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発表・掲載日:2010/06/29

集光型太陽光発電システムの日米共同実証実験を開始

- 異なる日照条件で屋外発電性能を比較、評価技術の確立へ -

ポイント

  • 同一の集光型太陽光発電システムを日米に設置して、発電性能の同時検証(比較)を行う
  • システムには日米独3カ国で製造された3種の多接合型太陽電池を搭載し、発電量を予測可能な高精度評価技術を開発する
  • 集光型太陽光発電システムを国内の丘陵地に設置するのは日本初

概要

 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)太陽光発電研究センター【研究センター長 近藤 道雄】は、(米国)国立再生可能エネルギー研究所(NREL)と共同で、日米両国で同一の集光型太陽光発電システム(以下「CPVシステム」という)を設置し、発電性能の実証実験を開始する。CPVシステムは、レンズを用いて自然太陽光を500倍以上の光強度に集め、小面積の超高効率多接合型太陽電池によって発電する効率のよい発電方式である。しかし、天候、特に快晴率や太陽光スペクトルの影響を大きく受けるため、今回の実証実験では、快晴率が高く乾燥した米国サイト(コロラド州オーロラ市)と温暖湿潤な日本サイト(岡山市京山)にCPVシステムを設置して、気候の違いが発電性能に及ぼす影響を比較する。また、日米独3カ国で製造された性能の異なる多接合型太陽電池3種を搭載し、CPVシステムの発電量を正確に予測する評価方式を開発し、国際的整合性のある測定技術を確立・標準化すること、さらにCPVシステムおよび集光型高効率太陽電池の普及拡大を目指す。

CPVシステムの仕組みと日本サイトの完成予想図
CPVシステムの仕組みと日本サイトの完成予想図

開発の社会的背景

 太陽光発電をより普及させるためには、太陽光発電システムの性能向上と低コスト化が重要な課題である。砂漠など日射量の強い一部地域では、新型高効率太陽電池と集光レンズを組み合わせたCPVシステムが、従来型の太陽光発電システムより性能とコストの面で上回る可能性がある。しかし、この方式は天候に左右されやすく発電量を予測することが困難である。また、用いられている超高効率多接合型太陽電池の評価方法についても各国で統一された方法が無く、現状では測定精度に大きな課題がある。今後、さらに革新的な効率の高い太陽電池が出現すると、その評価はさらに困難になると懸念されている。

研究の経緯

 産総研は、国立大学法人 東京大学 先端科学技術研究センターとともに、革新型太陽電池国際研究拠点に選定され、平成20年度から7年間の計画で、変換効率が40 %(現在の3~4倍)かつ、発電コストが7円/kWh(現在の約1/7)の高効率・低コストの太陽電池の開発を、国内外の研究機関と連携しながら進めている。

 この研究開発は、平成21年11月13日に日米首脳会談において合意された「日米クリーン・エネルギー技術協力」に対応するものであり、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から「革新的太陽電池評価技術の研究開発」(平成21年度~平成22年度)の委託を受けて行っているものである。

研究の内容

 集光型高効率太陽電池として使われる新型の多接合型太陽電池は、広い波長範囲の太陽光を利用できるので高効率が期待できるが、効率は太陽光の波長分布や大気による光の散乱の割合によって大きく影響を受ける。宇宙空間とは異なり、季節、時間、天候などによって太陽光の状態が大きく変化するため、CPVシステムを地上で効率良く利用するためには、設置場所の気候条件に合わせたシステムを設計する必要がある。

 本研究開発では、乾燥気候で晴天率の極めて高い米国のサイト(コロラド州オーロラ市)と、湿潤気候で晴天率の高い日本のサイト(岡山市)の2ヵ所に同一のCPVシステムを設置し、発電量を比較測定する。気候条件の違いがCPVシステムの発電量におよぼす影響を分析することで、様々な気候に対するCPVシステムの適合性を評価するとともに、CPVシステムの高精度な屋外評価法を開発する。このために、CPVシステムには、日本製、米国製、ドイツ製の3種類の集光型高効率太陽電池を搭載する。両サイト間での発電量の違いを分析することで、集光型高効率太陽電池の最適設計を明らかにする。また、従来の一般的な結晶シリコン系太陽電池を使った太陽光発電システムも併設して発電量を比較することで、CPVシステムの導入に適した気候条件を明らかにし、最適な導入場所の探索も行う。

 今回の実証実験に用いるCPVシステムは、500倍の集光レンズ付きの集光型高効率太陽電池2,400個を使い、最大出力が約15 kWの系統連系型システムであるが、このシステムを2サイトそれぞれに2基ずつ設置する。システムで使用する集光型高効率太陽電池モジュールの発電効率は28 %であり、一般的な結晶シリコン形太陽電池モジュールの約2倍である。

 わが国は遊休な平地に乏しいために、メガワット級大規模太陽光発電システム(メガソーラー)の適地が少なく、これまで太陽光発電システムの普及は住宅用を中心に進んできた。CPVシステムは1本の支柱に据え付けるために基礎に要する面積が小さく、平地だけでなく丘陵地にも設置することができる。今回、国内で初めてCPVシステムを丘陵地に設置することによって、丘陵地への設置工法も実証する。

今後の予定

 2010年内に日米両国のCPVシステムを完成し、2011年1月より発電量と気候データの取得を開始して、性能評価方法を開発する。実証期間は最長5年間を予定している。CPVシステムの発電量を正確に予測する評価方式を開発し、国際的整合性のある性能評価技術の確立・標準化を目指す。


用語の説明

◆国立再生可能エネルギー研究所(NREL)
米国エネルギー省(DOE)傘下の国立研究所で所在地は、コロラド州ゴールデン市。1977年に太陽エネルギー研究所(the Solar Energy Research Institute)として活動を開始。1991年にDOE傘下の国立研究所となり、現在の名称に変更。太陽光発電、バイオ燃料、風力発電などの再生可能エネルギーとエネルギー効率に関する研究開発を行う基礎研究所。[参照元へ戻る]
◆集光型太陽光発電システム(CPVシステム)
レンズまたは鏡で自然太陽光を100倍から500倍程度に集めて小面積の太陽電池に照射する方式を用いた発電システム。この方式は宇宙での太陽光発電などで用いられる高性能だが非常に高価な太陽電池を、地上でも安価に使えるように太陽電池の面積を小さくするために用いられる。この方式は高効率だが太陽光の動きに合わせる必要があるため太陽を追尾する装置とともに用いられる。また、この方式は砂漠などの直射日光が多く得られる地域に適している。集光倍率が百倍以上のレンズを使う場合には、化合物系3接合型太陽電池が用いられる。[参照元へ戻る]
◆多接合型太陽電池
複数の太陽電池を積み重ねて用いて発電効率を高めた太陽電池。利用できる波長範囲の異なる太陽電池を重ね合わせると、より広い波長範囲の太陽光を利用して発電できるため、通常の単接合形太陽電池と比べて発電効率が高くなる。現在、化合物系半導体を用いた3接合型太陽電池が最もよく用いられるが、地上光を数百倍に集光した光に対して約40 %の発電効率を持つ。このタイプの太陽電池は効率が高いので人工衛星や火星探索機などの宇宙用にも利用されている。[参照元へ戻る]
◆太陽光スペクトル
太陽の光は、様々な波長の光によって構成されており、光の強さの波長ごとの分布を太陽光スペクトルと呼ぶ。太陽光スペクトルは、オゾン、二酸化炭素、水蒸気そして大気中のチリ等の大気状態と太陽高度によって変化する。太陽電池は、太陽光スペクトルによりその発電性能が変化するため、基準太陽光スペクトル(AM1.5 G)と呼ばれる統一の太陽光スペクトルを用いて、太陽電池の性能評価を行う。[参照元へ戻る]

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