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発表・掲載日:2015/10/08

(株)DNAチップ研究所、ゼノアックリソース(株)、大陽日酸(株)各社が、再生医療関連製品を開発

-間葉系幹細胞の再生医療実用化に貢献-


 平成26年4月から開始した、幹細胞評価基盤技術研究組合(理事長:吉岡 康弘 富士フイルム(株)フェロー)*1の受託事業プロジェクト「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発」(委託元は、平成26年度:独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、平成27年4月~国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED))のうち、阿久津 英憲 サブプロジェクトリーダー(SPL)(国立成育医療研究センター生殖医療研究部部長)が指導する「間葉系幹細胞*2由来の再生医療製品製造システムの開発」研究グループから、プロジェクト期間(3年間)のちょうど半分が経過した時点で、株式会社DNAチップ研究所、ゼノアックリソース株式会社及び大陽日酸株式会社の各社がそれぞれ、製品開発成果を挙げましたので発表します。

 なお、これらの成果は、本年10月14日(水)~16日(金)の間、パシフィコ横浜で開催される「バイオジャパン2015」の幹細胞評価基盤技術研究組合ブースに展示されます。



1. 事業概要と成果の位置づけ

1-1. 事業概要

 幹細胞評価基盤技術研究組合の受託事業「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発/ヒト多能性幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発(心筋・神経・網膜色素上皮・肝細胞)、ヒト間葉系幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発」は、医療の場に供される再生医療製品を安全かつ安価に製造・加工するための、各プロセスが連携した製造システムを構築することを目的としています。

 このうち、「ヒト間葉系幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発」プロジェクトは、阿久津英憲サブプロジェクトリーダー(国立成育医療研究センター再生医療研究部部長)の指導のもとで、 幹細胞評価基盤技術研究組合の11の組合員機関(8企業、2研究機関、1団体)と3共同研究先機関(2大学、1研究機関)が連携して、「臨床医療現場のニーズ」を最大限反映した、高品質間葉系幹細胞製品を製造・供給するシステムを実現することを目標に、研究開発を推進しています。

 具体的には、間葉系幹細胞を対象に、分離・精製技術、培養技術、保存・管理技術、幹細胞評価技術及び前臨床研究の各課題にチームを組んで取組み、最終的には、国立成育医療研究センター内に設置されている集中研究室にて、開発された技術を統合し、システム化する計画です。

1-2. 成果の位置づけ

 今回発表する成果は次の3件です。

1)株式会社DNAチップ研究所
 アレイCGH解析サービス開始
 C3チェックサービス-aCGH for Cultured Cells Check Service-
 ~間葉系幹細胞のアレイCGHによる品質評価~

2)ゼノアックリソース株式会社
 GMPに準拠した細胞凍結保存液を開発
 -間葉系幹細胞の凍結保存に適応可能-

3)大陽日酸株式会社
 温度履歴情報統合管理システムの開発

間葉系幹細胞による再生医療製造工程と本日プレス発表する成果の位置の図
間葉系幹細胞による再生医療製造工程と本日プレス発表する成果の位置の図
図1.間葉系幹細胞による再生医療製造工程と本日プレス発表する成果の位置(赤枠の工程に関する技術)

 これらの成果は、当該システムによって製造された最終製品の品質を評価し、それら品質を維持したまま各医療機関等へと供給するために必要な要素技術群です。プロジェクトにおいては変形性膝関節症治療のための幹細胞評価・保温・管理を想定していますが、他の再生医療等製品の供給にも応用できる基盤技術でもあります。

 今回の成果は、細胞を育て、保存し、届ける工程に貢献する製品および技術の提供です。再生医療が広く発展するために不可欠な要素へ貢献する成果です。

【参考】
*1 幹細胞評価基盤技術研究組合
 幹細胞評価基盤技術研究組合は、「幹細胞実用化に向けた評価基盤技術の開発」を実施するため、平成23年2月に設立されました。企業26、研究機関2、団体1の計29の組合員で構成されています。
 平成27年4月から、AMEDの委託事業「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発」プロジェクトを組合と同様にAMED委託事業を実施している大学、研究機関等と共同研究体制を構築し、研究開発を推進しています。[参照元へ戻る]

幹細胞評価基盤技術研究組合の組織とPJ実施体制の図
図2. 幹細胞評価基盤技術研究組合の組織とPJ実施体制

*2 間葉系幹細胞
 骨髄や脂肪等「間葉」といわれる組織由来の体性幹細胞で、我々の体内にも存在します。軟骨、骨、脂肪、心筋、神経などへの分化能を有し、iPS/ES細胞と共に、再生医療への応用が大きく期待されている細胞です。腫瘍形成能が殆ど無いと考えられており、間葉系幹細胞を用いた多くの臨床研究が、国内外で進められています。[参照元へ戻る]
 

2. 成果概要

2-1. 株式会社DNAチップ研究所

アレイCGH解析サービス開始
C3チェックサービス-aCGH for Cultured Cells Check Service-
~間葉系幹細胞のアレイCGHによる品質評価~
株式会社DNAチップ研究所

 本事業において株式会社DNAチップ研究所は、ヒト間葉系幹細胞の品質評価に特化したカスタムアレイCGH*3解析技術を開発しました。

 委託者から、培養初期の細胞と継代培養後の細胞の送付を受け、癌関連遺伝子領域の検出プローブ数を高密度に搭載したカスタムアレイを用いてアレイCGH解析を実施し、培養工程(継代)におけるゲノムコピー数異常を高精度に検出します。従来のGバンド分染法では、異常が認められた細胞の頻度や5メガベース以下の変異は分かりませんでしたが、C3チェックサービスでは、培養工程(継代)におけるDNAの変異を約100倍の解像度で網羅的に、少ない日数で検出することが可能になりました。本サービスは、10月8日に開始する予定です。

従来法との比較の図
図3. 従来法との比較

サービスの流れの図
図4. サービスの流れ

 本成果は、阿久津英憲SPLが率いる研究グループおいて、東海大学医学部との共同研究成果を活用したものです。

 培養細胞を用いて再生医療へ臨床応用する上で、その品質の確保は非常に重要な課題の1つであり、特に長期間培養を継続する際、それに伴う細胞の形質変化、ゲノム構造変化などの有無を調べることは非常に重要です。

 これまでの研究によると、継代数が増えるにつれてゲノム上のある領域にコピー数異常が見られるという報告がされています。アレイCGH法は、微細ゲノム異常の探索を可能にする技術であり、ゲノムコピー数異常に起因する疾患の病態解明の糸口となる微細ゲノム異常の発見に威力を発揮します。

 我々は間葉系幹細胞の品質評価としてのアレイCGH法を確立することを目的とし、癌関連遺伝子領域の異常を精度良く判別できるカスタムチップの開発、高解像度で個々の遺伝子レベルでのゲノム異常検出を可能にするプロトコール、多検体処理システムを構築し、サービスを開始いたします。

 この成果は、今後の再生医療分野における安全性・安定性のための重要な手法の1つとして期待されます。

 なお、本成果に関する阿久津英憲SPLのコメントは、以下の通りです。

 「再生医療での細胞・組織加工製品の品質管理では、対象が『生もの』であるがゆえこれまでの医薬品や医療機器で行われる手法では対応できないbiologicsとしての新たな手法が必要です。製品の主体となる細胞に関しては、培養工程で管理することが重要となります。これまで品質を担保するため行われることがある染色体核型解析は多数の細胞と数週間もの時間がかかっていました。C3チェックサービスは、貴重な細胞に対する品質試験をより少ない細胞で、より高解像度のゲノム安全性評価をたった数日で行うことができます。再生医療の発展に大きく貢献できる成果です。」

【参考】
*3 アレイCGH
 CGH 法 (Comparative Genomic Hybridization: 比較ゲノムハイブリダイゼーション) は、1992 年にKallioniemi らが、Science 誌で発表した方法であり、FISH 法(Flourescence In Situ Hybridization) を応用し、全染色体を対象として、ゲノムDNA が増幅 (gain)、欠失 (loss) した領域を検出します。アレイCGH 法は、マイクロアレイとCGH 法を組み合わせることで、ハイスループットに目的遺伝子、ゲノムDNA領域のコピー数変化の検出を可能にした方法です。[参照元へ戻る]

アレイCGH法の導入イメージの図
図5. アレイCGH法の導入イメージ


2-2. ゼノアックリソース株式会社

GMPに準拠した細胞凍結保存液をゼノアックリソース株式会社が開発
-間葉系幹細胞の凍結保存に適応可能-

 本事業において、国立成育医療研究センター、産業技術総合研究所とゼノアックリソース株式会社は、ヒト間葉系幹細胞の「移植用細胞の輸送可能な保存技術の研究開発」を担当しており、国産初となるGood Manufacturing Practice (GMP)に準拠*4した細胞凍結保存液の商品化に成功し、間葉系幹細胞の凍結保存に適応可能であることが判明いたしました。

 本製品は、GMPに準拠した製造管理及び品質管理が行われる国産初の凍結保存液になります。ケミカリーディファインド処方でXeno-フリーの概念を満たしていることは勿論、これまで以上に品質の高い製品が供給できるため、バイオテクノロジーや再生医療分野で大きく貢献できるものと期待されます。

 この細胞凍結保存液は、ゼノアックリソース株式会社が商品化し、平成27年5月25日に販売を開始しております。

製品概要の表

製品概要写真

発売元:ゼノアックリソース株式会社  
製造元:日本全薬工業株式会社

※本製品の国内に於ける販売はタカラバイオ株式会社と提携しています。
 

図6. 製品概要  

 本成果は、阿久津英憲SPLが率いる研究グループでの共同研究成果を活用したものです。ゼノアックリソース株式会社は、細胞凍結保存に関する技術を応用し、間葉系幹細胞の自動凍結保存システム等と連動したケミカリーディファインド処方でXeno-フリーの概念を満たす最適な凍結保存液の処方検討を行っております。また、研究期間中にGMP生産体制を整え、GMPに準拠した製品化を達成できるよう進めてまいりました。今回、予定よりも早期に生産体制および製品化の目標を達成することができました。

 なお、本成果に関する阿久津英憲SPLのコメントは、以下の通りです。

 「再生医療の発展には細胞の保存・輸送の品質管理は必須です。今回、ゼノアックリソース社が開発した凍結保存液は様々な間葉系幹細胞の品質を保持し凍結保存が可能であり、世界基準の製造設備で製造された製品によりグローバルな再生医療の発展に貢献できると確信しています。さらに重要なのが、本凍結保存液は『メイドイン福島』であり、福島の新たな産業復興にも貢献できることを願っています。」

【参考】
*4 Good Manufacturing Practice (GMP)準拠
 GMP グレード品は、新たに建設したGMP基準に適合した工場で、GMP体制の下、 GMP基準にのっとった製造方法で製造しています。製品が環境にさらされる作業はすべてグレードA 環境で実施し、調製液のバイオバーデン管理、無菌ろ過フィルターの完全性試験を行うことによって無菌性を保証しています。[参照元へ戻る]

GMP準拠凍結保存液による間葉系幹細胞保存のイメージ図
図7. GMP準拠凍結保存液による間葉系幹細胞保存のイメージ


2-3. 大陽日酸株式会社

温度履歴情報統合管理システム
-大陽日酸(株)が開発-

 本事業において、幹細胞評価基盤技術研究組合に所属する国立成育医療研究センターと大陽日酸株式会社は、生体試料の“温度履歴情報統合管理システム”を開発しました。今後、本システムは平成28年4月の商品化を予定します。

温度履歴情報統合管理システムの概要図
図8. 温度履歴情報統合管理システムの概要

細胞の温度推移データ例の図
図9. 細胞の温度推移データ例
各工程の始めと終わりに、それぞれのサンプルのバーコードを読み取ることにより、 サンプル毎の温度履歴が1枚のシートに記録されます。

 本成果は、阿久津英憲SPLが率いる研究グループでの共同研究成果を活用したものです。

 再生医療における細胞利用の実用化においては、増殖培養後の凍結処理、拠点間の輸送移動が必須となり、細胞の品質管理の観点から個々の生体試料が辿ってきた環境の記録は不可欠のものとなります。

 “温度履歴情報統合管理システム”では、培養増殖後の分注から凍結解凍までの、複数に及ぶ工程の個々の温度データをサーバーに集中して一括管理するものです。

 これにより、拠点間の輸送時のみならず、凍結処理の環境や解凍処理の環境、施設内の移動環境も記録管理することができます。本システムは、バーコードなどのデータキャリアと専用のPCソフトを用いて情報ネットワーク環境下で運用します。

 なお、本成果に関する阿久津英憲SPLのコメントは、以下の通りです。

 「再生医療の発展には細胞の保存・輸送の品質管理は必須です。今回、大陽日酸社は、細胞の保存のみならず移送過程でも細胞の温度環境を継続的に漏れなく記録し管理するシステムを構築しました。再生医療での細胞・組織加工製品の工程管理として個々のサンプルを識別子により的確に一括管理することが可能です。今後、再生医療製品の安心、安全な供給を担保することで再生医療の発展に貢献できるものです。」

温度履歴情報統合管理システムの導入イメージ図
図10. 温度履歴情報統合管理システムの導入イメージ




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