、社長:吉川正信、以下、「TRC」)と国立研究開発法人産業技術総合研究所(所在地:東京都千代田区霞が関 一丁目3番1号、理事長:石村和彦、以下、「産総研」)の研究チームは、多角的な機器分析(複数種の機器分析を組み合わせて総合的に解析)によって、充放電サイクルによる全固体電池内部における活物質と固体電解質界面の剥離と、固体電解質の化学構造変化がイオン伝導度を低下させること、すなわち、電池性能を劣化させることを明らかにしました。
リチウムイオン電池(LIB)は、カーボンニュートラル実現の要素技術として注目されており、電解質を従来の電解液から固体電解質に替えた全固体電池は電池性能のみならず、可燃性の有機溶媒を使用しないために安全面でも非常に有望な次世代蓄電デバイスの一つです。全固体電池の実用化に向けて、更なる電池性能の向上、長期使用に伴う性能劣化のメカニズムの解析に高い関心が寄せられています。
研究チームは、産総研にて全固体電池の作製と評価、東レリサーチセンターにて充放電に伴う電池性能低下の原因解析を行い、充放電後の全固体電池において正極内部で電極活物質と固体電解質が剥離していること、また、硫化物固体電解質の化学構造が変化していることなどを見出しました。これらの成果は、複数の解析データを総合的に解析して得られた知見であり、製造プロセスの改善による剥離抑制や硫化物固体電解質の化学的安定性の向上に対する指針を提供し、全固体電池の高性能化、長寿命化、さらに早期実用化に貢献することが期待されます。
この研究成果は、2025年4月4日に、エネルギー変換や貯蔵材料の研究・開発に焦点をあてた学術誌ACS Applied Energy Materialsに掲載されました。
詳細は以下を参照ください。
https://www.toray-research.co.jp/news/article.html?contentId=zspqbaed