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発表・掲載日:2015/11/04

世界初 スーパーグロース・カーボンナノチューブの量産工場が稼働

-日本ゼオン(株)が量産開始へ-


 NEDOプロジェクトの成果をもとに、産業技術総合研究所が開発したスーパーグロース(SG)法を用いたカーボンナノチューブ(CNT)の世界初の量産工場を日本ゼオン(株)が完成させ、稼働を開始しました。

 SG法は高速・大量合成が可能であり、SG法で得られるCNTは、従来と比較して、高アスペクト比、高純度、大表面積といった特長を有し、従来にない機能や特徴を持つ新機能性材料、次世代デバイス等への応用が期待される材料です。高性能キャパシタ、高機能ゴム材料、高熱導電材料等の革新的材料やデバイスへ応用できることから、その需要拡大が見込まれます。

 日本ゼオン(株)は、2015年11月から量産を開始します。

完成したスーパーグロース法カーボンナノチューブ工場の写真
完成したスーパーグロース法カーボンナノチューブ工場


1.概要

 カーボンナノチューブ(CNT)は、日本の飯島澄男博士が発見し、日本が世界をリードしている材料です。軽量、高強度であり、電気や熱の伝導率が高いことから、さまざまな用途への利用が期待されています。

 このような背景のもと、NEDOプロジェクト「ナノカーボン応用製品創製プロジェクト」(2003~2005年度)において、産業技術総合研究所(以下、産総研)は、2004年に産総研畠賢治博士らにより見出された革新的なCNTの合成法であるスーパーグロース法(SG法)の基盤技術を開発しました。また、産総研と日本ゼオン(株)は、「カーボンナノチューブキャパシタ開発プロジェクト」(2006~2010年度)において、カーボンナノチューブ(CNT)の量産技術開発を進めてきました。さらに、産総研と日本ゼオン(株)は、2009年度経済産業省補正予算事業により量産実証プラントの建設を開始し、2011年よりサンプル提供による技術普及活動を進めてきました。

 今般、日本ゼオン(株)は、産総研の量産実証プラントで得られた技術を活用し、世界で初めてSG法で得られる高品位なCNT(SGCNT)の量産工場を完成させました。

 SGCNTは、他のCNTと比較して高アスペクト比、高純度、大表面積を示すといった特長を有するため、従来にない機能や特徴を持つ新機能性材料、次世代デバイス等への応用が期待される材料です。高性能キャパシタ、高機能ゴム材料、高熱導電材料等の革新的材料、デバイスの可能性が示唆され、その需要も大きく拡大すると予想されます。日本ゼオン(株)は、これら応用製品の市場での需要に応えるべく、2015年11月からSGCNTの量産を開始します。

2.今回の成果

【1】SGCNTの量産基盤技術開発

 これまで、産総研と日本ゼオン(株)は、NEDOプロジェクトにおいて、SG法のなかで重要となる安価な触媒成膜技術、大面積合成技術、連続合成技術を構築してきました。図1にSG法を示します。SG法は、微量な水分を気相合成炉雰囲気中に添加することにより、触媒の活性、寿命を大幅に改善させ、高い成長効率を維持する優れたCNT合成方法です。従来のCNT合成法と比較して、数百倍の成長効率を示すとともに、合成したSGCNTは基板から容易に分離できるため、品質を損なうことなく炭素純度99%以上の純度でSGCNTを簡便に回収することができることから、触媒使用量および製造コストの大幅な削減が可能です。

SGCNTの合成法の図
図1 SGCNTの合成法

【2】SGCNT量産実証プラントによる技術普及活動、工場建設/竣工

 産総研と日本ゼオン(株)は、NEDOプロジェクトで構築した量産基盤技術を活用し、つくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点(TIA-nano)事業において、SGCNT量産実証プラントを産総研内に建設(2009年度経済産業省補正予算事業)し、500×500mmの金属基板上に均一にSGCNTを合成することに成功しました。この結果、SG法が発見された当時と比較すると、約17,000倍の生産能力向上が達成されました。合成されたSGCNTサンプルは産総研から研究用試料として提供が開始され、200件以上の国内企業・大学に提供してきました。そして、2013年度から、日本ゼオン(株)は産総研から当該プラントを借受け、日本ゼオン(株)としてSGCNTのサンプル提供を開始し、国内研究機関、企業のSGCNT応用製品事業化に向けた検討をサポートしてきました。

 さらに、NEDO「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」(2010~2016年度)において、技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構はSGCNTの複合材料の開発を進め、SGCNTの持つ優れた特長を生かした応用製品として、高機械耐久性を示す高電導性ゴム、極少量のSGCNTを添加して作った導電性ゴムや樹脂、チタンや鉄並みの熱伝導率をもつSGCNT/炭素繊維/ゴム複合材料など、カーボンブラック等の既存フィラーでは得られない優れた特長を示すポリマー複合材料を開発しました。また、金属複合材料に関する研究開発も大きな進展をみせており、軽量、許容電流密度耐性の高い銅複合材料、アルミの3~4倍の熱伝導率を示すアルミ複合材料が開発され、次世代輸送機器、電子デバイス等への応用が期待されています。

 日本ゼオン(株)は、これら応用製品の市場での需要に応えるべく、産総研の量産実証プラントで得られた技術を活用し、SGCNTの量産工場を建設することを2014年4月に決定、徳山工場内にSGCNT製造工場を建設、2015年11月11日に工場を竣工し、量産を開始します。

3.今後の予定

 今回のSGCNT量産工場の竣工により、SGCNTをコアマテリアルとした革新的な複合材料、用途が広がると想定しています。また、その適用範囲は広く、エネルギー分野、エレクトロニクス分野、機能材料分野、構造材料分野など多岐に展開され、日本において大きな産業が創出されることが予想されますことから、今後、日本ゼオン(株)は、SGCNTの量産を計画通り実施し、日本経済の発展に貢献します。



用語解説

◆カーボンナノチューブ(CNT)
カーボンナノチューブは、炭素原子だけで構成される直径が0.4~50 nmの一次元性のナノ炭素材料である。その化学構造は、グラファイト層を丸めてつなぎ合わせたもので表され、層の数が1枚だけのものを単層カーボンナノチューブと呼び、グラファイト層の巻き方(らせん度)に依存して電子構造が金属的になったり半導体的になったりする。[参照元へ戻る]
◆スーパーグロース法(SG法)
2004年、産総研畠賢治博士らによって見出された単層カーボンナノチューブの合成手法。化学気相成長(CVD)法を用いた単層カーボンナノチューブ合成法であり、高温に加熱した加熱炉内で単層カーボンナノチューブを合成する際に、水分を極微量添加することにより、触媒の活性時間および活性度を大幅に改善した方法。従来の 500倍の長さに達する高効率成長、従来の2,000倍の高純度単層カーボンナノチューブを合成することが可能である。さらに、配向性も高く、マクロ構造体も作製できる。[参照元へ戻る]
◆つくばイノベーションアリーナナノテクノロジー拠点(TIA-nano)
国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立研究開発法人物質・材料研究機構、国立大学法人筑波大学、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構の4機関が協力して構築した研究拠点。[参照元へ戻る]


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