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発表・掲載日:2012/04/18

出力電流の均一性を高めたCNTトランジスタをプラスチックフィルム上に印刷形成する技術を開発


 技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構(TASC)、独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)、日本電気株式会社(NEC)は、出力電流の均一性を高めたCNTトランジスタをプラスチックフィルム上に印刷形成する技術を開発いたしました。

 カーボンナノチューブ(CNT)は電気的・構造的に優れた特性を持ち、省エネルギー・省資源・高生産性を特長とする印刷エレクトロニクスのトランジスタ材料として期待されています。TASC・産総研・NECはCNTの用途開発の一環として、大面積・フレキシブルデバイスなどを印刷により製造する技術である印刷エレクトロニクスへの応用をめざして、CNTトランジスタをプラスチックフィルム上に印刷形成する技術の開発を進めてきました。このたびCNTインクの印刷工程を高度化することにより、出力電流の均一性を高めたCNTトランジスタを印刷形成する技術を開発することに成功しました。これはフレキシブル・大面積デバイスへの応用につながる成果です。

 このたび開発した技術の特長は以下の通りです。

(1)印刷時のコーヒーステイン現象を抑制した均一なCNTチャネルの形成
 CNTインクをインクジェットやディスペンサーにより印刷すると、コーヒーステインと呼ばれる、印刷外縁部での密度増大が生じます。CNTの密度が増大すると、混在している金属型CNTによる短絡などにより、オンオフ比などのトランジスタ特性が劣化する問題がありました。今回、CNTインクの印刷面にあらかじめ単分子膜(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)を形成することで印刷面へのCNTの吸着を促進し、コーヒーステインの形成を抑制してCNTチャネルを均一に印刷形成することに成功しました。また、CNTインクにはTASC・産総研・NECが開発した、金属型・半導体型CNT分離技術を用いて分離した、純度95%以上の半導体型CNTを用いました。従来、全ての構成要素を印刷で形成するCNTトランジスタでは非常に大きい出力電流のばらつきが課題となっていましたが、この技術によりばらつきを30%に抑えることができました。

(2)界面活性剤除去工程の改良により、高速動作の指標となるキャリア移動度を向上
 CNTインクには電気抵抗が高い界面活性剤が含まれているため、印刷後にこれを除去する必要があります。従来は熱処理と洗浄処理を組み合わせた除去工程を用いていましたが、この工程を改良し、熱処理前にウェット処理を行う事により、デバイスの動作速度の指標となるキャリア移動度を3.6 cm2/Vs(オンオフ比1,000)まで向上することに成功しました。これは従来法での値(0.087 cm2/Vs)の40倍です。ウェット処理によりCNTが互いに若干凝集し、CNT間の接触抵抗が低減したためと考えられます。

 このたび開発した技術は平成23年度より独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から委託された「低炭素社会を実現する革新的カーボンナノチューブ複合材料開発プロジェクト」の一環として進めてきた成果です。産総研およびNECの寄与の一部は、両者で平成20年度より行ってきた共同研究およびNEDO産業技術研究助成事業「短尺カーボンナノチューブの創製とCNTトランジスタへの展開」の成果に基づいています。TASC・産総研・NECは今後もCNTの優れた特長を生かし持続可能な社会に貢献する技術の開発に積極的に取り組んでまいります。

 なお、今回の成果は、平成24年4月18日付のApplied Physics Express誌に掲載されます。


参考図

10×10 CNTトランジスタアレー、CNTトランジスタ光学顕微鏡像、CNTチャネル走査プローブ顕微鏡像
図1:(a) プラスチックフィルム上に印刷した10×10 CNTトランジスタアレー。(b) CNTインク印刷後のCNTトランジスタ光学顕微鏡像。(c) CNTチャネルの走査プローブ顕微鏡像。


印刷CNTトランジスタの製造工程図
図2:印刷CNTトランジスタの製造工程。(a) ナノ銀インクによるゲート電極印刷。(b) ポリイミドインクによるゲート絶縁膜印刷。(c)単分子膜担持層(酸化シリコン)形成。(d) ナノ銀インクによるソース・ドレイン電極印刷。(e) CNT吸着用単分子膜形成。(f) CNTインクによるチャネル印刷。(g) CNTインクに含まれる界面活性剤を除去。

用語の説明

◆コーヒーステイン現象
テーブル表面に付着したコーヒー滴が乾燥すると、リング状の汚れが残る現象。溶質を含む液滴が基板上で乾燥する過程では、液滴の縁での溶媒の蒸発が大きいため、液滴の中心から縁に向かう流れが生じ、それにともない溶質が液滴の縁に移動・蓄積するために起こる。[参照元へ戻る]
◆キャリア移動度
半導体中の電子・正孔などのキャリアの動きやすさの指標。移動度が大きいと電流増幅率や高周波応答特性が向上するため、デバイス特性の指標となる。[参照元へ戻る]
◆オンオフ比
トランジスタ出力電流の最大値と最小値の割合。ディスプレイ用トランジスタの場合、オンオフ比が大きいほど輝度の明暗をつけやすい。 [参照元へ戻る]


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